表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/53

第二十四話「静寂の水面に」

「いらっしゃいませ」


久々に訪れたカフェで、雪村遥の声が穏やかに響く。

東雲悠真は静かに会釈し、カウンター越しの彼女に微笑みを返した。



「カフェラテ、ひとつ」


「かしこまりました」



遥は手早く準備に取りかかり、ふわりとラテアートを描く。

少し痩せた印象はあるが、どこか以前より落ち着いて見える。


席について待っていると、カップが運ばれてきた。



「……お待たせしました」


「ありがとう。調子はどうですか」


「おかげさまで、もうだいぶ。……ご心配、かけました」



穏やかな空気が流れる。

悠真はカップを手に取り、少しだけ頷いた。


そのとき、少し離れた席から聞き覚えのある声が飛んできた。



「お、東雲じゃん」



振り向くと、篠崎亮が座っていた。

アイスコーヒー片手に、ニヤニヤと笑っている。



「こんなところで何やってんの。……あー、いや、言わなくてもわかるか」


「偶然、来ただけだよ」


「へー、偶然ねぇ。タイミングよすぎない?」



亮の視線が遥に向かい、またすぐに悠真に戻る。

悪意はない、けれどちょっとだけ照れ臭くなる空気だ。



「……あれ、そちらの方は確か…」



遥がそっと尋ねる。



「この間紹介した篠崎亮。大学の同期です」



「どうも。いつもこんな感じなんですけど、まぁ悪いやつじゃないんで」



「はい、なんとなく伝わってきました」



遥が小さく笑い、亮も満足そうに頷く。



「東雲ってさ、あんまり自分から多く語らないじゃん? でもさ、たまにすげぇ真面目なこと言ったりするんだよ。あれが意外と……」


「亮」



悠真が一言だけ、やや低めの声で遮ると、亮は肩をすくめた。



「はいはい、言いすぎましたっと。……そろそろバイトだから、オレはこれで」


「また大学でな」


「……じゃあ、雪村さんも、お大事に」



軽く手を振って亮が去っていくと、店内には再び静けさが戻った。



「……ああいう人、にぎやかですね」


「ええ。でも、悪い奴じゃないです」


「……そう、思います。」



遥がそう言ってカップを持ち上げる。

その表情は、ほんの少しだけ柔らかい。


静かな時間が、春の日差しのなかでゆっくりと流れていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ