貴族令嬢の友情
貴族令嬢もので短編を書いてみました。
読んで頂けたらうれしいです。
貴族学院を退学したその少女の名前はオリーといった。
オリアナ・ペンデルトン男爵令嬢だった少女だ。
祖父が裕福な商人で男爵位を買い、そのまま父親へと引き継がれた。
いわば貴族身分を金で買った……という記憶が付いて回る。
そのため生まれついての男爵令嬢でありながら、オリアナは周囲の貴族令嬢から、何となく疎外というかバカにされているというか、そういう気配を感じていた。
オリアナはどちらかと言うとマイペースな性格であった。
自分が生まれた時はすでに2代目の父の代だったし、誰が何と言おうと自分は生まれつきの貴族令嬢である。
周囲がそれを否定するような態度を取るなら、周囲の方が間違っているのだから、放っておくしかない。
15歳の時、貴族のための学校である貴族学院に入学した。
2年間で卒業の予定である。
入学すると、常に周囲は貴族の令嬢令息に囲まれている状態になる。
まだ金で爵位を買った成金……という記憶のためか、特に高位貴族令嬢達から風当たりが強くなったように感じた。
そんな学院でも、オリアナには仲の良い友人ができた。
サンドラ・ウェルニー子爵令嬢とキャンディアナ・コートニー男爵令嬢。
サンディ、キャンディ、オリーと愛称で呼び合うほどの仲良しになった。
サンディは伝統はあるが貧乏子爵。
キャンディは数年前に運送業で成功した父親が男爵位を買った……。
まあ、お金で貴族になったばかりのほやほやというわけだ。
しかも、キャンディはとても美しく、貴族令息たちから注目され、話題になっている様子。
そのことから、周囲の貴族令嬢から、さらに反感を買ってしまっていた。
オリーとサンディは周囲の貴族令嬢から、キャンディを孤立させるために、優しい言葉をかけられたり、誘われるようになった。
「コートニー男爵令嬢には内緒にね!」とくすくす笑いを添えられて。
サンディは誘われたお茶会や観劇などは家の都合でと断り、オリーとキャンディには「我が家には支度が無理だから!」と笑って言った。
オリーは特に費用などには困っていない。今まで誘われたことがなかっただけだ。
この機会に貴族令嬢の世界を少し覗いてみたいと思った。
「ちょっと偵察して来るわ!」
貴族令嬢たちの華やかな最新流行のドレス、きらびやかな趣味の話、最近出かけた観劇やレストランの話……。
オリーは貴族令嬢というものはこういう話題のためにお金を使ってお出かけしているのだと感心した。
サンディ、キャンディとはこんな話はしない。
サンディとキャンディは勉強や本、文化や芸術などの話をすることが多く、教室での授業以外はよく図書室で過している。
オリーも読書や芸術の話など嫌いではないが、少し退屈だと思うこともあった。
やはり貴族令嬢たちのお金と特別な身分を使った贅沢な趣味の話というのは楽しい。
オリーのペンデルトン男爵家には財もあるし、男爵家としてももう2代目。
私だって、こういう貴族の世界を楽しんでもいいはずだし、仲間に入れてもらえるのでは?!
そう思い始めてしまうと、サンディとキャンディと図書室で過ごすのがつまらなく思えた。
同じ学校の1学年上にこの国の第2王子が在学していたのだが、彼がキャンディに興味を持ったことで、学内の雰囲気がさらに変わった。
キャンディは慎ましく、必要以上に皇子と親しくしないように振舞っていたが、一気に全女生徒……、オリーとサンディ以外から敵意を向けられたのだ。
今までは無視や少々嫌味を言われたりというくらいだったのが、敵意を向けられ、嫌がらせのようなことも起きた。
気にした第2王子や取り巻きの高位貴族令息から気を遣われたりしたが、さらに火に油を注ぐことになりかねず、キャンディはすべて断り続けた。
「私は勉学に励みたいの! それ以外のことは今は必要ないわ!」
王子は教師から注意されたようで、キャンディに声をかけることをやめた。
とたんにキャンディは王子に捨てられたと噂になり、誰が王子の不始末の尻拭いをするのだろうと悪意のある嫌味を言われたりした。
オリーはサンディとキャンディと過ごしながら、キャンディって本当に神経が鈍いんだわと思っていた。
自分なら、もうどうしていいかわからなくて、学院をやめていただろうと、オリーは思った。
オリーが今でも、なぜ、サンディとキャンディと一緒にいるかと言うと、貴族令嬢たちにそう頼まれていたからだった。
学校ではサンディとキャンディと過ごし、放課後や休みの日は貴族令嬢たちとお茶会や観劇に出掛け、そこで、図書室でどんな風に彼女たちが過ごしているか、落ち込んでいたとか、嫌がっていたとか、ふたりの様子を……、少し悪意を持って話した。
そうすることで、貴族令嬢たちはオリーを褒めてくれ、もっと仲良くしてくれるのだ。
サンディとキャンディはそんなオリーの変化に気づき、心配していた。
オリーはサンディとキャンディには貴族令嬢たちの様子をわざとバカらしいもののように話したからだ。
「オリー、人の悪口は言わない方がいいわ」とサンディ。
キャンディも頷いた。
「そうよ、オリー、相手と同じ立場になってはだめ」
一緒にいなくてはいけないという義務から、オリーはしぶしぶ頷いたが、心の中ではサンディもキャンディも華やかな貴族令嬢らしくない、と思っていた。
それに引き換え、私は貴族令嬢たちから認められているのよ! と誇らしい気持ちで、ふたりを心の中では見下したりもしているのだ。
そんなオリーに貴族令嬢たちは唆す様に言ってきた。
「あの、元平民の男爵令嬢だけど、本当に学院をやめてくれないかしら……。
オリアナ様はあの子と親しいのよね?」
「親しいわけじゃ……、同じ男爵家ということで話をしたりはしますけど……」
「そうよね。ペンデルトン男爵家はもう2代目。あなたは生まれた時から男爵令嬢ですものね!」
なんとなく周囲の令嬢たちが目配せしたり、くすくす笑っていたりしたが、オリーはキャンディのことを笑っているのだと思い込もうとした。
「オリアナ様、今度、我が家で行われる内輪のお茶会に、コートニー男爵令嬢とウェルニー子爵令嬢を連れて来て下さらない?」
一番身分が高いカーディンス公爵令嬢であるエリザベス様に言われて、オリーは戸惑った。
「私たち、コートニー男爵令嬢と話をしてみたいのよ」
「連れて来て下さったら、さすがよね!」
「コートニー男爵令嬢もウェルニー子爵令嬢もいらしたことないものね!」
「ぜひ、連れていらして!」
「オリアナ様の力で、ね!」
口々に言われてその気になったオリーは言った。
「任せて下さいませ!」
そして、今度開催されるというカーディンス公爵家で行われるお茶会にふたりを連れて行くと約束してしまった。
オリーはサンディとキャンディに「あなた達が一緒に来てくれないと私が責められる」と泣きつき、「では、一度だけなら……」と言ってもらえたのだ。
当日サンディもキャンディも令嬢だけの内輪のお茶会ということで、オリーの家に集まってくれ、一緒に行くことになった。
サンディはお付きのメイドを、キャンディは護衛を兼ねた男性従者を連れていた。
オリーは全員をペンデルトン男爵家の馬車に乗せ、カーディンス公爵家に向かった。
到着前からおかしかった。
馬車が多い。
降りてくるのは令嬢ばかりではなく令息もいる。
どうやら、王子たちも招待されているような盛大なお茶会のようだ。
サンディとキャンディも困惑した表情だ。
オリーの話とは違う。
しかし、オリーも聞いていた話と違うのだ。
でも、ここでふたりにそれを説明したら、帰ると言い出しかねない。
オリーは黙っていることにした。
到着し、お茶会の会場に入る。
3人の服装は少しカジュアルかもしれない。
まあ、昼のお茶会だから……、何とか……。
護衛とメイドはつかず離れず、サンディとキャンディを見守り、控えている。
「あら! ペンデルトン男爵令嬢のオリアナ様!」
カーディンス公爵令嬢のエリザベス様とその取り巻きの令嬢ににこやかに迎えられるが、キャンディとサンディには声をかけてくれない。
ふたりとも困惑している。公爵令嬢の方から声をかけてくれないと、挨拶ができない。
オリーはふたりを改めて紹介するが、貴族令嬢たちは扇で口元を隠しながら笑った。
「あら、珍しい。
本当にいらっしゃるとは思いませんでしたわ!」
「キャンディさんは、第2王子殿下とお会いになりたくないのでは?」
「いや、お会いになることなんてできませんわよね~!」
男爵令嬢であるキャンディを様ではなくさん付けで呼んでわざとからかっている。
キャンディの手をサンディがしっかり握って寄り添い、オリーと公爵令嬢を戸惑った表情で見た。
「オリー? これはどういうこと?」
「やだあ、オリアナ様は親切で声をかけていらしたのに、どういうこと? だなんてこわーい!」
「どちらもここに来られるような方ではないのよ。
ふさわしくないわあ」
誰かがそんなことを言い、くすくす笑いが広がる。
「オリアナ様、本当にありがとう。
こうでもしないと話もできませんからね。
図書室のネズミさん達」
公爵令嬢が面白そうに言った。
サンディとキャンディが悲しげな顔でオリーを見た。
「ち、違うわ、私は……」
オリーは慌ててふたりに弁明しようとするが、何をどう言っていいか思いつかない。
「オリアナ様はこちらに!」と近くの貴族令嬢から腕を取られ、ふたりから離れられたことにほっとしてしまう。
令嬢たちが集まり何を見ているのか不思議だったのだろう。
第1王子、第2王子が貴族令息たちと近づいてきて、驚く。
「君達は何を?」
第1王子が言いながら、令嬢たちに囲まれて悲しげな表情をしているふたりの令嬢を保護しようとした。
公爵令嬢が鋭く言う。
「このふたりは第1王子殿下が心配なさるような方ではないのです。
そちらのコートニー男爵令嬢は男爵位をお金で買われたばかりで、学院でも第2王子を誘惑してましたのよ!」
ウェルニー子爵令嬢が凛とした声で言い返す。
「彼女はそんなことはしていません!
声をかけられても、あいさつ程度しかお返ししていませんし、学院内でも外でも、御一緒に過ごしたことはありません! 私が証言します!」
公爵令嬢は自分の言葉を否定されてカッとなり声を荒げた。
「サンドラ! あなたもあなたよ!
頭が良いからといつもひとりですました顔して!
お付き合いする友人は選ぶことね! 伝統あるウェルニー子爵家の名が泣くわよ!」
「そうね、そうすべきだったわ……」
サンディが毅然として言って、オリーを見た。
「オリー、残念だわ。
私たち、大切なお友達だと思っていたのに。
それでは皆様、私とコートニー男爵令嬢はここで失礼させて頂きます」
みごとな身のこなしで礼をすると、護衛と付き添いのメイドがふたりの元に急いでやってきて、ふたりをその場から連れ出そうとする。
第1王子が護衛の顔を見て、はっとした。
「あなたは?!」
護衛は目配せして軽く第1王子に頭を下げた。
「馬車をお借りすることはできますか?
ペンデルトン男爵令嬢にここまで連れて来て頂いたのだが……、彼女はここに残るようなのでね」
第1王子が頷いて、4人をエスコートするようにエントランスの方に行ってしまった。
「あら、もうおしまい」
公爵令嬢が言うと、第2王子が「皆でふたりの令嬢を吊し上げるとは……」と苦言を言った。
「吊し上げたなんて……、お話ししたかっただけよ」
「しかし、あの状態はどう見ても……」
「私は皆の意見を代表して話しただけです。
責めるなら……、そうねぇ、彼女たちを騙してこの場に連れてきたオリアナ・ペンデルトン男爵令嬢に、どうぞ!」
オリーはその言葉に驚く。
「そうよね、いつもふたりの悪口を言っていたわよね」
「オリアナ様もひどい方。友人を騙して公爵家の格式あるお茶会に引っ張り出してくるなんて!」
「見ました?
おふたりともカジュアルなドレスで……、ふふふ。
ウェルニー子爵家が財政が厳しいという噂は本当なのかしら……。
それとも、オリアナ様がちゃんと伝えなかったのかしら……、わざとね」
「まさか! それこそ嫌がらせじゃない!」
オリーは周囲の言葉を聞きながら、身体から血の気が引いていくのがわかった。
「私はカーディンス公爵令嬢のエリザベス様に言われて!」
「あら、私は騙して連れて来いなんて言ってないわよ」
貴族令嬢たちは私を利用していただけなんだ。
危なくなれば、身を翻して、オリアナに罪を着せて首謀者として差し出す気だったのだ。
オリーは逃げるように帰宅すると父に怒られた。
「何をしでかしたんだ?!
カーディンス公爵家、ウェルニー子爵家から、お前の行動で令嬢たちが傷ついたと、それに王家からもお前の行動に問題ありと連絡が来ているぞ!!」
「私はっ!
貴族令嬢として、公爵家のエリザベス様に気に入っていただこうと、お心に沿うことを……」
「そうか、公爵家からの手紙にはお前が勝手に付きまとい、他の令嬢を貶めるようなことをして、それをカーディンス公爵令嬢に頼まれたと言ったそうだな……」
ペンデルトン男爵はため息をついた。
「もう学院にもいられない。退学だ。
お前をこのまま家に置いておくことはできない……。
勘当して……、追放はできない……、お前がそれでは生きていけないからね……。
うちの商会の地方の支店にいき、事務員でもしてこれからの生計を自分で立てなさい。
そして、平民として生きなさい」
「そ、そんな……、私は……」
言い訳も聞いてもらえず、身の回りの物をカバンひとつに詰められ、オリーは地方の支店にやられ、そして、事務員になった。
◇ ◇ ◇
それから1年以上が経った。
本当なら、この時期に学院を卒業するはずだった。
新聞で、第1王子殿下が隣国の王女との婚約を発表したことを知った。
その写真を見て、オリーは驚いた。
キャンディ? 王女はキャンディにそっくりだった。
そして、小さな記事だったが、ウェルニー子爵令嬢が隣国の王子と婚約したとあった。
キャンディとサンディに謝りたい……。
そして、お祝いを言いたい。
オリーはいてもたってもいられず、休暇を貰うと王都へ向かった。
1年振りの王都。
しかし、男爵家には戻れない。
キャンディとサンディを訪ねて行くこともできない。
3人で散歩したことのある公園のベンチにぼんやりと、どうしたらいいかと座りこむ。
「オリー? もしかして、オリーなの?」
懐かしい声に振り向くと、そこにサンディが立っていた。
「あ……」
会って謝って、お祝いを言いたかったはずなのに、実際に出会うと、どうしていいかわからなくなり、オリーは固まってしまった。
「オリー、今はどうして?!
あなたが学院をやめることはなかったのに!」
「で、でも、ウェルニー子爵家からも抗議が……」
サンディはため息をついた。
「それはそうでしょう。
私もキャンディも家としての体面を傷つけられたのだから、それはきちんと抗議しなくては」
「でも、公爵家からも王家からも抗議が来て、私は勘当されて……」
「そう、そうだったのね……。
私とキャンディがあなたが学院をやめたと聞いたのが、お茶会後に学院に登校した時なの。
驚いてペンデルトン男爵家に問合せをしたけれど、もうオリーは当家にいないと……。
心配してたのよ!」
オリーはそこでやっと言うことができた。
「サンディ……、いえ、ウェルニー子爵令嬢サンドラ様、御卒業と御婚約おめでとうございます。
そして、私がしでかしてしまったこと……、貴族令嬢として扱われるのがうれしくて、大切な友人にひどいことを……、でも、私、お茶会は内輪の令嬢だけのものだって聞いてて……、いえ、どちらにしてもひどいことを……、本当にごめんなさい」
「オリー、今はどうして?」
「ここから離れた地方のペンデルトン商社の支店で働いています……。
新聞でサンディと、そのキャンディのことを見て、謝りたいと、お祝いも言いたくなって、でも、もう平民の私にはどうしたらふたりに会えるかわからなくて……」
「そう、それで途方に暮れて公園にいたのね」
「はい……」
サンディは微笑んで後ろを振り返った。
「私の婚約者を紹介するわ。
隣国ブルース王国のサイファ様よ」
オリーはその青年を見て驚きの声を上げた。
「えっ? キャンディの護衛?!」
「君に会うのは2度目だね。でも、話は聞いていたよ」
「彼は……、キャンディの兄でもあるの」
「? キャンディの?」
「ふふふ、あれから起きたこと、オリーは知らないわよね。
話をしたいから一緒に来て!」
馬車に乗り込み、ウェルニー子爵家に到着する。
客間に通されてしばらくすると、足音がしてドアがバーン! と開きキャンディが飛び込んできた。
「オリー!!」
抱きつかれて、おずおずと抱きしめ返す。
オリーの目に涙が光った。
「オリー、泣いてるの?!
泣かないでよ!」
キャンディがあわててオリーをソファに座らせ、一生懸命慰めようとする。
「いえ、ちゃんと言わせて下さい。
コートニー男爵令嬢キャンディアナ様、御卒業と御婚約おめでとうございます。
そして、私が過去にしでかしてしまったこと、おふたりにひどいことをしてしまったこと、ごめんなさい……」
キャンディとサンディが目を合わせて頷く。
「ああ、オリー、私だってあなたを騙してた。
私、ブルース王国の王女だったの。
でも、王女で留学となると、いろいろお付き合いや国と国の交流とやらで時間を取られるのが嫌で……、それで、父と親しい商人のコートニーに頼んで、こちらの国の男爵位を買ってもらい、養女として学院に入ることを考えたのよ……」
オリーは驚いてサンディを見た。
「私も知らなかったの。
あのお茶会の後、オリーが学院を退学したことを知って、キャンディとペンデルトン男爵家に行ったのよ。
その後、キャンディに打ち明けられたの。
そして、キャンディの護衛をしてくれてた方がキャンディの兄君だったということもね」
「第1王子殿下にはあの時、兄がばれちゃって、それで、私も王女だということが……。
でも、黙っていて下さった。
それで、お付き合いするようになったの……。
兄も、サンディを気に入って、一緒にこっそりとね。
卒業してから婚約を発表したというわけ」
オリーはぽかんとした表情でキャンディとサンディを交互に見た。
「やだ、オリー、大丈夫?!
私達、一緒にペンデルトン男爵家に行ってあなたの勘当を解いてもらうように言うわ!」
キャンディが言ってくれて、オリーは懐かしい我が家へ戻り、勘当も解いてもらうことができた。
次の日、またサンディが迎えに来てくれて、キャンデイと3人でゆっくり話をすることができ、オリーはやっと、その後に起こったことを知ったのだ。
第1王子がサンディとキャンディの置かれている状況について調べてくれ、第2王子もそれに協力。
高位貴族令嬢たちがふたりにしていた嫌がらせや嫌味や噂、そんなようなことが次から次に出てきた。
オリーは項垂れた。
「それでは、私が貴族令嬢たちに仲間に入れてもらったような気になって、ふたりを……つまらないと見下して、ひどいことをしていたの、もうわかっているのね……。本当にごめんなさい」
キャンディは微笑んだ。
「そうね。でもね、私達はオリーのこと憎んでないわ。
貴族令嬢たちからひどい扱いを受けて……、あなたもそういう目にずっと合ってきてたんでしょう。
だから、受け入れてもらえるのではとうれしくなっちゃったあなたの気持ちもわかったの。
悪い方に引っ張られた……ということもあるけれど、心配してたのよ、本当に」
それから、またもキャンディに意地悪をしてきた公爵令嬢とその取り巻きの貴族令嬢たちはその証拠を押さえられ断罪されて、学院をやめて地方に引っ込んだそう。
「えっ、学年の令嬢ほとんどやめた、とか?」
オリーの呟きにキャンディが苦笑いを浮かべながら言った。
「公爵令嬢がやめることになって、それに家として追随したところもあったみたいだけど……。
半分くらいかな。
おとなしくじっとしてて、責任を逃れた人もいるから……。
だから、オリーのことがとても心配だったの。
オリーこそ、一番巻き込まれた人よね。
ちょっと気持ちがふらふらしただけなのに……」
「ううん、ふたりといるのは楽しかったけれど、自分は生まれつきの貴族令嬢だという気持ちもあって、その……、ふたりのことをつまらないとか、その、自分と同じ貴族令嬢とは思えないとか……、ひどいことを考えてた時もあった……。
きらびやかなドレスとか観劇とかのお出かけに心が躍ったし、みんなから褒められたりしてうれしくなったり……。でも、あの時に、私は利用されてただけだと悟ったの。
サンディとキャンデイはそんなことなかった。だから、謝りたかった。
今回謝れて、本当に良かった。
機会を与えてくれて、本当にありがとう」
サンディとキャンディは寂し気に微笑んだ。
「オリー、私が隣国に嫁ぐ時に、一緒に行かない?」
サンディが言った。
「ペンデルトン商会の支店をブルース王国に出さない?
友達のあなたが一緒に行ってくれたら、私、心強いわ」
「いいの?
こんな私でも?」
サンディとキャンディがオリーの手を取った。
「学院に入学して一番楽しかったのは3人で過ごしていた時よ」とキャンディ。
「そうね。図書室で大好きな本の話を3人でしていたのが一番楽しかったわ、ね」とサンディも懐かしそうに言った。
「……ありがとう。
私も、私もあの時に戻りたい……」
ブルース王国にペンデルトン商社の支店ができ、女支店長が切り盛りして、大成功するのは、この後のお話。
最後までお読みいただきありがとうございます。
本当はオリーがもっと痛い目に合うという風に考えていたのですが、書き終えたらこうなってました。
評価や感想を頂けたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。