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第四章 戦士長"青の6号"

«Рейна? Настоящая?(「レイナ?本物か?」)»

 

「本物だ!マーマーン語を話せる人間だぞ!私しかいないだろ!?」

 

«Верно. И ты знаешь меня. Ошибки нет.(「確か。それに俺の事を知ってる。間違いない。」)»

 

シーニーが手を上げると、マーマーンが銃や弓の構えをといた。

 

«Вы все похожи. Пока не назвался, не поняла. Нападение — извини.(「お前たちはみんな似た顔をしてる。名乗り出るまでわからなかったんだ。襲って悪かった。」)»


シーニーが低い唸り声を上げ、魚面が歪んだ。

「なんで襲ってきた?」

レイナが問いただすと、

 

«Похожие на вас напали на наших воинов и похитили их. Моя невеста, Розовая, тоже похищена. Думал, вы с ними.(「似たような連中が我らの戦士を襲い、攫ったのだ。俺の婚約者であるロザーナも攫われた。てっきり仲間だと思った。」)»

 

「お前たちも?実はシティの連中も女達が攫われているんだ。私達も、都市の男が攫われたんだ。……共通の敵かもな」レイナが目を細めた。知ってか知らずか、この崩壊した世界で海でも陸でも豊富な資源を獲得しているマーマーンの繁殖率は人間の数倍に及ぶ。彼らの逆鱗に触れた愚か者は、ろくな死に方をしないだろう。

 

«Так ли? Зачем вы здесь? Далеко от стены.(「そうか。お前たちはなぜここにいる?ここは壁から遠い。」)»


「調査だ。言ったろう?都市の男が攫われたんだ。」

 

«Мужчин?(「男たちか?」)

 

「あぁ。」

 

«Гьяо-гьяо… Понял.(ギャオギャオ…そうか。)»


レイナが提案した。「なぁ、協力しないか?」

シーニーが首を振った。


«…Нет. Это наша беда. Наша война. Невидимый враг объявил нам войну. Рейна, твоя помощь не нужна. Розовую я сам верну.»(「断る。これは我らの問題。我らの戦だ。見えざる敵からの宣戦布告だ。レイナ。君の助けを借りるわけにはいかない。ロザーナは自分の手で取り戻す。」)


「そうか。君の矜持は理解できるよ。もし、私達に関係の有りそうな話があったら教えに来てくれるか?」

 

«Подумаю. Рейна, испытания идут хорошо?(「考えておく。レイナよ、試練は順調か?」)

 

「新たな試練の始まりだよ。シーニー…」


«Гьяо… Умрешь — отнесем к нашей матери-море. Ты единственный человек, кто знает наш язык. Для человека ты хороша. Я не хочу твоей смерти.(「ギャオ…。死んだら我らが母なる海に連れてってやる。お前は我らの言葉がわかる唯一の人間だ。人間にしてはいいやつだ。私はお前の死を望まない。」)»

 

「ありがとう。…戦士長になったんだな。おめでとう。」

 

«Да… Возвращаемся, воины! Махороба!(「あぁ。…帰るぞ戦士たち!まほろばー!」)」


シーニーが手を上げ、魚面の戦士たちが草むらに消えた。 湿った足音が乾いた地面を踏み、遠ざかっていく。


---


事なきを得て車列が再び動き出した。落ち着きを取り戻したサヴィタが後部座席でレイナに聞いた。

「中尉。突然ジープから出ていったので驚いたぞ。今度はやる前に相談してほしい。――それで、マーマーンとは?彼らはミュータントなのか?あなたは奴らの言葉がわかるのか?」

「申し訳ない大尉。あなたを置いてけぼりにしてしまいました。はい、次回は相談します。彼等はマーマーン。ミュータントの中では友好的なほうです。」私の謝罪とマーマーンの簡単な説明を聞き、サヴィタは「あれでか…」とさらなる疑問を募らせている。「ええ、少なくとも彼らには文化があり、言葉があります。覚えるのは難しいですが、覚えることで戦闘を回避できるのです。」サヴィタが驚愕を隠せず呟いた。「それも、壁の外で独学で学んだというのか」「それが、壁の外でうまく生きるって意味なんですよ。」 私はしたり顔でサヴィタに言ったが、マーマーン語は私の前世の知識だ。


マーマーンはかつてロシアの生物学者が脳疾患治療のために哺乳類から始まる海洋生物の脳を進化させた種族だ。イルカやシャチ、サメの遺伝子が混ざり、研究室で当時科学者が喋っていたロシア語を覚えた。だから彼らはロシア語で話す。海でも陸でも狩りをするが、陸の場合は湿地帯にキャンプを作るアパッチ族のような存在だ。名前に番号がつくのも研究室育ちの名残。自分たちの生みの親が女科学者だったこともあり、「Махороба!(まほろばー!)」と叫ぶのは聖なる母、海なる母という意味にあたる。彼らは死後、英雄の館へ連れて行かれると信じており、英雄的な死を望む者が多い。敵にすると死を恐れぬ死兵となって襲いかかるため非常に厄介なミュータントだ。 そんな研究所生まれの彼らの言葉は自然とロシア語になった。私が前世で科学者だった頃、ロシアに留学していた時期がある。ロシアの大学で4年ほど学び、母国に帰還したが、そのときに学んだロシア語が500年後の今、私を助けてくれている。


「大尉。彼らの装備は今見たとおりです。弓矢と槍で原始的な戦いをしますが、夜盗から奪った銃も持ってる。それに、他のミュータントと違い、群れで動き、賢いリーダーが存在し、組織的に動き統率があります。」サヴィタに説明すると、

「戦略的に動くということか。知恵あるミュータントか…厄介だな…」私のマーマーンの説明に、サヴィタが渋い顔をしてみせた。知恵あるミュータントの存在は、彼女からさぞ、大きな脅威に見えたことだろう。

 

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