第二十三章 仇討ち
カジノ跡地の廃墟の外、私はM4を手にターラの気配を探す。左肩の包帯が血で滲むが、弾薬は補給済みだ。背中のRPGと腰のナイフが頼りになる。廃墟の中ではエリカが指揮を執り、ハンスとオットーが多脚戦車を無力化し、マーマーンが緑目の増援を仕留めていた。だが、遠くから新たな重低音が響き、科学者主任の増援が姿を現す。
緑目の強化部隊だ。麻薬で感覚が麻痺し、ゾンビのようによろめきながら前進する。エリカの声が廃墟から聞こえた。「隊長!何!?こいつらゾンビみたいっス!」マーマーンも「Гьяо!化物だ!」と叫び、恐怖が広がる。私は無線に叫ぶ。「エリカ、頭を正確に撃ち抜け!それしか止められない!」
エリカがMPXを構え、「了解っス!」と応じるが、強化兵は腕や足を撃たれても平気で進む。一人のマーマーンがAKMで応戦するが、強化兵が槍を振り下ろし、鱗を貫いて倒す。「Гьяо!」悲鳴が響き、次々とマーマーンが倒れていく。私はM4で強化兵の頭を狙い、二人仕留めるが、数が多い。
ハンスとオットーが戦車を破壊し終え、強化部隊に突進する。だが、敵が電撃槍を手に現れた。ハンスが一撃を受け、鋼鉄の体が火花を散らす。「くそっ…!」彼が動きを止め、オットーも同様にショート。直後、強化兵がEMPグレネードを至近距離で投擲。青白い電磁波が広がり、二人が一時的にシャットダウンし、地面に膝をつく。私は歯を食いしばり、「ハンス!オットー!」と叫ぶが、応答はない。
その時、廃墟の外で別の戦闘が始まった。ラクシュミがニーラとターラを見つけたのだ。ラクシュミはAKS-74Uを手に、廃墟の影に隠れていたニーラの背後へ忍び寄る。ニーラが察知し、振り向いた瞬間、ラクシュミが発砲。ニーラが咄嗟に横に飛び、コンクリートの柱に身を隠す。弾丸が柱を削り、埃が舞う。ニーラがハンドガンを抜き、応戦。銃声が荒野に響き、ラクシュミが遮蔽物に飛び込んで弾を避ける。
ターラはニーラと別行動をとり、エリカの背後に忍び寄る。Glock17を突きつけ、無線を奪い、「戦闘中止だ!」と叫ぶ。私は無線に応じ、「エリカを離せ、ターラ!」マーマーンとアヤに武器を捨てるよう指示する。「武器を捨てろ!今だ!」彼らが緑目に囲まれ、両手を上げる。私はM4を地面に投げ、背中のRPGも外して捨てる。「邪魔はしない。お前がやり直すなら、ここで終わらせろ」と説得する。腰のナイフだけが残るが、それも抜いて放り投げる。
ターラが息巻く。「他の都市でやり直す。お前と部下は全員殺す!」Glockを向け、次々に発砲。私の腕、肩、足、脇腹に弾が当たり、血が流れ出す。エリカが「隊長!」と泣き叫ぶ。私は膝をつき、無抵抗のまま耐える。ターラが頭に照準を合わせ、「じゃあな、レイナ」と引き金を引こうとした瞬間――。
法螺貝の音が戦場に響く。ターラが慌てて見渡すと、丘の上にシーニーがマーマーンの大軍を率いて現れ、カジノ跡地を囲んでいた。シーニーがオークンの伝書鳩を受け取り、ついにここまで来たのだ。マーマーン達は「ブン!ブン!ジャー!ジャー!」と歌いながら、銃や槍をかかげ、シーニーの合図を待っていた。上空ではサヴィタの正規軍のオスプレイが飛び、敵のオスプレイと戦車を破壊。それを見たシーニーが「Махоробаー!」と叫び、シーニーを追い越す形でカエルに乗ったマーマーン達が殺到。アヤ達とマーマーンを包囲していた敵が動揺する隙に、マーマーンがとびかかって反撃し、アヤ達も銃を拾って次々と打ち始める。さらには緑目の部隊の端をシーニー率いるカエル騎馬隊が襲いかかり、次々と緑目の兵士を吹き飛ばす。科学者主任が「ミュータント共め!戦車でまとめて吹きとばせ!」と叫び、暴れていた戦車が砲塔をマーマーン達に向け始めると、森の奥から突如、鋼鉄の鋼をもった鉄人達が飛び出し、戦車にまとわりつき始めた。ハンスの招集に応じて集結した元ドイツ陸軍のサイボーグ兵である。彼らはハンスとオットーを囲む兵士を次々と殴り、蹴って吹き飛ばし、彼らのジープをひっくり返すなど、マーマーンと同じく各所で暴れ始めた。もはや形勢はレイナ達に傾き、ターラたちの敗北は確定した。
「な、こんどはなんだ!?」と慌てるターラにエリカが肘打ちを当て、うぐっ!、とうずくまるターラから距離を取る。レイナがその隙に足元の銃を拾って発砲。ターラの腹に弾が当たり、彼女が血を流して倒れる。「ぐふっ…!」ターラが呻き、地面に膝をつく。
その直後、ラクシュミとニーラの戦闘が佳境を迎えた。「見つけたよ、アミン先輩と仲間の仇!」ラクシュミが叫び、AKS-74Uを連射。ニーラが柱の陰から身を出し、正確な射撃で反撃。ラクシュミの肩をかすめ、血が飛び散る。「うっ…!」ラクシュミが膝をつくが、すぐに立ち上がり、遮蔽物を転々として接近する。ニーラが冷笑し、「仕留め損ねてすまんね。寂しかったろ?」と挑発。彼女が弾倉を交換し、ラクシュミに照準を合わせる。ラクシュミが遮蔽物から飛び出し、至近距離で発砲。ニーラの腕に弾が当たり、血が噴き出すが、彼女は痛みを無視して撃ち返す。
二人の銃撃戦が続き、弾丸がコンクリートを砕き、硝煙が漂う。ラクシュミが遮蔽物の隙間からニーラの足を狙い、膝に弾を撃ち込む。ニーラが「ぐっ!」と呻き、膝をつくが、すぐに立ち上がり、ハンドガンを乱射。ラクシュミのプレートキャリアに弾が当たり、衝撃で後退する。両者が同時に弾切れを起こし、カチッと空撃ち音が響く。ラクシュミが「くそっ…!」と呟き、ニーラが「終わりだね」と笑う。
ラクシュミが腰からグルカナイフを抜き、ニーラが手斧を手に持つ。二人が距離を詰め、刃が交錯する。ラクシュミがナイフを振り下ろすが、ニーラが手斧で受け止め、金属音が響く。ニーラが反撃し、ラクシュミの肩を掠める。血が流れ、ラクシュミが歯を食いしばる。「アミン先輩の仇…絶対に許さない!」彼女が叫び、ニーラの脇腹を狙って突く。ニーラが手斧で払い、ラクシュミの腕に切り傷を負わせる。
二人が激しく斬り合う。ラクシュミが低く構え、ニーラの足を狙うが、ニーラが跳び上がり、手斧を振り下ろす。ラクシュミが横に転がり、刃が地面を叩く。土煙が舞い、ラクシュミが立ち上がって突進。グルカナイフがニーラの肩をかすめ、血が滴る。ニーラが「しぶといね!」と叫び、手斧を横に振る。ラクシュミが後退し、刃が耳を切り落とす。「うっ!」血が流れ、ラクシュミがよろめく。
ニーラが追撃し、手斧を振り上げる。ラクシュミが最後の力を振り絞り、グルカナイフを突き出す。刃がニーラの腹に深く刺さり、勢いよく引き抜くと血が吹き出す。ニーラが「がっ…!」と呻き、口から血を吐き、手斧を落とす。よろよろと腹を押さえ、膝をつく。ラクシュミが耳から血を流しながら近づき、「仲間に詫びてこい」と冷たく言い放ち、グルカナイフで首を切り落とす。ニーラの首が転がり、血溜まりが広がる。ラクシュミが息を荒げ、膝をついて肩を押さえる。
私は血まみれで膝をつき、エリカに支えられる。ターラは腹から血を流し、呻く。戦場は混沌から解放へと変わった。サヴィタが正規兵を引き連れてオスプレイから現れ、マーマーンが勝鬨を上げる。鉄人間達は戦闘終了の雰囲気を感じ取り、握りしめていた兵士の亡骸をほうり捨てた。鉄人間達は皆、敵の返り血でそまり、緑目を光らせながら静かに佇んでいる。私は血を流しながら意識を保つ。まだ終わっていない。
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