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第ニ十章 裏帳簿

廃工場跡地の裏口。レイナがエリカ、リリーたちを連れて外へ出た瞬間、夜のインド荒野に水素イオンエンジンの唸りが響き、陽動チームのジープが土煙を上げていた。オットーとラクシュミがアディティヤとヴィクラムを、ハンスが武装したマーマーンを連れて合流し、医療班が慌ただしく応急処置を施す。レイナが部下を見回し、「全員無事だ。だが、ターラがまだ諦めてない。負傷者を守りながらカジノ跡地へ後退するぞ」と指示を出した。マーマーンが「Махороба!(まほろばー!)」と雄叫びを上げ、ハンスが「落ち着けよ…」と呆れ顔で呟く中、廃工場の中では混乱が広がっていた。


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廃工場内、中央棟の監視室。ターラが監視カメラの映像を睨みつけていた。スクリーンには、通路を進むレイナとエリカ、男性被害者を連れて出口へ向かうオットーとラクシュミ、マーマーンを引き連れて駆け進むハンスの姿が映し出されている。ターラが口をあんぐりと開け、「何!?何だこいつら!?」と驚愕の声を上げた。


周りの科学者たちが慌てふためき、「何!?何が起こってるんだ!?」と叫び合い、部屋が騒然となる。だが、ネギ女だけが一人冷静に映像を見つめ、ラクシュミの姿に目を細めた。「あいつは…くそ、通りで。なーんか死体が一つ足りないと思ってたんだよなぁ」と苦い顔で呟く。彼女の頭には都市の高速道路上での、男性を護送してる車列の襲撃がフラッシュバックしていた。


ターラが頭をかきむしり、「西門には正規軍が来てる…おそらく裏帳簿もバレてる…ジャミングでもされてるのか、無線も通じない…くそ!こうなってはもはや亡命しかないぞ!?」と叫び、すぐそばにいる白衣の男に掴みかかった。「おい!主任!」

主任と呼ばれた科学者がターラの手を振り払い、「落ち着け、ターラ!今は無理だ!」と制する。ターラが肩を揺らし、「亡命させろ!約束しただろ!?」と詰め寄ると、主任が冷たく現実を突きつけた。「実験動物も、孕み袋も、男も消えた!せめて男だけでも取り返さなくては!価値ある人間として証明しなければ我が都市に亡命してもいい暮らしはできんぞ!?」

ターラが歯を食いしばり、「くそっ…確かにそうだ。なら、レイナたちを追うぞ!人質を再確保するんだ!」と決意。ネギ女がガムを噛みながらM4を手に、「仕方ないね。私も行くよ」と呟き、主任が「EMP装置と強化兵を準備しろ」と緑目の兵士に指示を出した。


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狭い執務室の中、サヴィタは廃工場で収集した裏帳簿にじっくりと目を通していた。複雑な情報の中で、ある名前が彼女の注意を引く。「この頻繁に出てくるロミラという人物、怪しいな。調べろ。」


部下の一人がすぐに反応する。「はい、大尉!都市中央区でロミラ・バザールという名前の貴族が確認されました。彼女はロミラ・シンという名義で銃販売のライセンスを取得しているようです。」


サヴィタはその言葉を聞き、心の内に不安の影が広がる。「良し、間違いない。こいつがターラに賄賂を送って、ガラクタシティのマリアに武器を売ってるんだ。これが全ての始まりだったのか…」


その時、別の部下が息を切らしながら報告をする。「サヴィタ大尉!こちらの帳簿にはレイラなる者にオス1匹を納品との供述があります!」


サヴィタは驚愕の表情を浮かべる。「何!?それはターラが都市外に男性を拉致したという明白な証拠だぞ!このまま放っておいたら…どうなってしまうんだ!」


さらに、別の部下が急報を持ってきた。「大尉、こちらの通信端末にロミラからのメールがありました。添付資料には男性襲撃計画が含まれています!護送車のルートや警備会社の情報、さらには被害者の家族構成まで…こんなの、許されるはずがない!」


「よし!この裏帳簿と通信端末を中佐に送れ!今からロミラ邸に強制捜査をかける!」サヴィタの声は力強く、決意に満ちていた。


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数分後、サヴィタは中佐に連絡を取った。「マリカ中佐殿、報告があります!ターラがロランなる武器商人から賄賂を受け取ったとの内容が明記された裏帳簿を確保しました。さらに、隠された通信端末には武器商人から入手したと思われる男性の拉致計画の立案書が発見されたんです!」


「よくやった、大尉。」マリカ中佐は冷静ながらも、彼女の報告に感謝の意を表した。「あとは首謀者を確保することが目的だな。次はどう動く?」


サヴィタは真剣に頷く。「私は、武器商人を連行し、ターラを現行犯逮捕いたします。そのために、逮捕礼状の発行をお願いいたします!」


「了解した。礼状はすぐに発行される。大尉は武器商人の確保、ターラの逮捕、どちらに向かうのだ?」


「私は、正規軍半数、そして外交官を連れて、ターラのいる壁外の廃工場に向かいます。そこには男性拉致被害者もいるはずです。その救出作戦も同時に決行します。」


「承知した。ターラ逮捕後の対応も重視しろ。外交官はそのための交渉に必要だ。」中佐の一言には毅然とした響きがあった。


サヴィタは心の奥で決意を固めた。「必ず、彼らを救い出す。任務を遂行する!」という思いが、さらなる力を与える。


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その後、サヴィタと彼女の部下たちは急いで行動を開始し、外交官たちも加わった。オスプレイ数機が西門から飛び立ち、任務の開始を告げる。


機内では、サヴィタが指示を出しながら周囲を見渡す。「皆、準備はいいか?私たちがこの任務を成功させるために、互いに信じ合って行動しよう。」


外交官が真剣な面持ちで頷き、「私たちも全力でサポートしますが、ターラの逮捕後は慎重に扱う必要があります」と伝えた。


「この任務には、私たちの誇りがかかっている。ターラだけでなく、被害者たちも守らなければならないんだから。」サヴィタの目には、強い意志が宿っていた。


オスプレイは廃工場に向かう途中、旋回しながら空中の風を切り裂く。サヴィタは仲間たちの表情を見つめながら、心の中で誓った。「必ずターラとその一味を確保し、男性達を取り戻す!……レイナ、今行くぞ!持ちこたえてくれ!」


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