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第十三章 陸泳ぎし魚群、集結せし鋼

朝が訪れ、カジノ跡地のキャンプに薄い霧が漂う。私はテントの外でオークン・デヴィトナーッツァトゥイ(オークン君)と座り、彼に簡易食を渡していた。彼が震えながら「Гьяо… Спасибо(ありがとう…)」と呟き、小さく食べ始める。その穏やかな時間が流れていると、森の奥から金属の足音が響いた。ハンスが戻ってきた。


彼が私の前に立ち、淡々と言った。「レイナ、約束通りだ。生殖機能の復活を確認した。朝、目覚めた時に…その証拠があった。」

私が軽く笑った。「あぁ、朝勃ちか。良かったね、ハンス。じゃあ、捜索に加わってくれる?」

「あぁ。お前の言うドイツ貴族の生き残り、マリアの末娘を救うためなら、協力する。祖国復活の第一歩だ。」ハンスが頷き、鋼鉄の腕を軽く叩いた。 「所であなたが夜盗からもらう予定だった潤滑油とパーツのことなんだけど……」私は昨夜から気になっていたことをハンスに聞いてみることにした。もしハンスが求めている潤滑油とパーツをこちらが提供することができれば、彼とその仲間たちを恒久的に雇えるかもしれない。「あぁ、その話なら解決した」「解決した?どうやって?」「私の元契約者に、契約破棄を言い渡してきた。そのついでに潤滑油は手に入れたが……腹正しいことに、奴らは精密パーツがあるなどと言うのは嘘だった。」「そ、そうだったんだ。それは酷いね」「まぁいい。潤滑油は手に入ったし、詫びの血液…鉄分も貰えたからな。」「……」彼らは夜盗だ。罪のない民間人を襲って生きる道を選んだ者たちだ。彼らの悲惨な結末に何も思うところはないが、数ある結末の中で一番ひどい部類に当たってしまったようだ。しかし、まさか……人を……。私はそこまで考えて思考を放棄した。潤滑油とパーツで釣らなくても、彼らには生殖機能のアンロックで恩を売れる。そうすぐには裏切られることはないはずだ。


オークン君が私を見上げ、マーマーン語で言った。「Рейна... Можно ли отправить голубя к Синему номеру 6?(レイナ…青の6号に伝書鳩を送ってもいい?)」

私が承諾した。「いいよ。」 オークン君が小さな籠から伝書鳩を取り出し、紙に簡潔なメッセージを書いて足に結びつけた。鳩が羽ばたき、霧の中へ飛び立つ。 「非常食かと思った……」サヴィタがオークンの放った鳩を見送りながら呟いた。「彼らはこうして遠距離にいながらも仲間と連携の取れた動きをするんだ。連絡手段は原始的だけどね。」「いや、文字の読み書きができるだけでも凄いことだ。壁の外にでると、常識が覆されてばかりだ……」サヴィタが途方に暮れたような顔をしている。壁の中では、野性的で言葉の通じないミュータントが蔓延る恐ろしい世界とでも教育してるんだろうか?だとしたら、サヴィタ達はここ数日で多くを学んだことになる。すべてが初めての環境で、彼らはよく頑張っていると思う。


---


ハンスがキャンプから離れ、森の中で胸部パネルを開いて内蔵端末を操作し始めた。ドイツの衛星ネットワークに繋がるチャットが起動し、彼が仲間たちにメッセージを送る。

「同志たち、生殖機能のロックが解除された。証拠としてこれを見ろ。」

彼が端末のカメラで自身の股間を撮影し、勃起した状態の画像を添付して送信。チャットが一瞬静まり、すぐに色めき立った。


- **Klaus_03**: 「何!?本当か、ハンス!?」

- **Greta_09**: 「ロック解除だと?誰がやった?」

- **Otto_15**: 「祖国復活の希望が見えたぞ!」


ハンスが返信した。「レイナという女だ。彼女の保護と、マリア・マルティネスの末娘救出に協力する。同志たちも動け。拉致被害者捜索に加われ。」

チャットがさらに沸き立つ。


- **Klaus_03**: 「俺は徒歩で向かう。武器を揃えて今すぐ出発だ。」

- **Greta_09**: 「ジープで北へ行く。近くの同志と合流する。」

- **Otto_15**: 「俺も仲間を集める。ドイツの血を復活させるぞ!」


サイボーグたちは各地で動き始めた。ある者は荒野を歩き、ある者はガソリン車を駆り、ある者は近い仲間と合流し、拉致被害者捜索に乗り出す。彼らのネットワークの中には、拉致被害者が集められた研究施設に潜む同志がいた。敵の全貌を知る内部協力者だ。だが、その情報がレイナに届くのはまだ先のことだった。


---


場面が変わり、伝書鳩が湿地帯の空を飛び、青の6シーニー・シェストの元へ到着する。シーニーが魚のような手で鳩を捕まえ、足に結ばれた紙を取り出して黙読した。内容はとても簡潔なものだった。

 

「敵は北に」


シーニーが紙を握り潰し、鳩を再び空に放した。彼が魚面を上げ、低く叫んだ。「Махоробаー!(まほろばー!)」

その背後には、カエルのミュータントに騎乗したマーマーンの戦士たちの大群が広がっていた。部族の印がかかれた旗を掲げ青い鱗が朝日を反射し、槍や弓、銃を手に持つ彼らが、砂埃を上げながら法螺貝を吹き、ゆっくりと前進を開始した。湿地の水面が揺れ、彼らの進軍が荒野に響き渡る。

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