いちろうの帰郷③
数日後、さくら船が月見村の星域に近づいた。いちろうは甲板の縁に立ち、目を凝らす。
「何!? あれが……村!?」
遠くに小さな星が見え、月が大きく輝いている。だが、星の表面に黒い影が広がり、煙が立ち上っていた。胸が締め付けられ、竹筒を握る手が震える。
「あれ!? 燃えてる!? 絵巻封じたのに!?」
ほしこが操縦桿を握り、船を加速させた。
「近づくよ。いちろう落ち着け。確かめなきゃわからない」
船が星に降り立つと、月見村の姿が現れた。神社は半壊し、焦げた柱が立っている。家々は灰になり、地面に黒い跡が広がる。だが、煙は薄く、火は消えていた。村の中心に、母ちゃんの墓が残り、竹筒が置かれている。
「何……戻ってねえのか?」
いちろうが墓に走り、竹筒を手に持つ。冷たい感触に、涙が滲んだ。
「母ちゃん……約束守れなかったのか……?」
ほしこが近づき、地面を見た。
「待って。火が消えてる。燃えた跡は古いよ。絵巻を封じる前のだ」
「何!? じゃあ――」
たびとが三味線を手に周りを見回す。
「村は燃えたままだけど、新たな火はねえ。おに火衆が来てねえってことだろ?」
かげまるが青い炎を広げ、地面を調べた。
「うむ。気配が薄い。おに火衆の残党もおらん。だが、何か変じゃな」
その時、地面がドドン!と揺れた。村の奥から黒い影が現れ、赤い鬼火がチラつく。おに火衆の残党だ。だが、その背後に巨大な影がそびえる。
「おおお! さくら船、来やがったな!」
ふたご はなおの声だ。だが、船はなく、二頭が鎧をまとった姿で立っている。狡猾な頭がニヤリと笑い、豪快な頭が剣を振り上げた。
「絵巻は封じられたが、俺はまだ生きてる! 月見村で星霊の残響をいただくぜ!」
「何!? お前、まだ諦めてねえのか!?」




