いちろうの帰郷②
さくら船が星雲を抜けると、いちろうは甲板に寝転がった。
空を見上げ、丸い月が輝く。疲れが体に染み、半妖の耳と尾がピクピク動く。第4章の戦いが頭をよぎる――はなおの「星神の宮殿」、星霊の試練、仲間との絆。胸が熱くなり、竹筒を握った。
「母ちゃん……村が戻ってたら、約束守れたって報告できるな……」
ほしこが操縦桿から手を離し、甲板に座った。ツクヨミが肩で眠り、彼女の目が遠くを見る。
「ねえ、あんたの村ってどんなとこ?」
「おっ。興味ある?」
「別に。ただ、故郷って言葉に引っかかるだけ」
冷たい声に、微かな寂しさが混じる。いちろうは起き上がり、竹筒を手に持った。
「月見村は小さいとこだけど、月がでっかく見えるんだ。神社があって、母ちゃんが毎日竹筒に水汲んでた。子供らが走り回って、夜はみんなで月見てた……」
声が震え、はなおの挑発が蘇る。「気配があったから燃やしただけさ」。拳が握られ、竹筒が軋んだ。
ほしこが目を伏せ、呟いた。
「私の故郷も似てるよ。小さな村で、星が見えた。おに火衆が来て、全部燃えたけどね」
「俺と一緒なんだな・・・」
「別に話したいわけじゃないよ。ただ、いちろうの村が戻ってたら……少し嬉しいかもね」
ほしこが顔を上げ、小さく笑う。いちろうは驚き、胸が温かくなった。
「ほしこ、ほんと優しいとこあんな」
「うるさいよ」
たびとが酒瓶を手に近づいてきた。
「へえ、いちろうん家、月が綺麗か。酒が美味そうだな。俺の故郷も星が綺麗だったけど、戦でボロボロさ」
「たびとにもそんな過去が!?」
「まあな。でも、今はさくら船が故郷だよ。お前らと一緒なら悪くない」
三味線をジャーンと鳴らし、軽い音が星雲に響く。かげまるが渋く呟いた。
「うるさいのう……だが、故郷か。わしも昔、桜宮で戦った。あそこが故郷かもしれんな」
青い炎が揺れ、皆が黙った。船が星雲を進む中、仲間との絆が静かに深まる。




