いちろうの帰郷①
さくら船が天ノ桜宮を離れ、星雲を抜けて進んでいた。
つきみ いちろうは甲板の縁に立ち、銀河の星々を見上げていた。半妖の耳と尾がピクッと動き、疲れが残る体に冷たい風が当たる。竹筒を握り、母ちゃんの声が頭をよぎる。「月が悪いんだよ」。村が元に戻ったのか、確かめなきゃ終わらない。
「いちろう、どこへ行く?」
ゆうひ かげまるの渋い声が響き、青い炎が穏やかに揺れる。船の修復が終わり、甲板の桜の木が微かに息づいていた。
「月見村だ。俺の村に帰る。確かめなきゃなんねえ」
あまね ほしこが操縦桿を握り、ツクヨミに指を鳴らす。折り鶴が光り、船が動き出した。
「なら、行くよ。月見村の座標は……いちろう、覚えてる?」
「そんな難しいこと俺に聞くなよ! 村の近くの星雲なら――」
「テキトーだなぁ。まあ、星図で探せるよ」
ほしの たびとが三味線を弾き、星図が宙に浮かぶ。銀河の地図が光り、月見村の位置が点滅した。船が加速し、星雲の赤と青が窓の外を流れていく。
「早く着かねえかな……」
いちろうが呟くと、ほしこが冷たく笑った。
「焦るなよ。村が戻ってればいいけどね」
たびとが酒瓶を手に近づき、ニヤッと笑う。
「家で酒盛りだろ? 月が綺麗なら最高だな」
「たびとはそれしか頭にねえのか!?」
船が星雲を進む中、仲間たちの声が響き、旅の新たな一歩が始まった。




