最終決戦
いちろうが竹筒を握り、母ちゃんの声を思い出した。「月が悪いんだよ」。その言葉が胸を刺すが、仲間を見ると熱が湧いてくる。
「俺は村を助ける! 仲間と一緒に!」
月影筆を振り、狼が三匹に増え、空中で合体した。超巨大な墨の狼がガウオオオ!と咆哮し、星嵐を食い散らす。黒い墨が赤い嵐を吞み込み、庭園に咆哮が響き渡る。
「うおおお! くらえ!」
ほしこがツクヨミを飛ばし、光の結界が宮殿を包んだ。折り鶴が血の海を飛び、光が赤を押し返す。
「結界、最大出力!」
たびとが三味線をジャーンと鳴らし、光の波が宮殿を貫く。弦が震え、音が銀河に響き渡った。
「星音術、全開だ!」
はなおが剣を振り下ろし、星嵐が刃に変わる。巨大な剣が庭園を切り裂き、地面が抉れた。
「なんだ!?しぶといな!俺が神だ!」
だが、桜の根が宮殿を締め上げ、花びらが星嵐を消し去る。枯れた根が再生し、緑が戻る。絵巻が石台に光り、封印の力が爆発した。白い光が血の海を浄化し、庭園が再生を始める。桜の木が再び立ち上がり、花びらが銀河に舞った。
「おおお! 何!?」
宮殿が崩れ、はなおの鎧が砕ける。二頭が分離し、狡猾な頭が呟いた。声が震え、扇子が地面に落ちる。
「俺が……神なのに……」
豪快な頭が叫んだ。目は血走り、拳を握り潰す。
「次はお前らを潰すぞ! 覚えてろ!」
船が銀河の彼方に吹き飛ばされ、赤い光が消えた。星々が元の輝きを取り戻し、遠くの星雲が再び光り出す。銀河の闇が晴れ、静寂が戻る。
「終わった……?」
いちろうがへたり込み、竹筒を握った。汗が地面に滴り、息が荒い。腕の傷が疼くが、仲間を見ると安堵が広がる。
ほしこが小さく笑い、ツクヨミが肩に戻る。巫女服の血が乾き始め、彼女の目が穏やかだ。
「終わったよ。銀河は助かった。おに火衆もはなおも、しばらく手出しできない」
たびとが三味線を肩に担いだ。血まみれの手で髪をかき上げ、ニヤッと笑う。
「いやー、いい仕事したね。お酒飲もうぜ」
「何!? たびと、まだ呑気な――」
かげまるがフワッと近づいてきた。青い炎が穏やかに揺れ、渋い声が響く。
「お前ら、うるさいのう……だが、よくやった。いちろう、仲間を信じた覚悟が試練を抜けたんじゃな」
「俺、褒められてる!?」
かげまるの青い炎がチラッと揺れ、渋く笑った。提灯が庭園の光に照らされ、温かみがある。
ほしこが石台を見つめ、呟いた。
「絵巻が封じられた。これで私の故郷の仇も、少しは報われたかな……」
いちろうは立ち上がり、彼女を見た。血と汗で汚れた顔に、初めて見る柔らかい表情がある。
「ほしこ、初めて笑ったな。意外と優しいとこあんじゃん」
「別に優しくないよ。邪魔なら捨てるだけだから」
冷たく返すけど、ほしこの目が柔らかかった。口元に微かな笑みが浮かび、一瞬だけ仲間らしい空気が流れる。
「村は……元に戻ったのか?」
ほしこが静かに頷く。
「絵巻が封じられたなら、多分ね。でも、確かめるには戻るしかないよ」
「 また多分かよ!」
たびとが笑った。
「まあまあ、旅の楽しみだろ? 次はお前ん家で酒盛りしようぜ」
「まだそんな余裕ねえよ!」
笑い声が桜宮に響き、桜の花びらが舞った。さくら船は庭園に静かに浮かび、銀河の星々が輝きを取り戻している。庭園の地面に緑が戻り、小川が再びせせらぎを奏でる。
旅は終わりじゃない。まだ続きがあるみたいだ。




