神奪の儀
はなおの船が赤く輝き、「神奪の儀」が完成した。
庭園の桜が枯れ、根が赤く腐り、星霊の筆が悲鳴のような音を立てる。赤い紋様が地面を這い、石台を包んだ。星霊の声が弱々しく響き、途切れ途切れに届く。
「我が力……奪われる……」
船が変形し、「星神の宮殿」に進化。
金と赤の装飾が膨張し、宮殿が庭園を覆うほど巨大化した。船首の龍が動き出し、咆哮を上げると、銀河のエネルギーが流れ込む。
星々が次々と赤く染まり、遠くの星雲が崩れ、銀河の光が消え始めた。空が赤黒く濁り、星の消える音が低く響く。
「おおお! 俺が神だ! 銀河は俺の血で染まる!」
はなおの二頭が赤い光に包まれ、融合した。巨大な影が現れ、金と赤の鎧をまとった「神化したはなお」が庭園を見下ろす。身長は桜の木を超え、目は血のように赤く、扇子が巨大な剣に変わった。声が銀河に響き渡り、地面が震える。
「星霊の試練ごと俺が支配する! お前ら、跪け!」
星嵐が庭園を包み、星々が次々と消える。銀河が赤く染まり、空間がグニャッと歪んだ。庭園の地面が血の海に変わり、桜の木が倒れかける。枯れた枝が風に揺れ、血の滴が地面に落ちた。
「何!? 銀河が崩れてくぞ!?」
いちろうが叫ぶと、星霊の声が最後の試練を告げた。かすれた声が霧の中から響き、絶望的な重さを帯びている。
「我が力を守れ……さもなくば、銀河は終わる……試練は続く。何を守る? その覚悟に犠牲を払え」
筆が光り、赤い鎖が皆を縛った。いちろう、ほしこ、たびとの体が締め付けられ、力が抜けていく。鎖が皮膚に食い込み、血が滴った。
「絵巻を納めるには、力を失え。お前たちの力――月影筆、ツクヨミ、星音術――どれを差し出す?」
「何!?」
はなおが剣を振り、星嵐が刃に変わり、庭園を切り裂く。さくら船が崩れ、船首の桜の木が根元から折れた。かげまるが叫ぶ。
「わしの船が! お前ら、何とかせい!」
いちろうは鎖に縛られながら歯を食いしばった。体が重く、視界が揺れる。
「俺の筆を……失うのか!?」
ほしこが呟く。声が震え、ツクヨミが地面で微かに光る。
「ツクヨミがなくなれば、私はただの復讐者だ……」
たびとが笑うが、顔が汗で濡れている。
「星音術がなきゃ、俺、ただの呑兵衛だぜ?」
はなおが冷たく笑った。剣を手に持つ姿は、神の威厳を纏っている。
「選べよ、お前ら。誰かが力を失えば、俺が筆を手にし、神として完成する!」
鎖が締まり、いちろうの視界が暗くなる。母ちゃんの声が頭に響いた。「月が悪いんだよ」。その言葉が胸を刺す。
「俺の筆でいい! 村を助けられれば、それで――」
「待て、いちろう!」
ほしこが鎖を振りほどき、いちろうを押しのけた。動きが速く、巫女服の裾が血で重そうに揺れる。
「ツクヨミをやる。私はどうなってもいい」
「何!? ほしこ、お前――」
たびとが三味線をジャーンと鳴らし、鎖を弾く。血が指から滴り、三味線の弦が赤く染まった。
「俺の星音術でいいさ。お前らにはまだやることがあるだろ?」
「たびとまで!?」
星霊の声が響く。弱々しいが、冷徹な響きを帯びている。
「一人で十分だ。誰だ?」
いちろうは立ち上がり、鎖を振りほどいた。血が腕から滴り、竹筒が熱くなる。
「誰もやらねえ! 俺たちが力を失わなくても、試練を抜ける! 仲間がいるからだ!」
月影筆を振り、巨大狼が鎖をガウッと噛み砕く。鎖がバキバキ割れ、ほしことたびとが驚いた。かげまるが笑う。
「ほう……覚悟が試練を超えたか」
だが、はなおが剣を振り下ろし、庭園が崩壊した。星嵐が筆を包み、銀河が赤く染まる。宮殿がさらに膨張し、庭園を覆う影が濃くなった。
「おおお! 無駄だよ、お前ら! 俺が神だ!」




