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桜宮の門②

甲板から降りると、目の前に巨大な石造りの鳥居がそびえていた。

苔むした柱に「天ノ桜宮」と墨で刻まれ、風に揺れる桜の枝が鳥居を覆う。奥には静かな庭園が広がり、小川が流れ、石灯籠が淡い光を放っている。空には丸い月が浮かび、銀河の星々が遠くで瞬いていた。


「何ここ、めっちゃ綺麗じゃん……」


いちろうが呟くと、たびとが笑った。


「綺麗だよなあここ。ここが封印の場所だよ。絵巻を鳥居の奥に納めれば、おに火衆もはなおも手出しできない」

「じゃあ、さっさとやろうぜ! 村を助けるんだろ!」

「まあまあ、焦るなよ。俺、お酒飲みたいし、ちょっと休憩――」

「何!? お前、今それ言う!?」


いちろうが怒鳴ると、かげまるがフワッと近づいてきた。


「たびと、呑気すぎるのう。だが、新入り、ここは試練の場でもあるぞ。昔、わしが戦った場所じゃ。気を抜くな」

「試練って何!? お前、ちゃんと教えろよ!」


かげまるの青い炎が一瞬強く揺れ、渋い声で呟いた。


「星霊の筆を守る試練じゃ。封印するには、それに値する覚悟が必要だ。お前、準備できておるのか?」

「何!? 準備って……俺、竹筒しかねえよ!」


ほしこが冷たく笑う。


「その竹筒で十分だろ。あんたの気持ち次第だよ、新入り」


一行は鳥居をくぐり、庭園を進んだ。小川のせせらぎが耳に心地よく、桜の枝が風に揺れて花びらを散らす。庭園の中央に石台があり、その上に「星霊の筆」が浮かんでいた。細長い筆は淡い光を放ち、まるで生きているように微かに脈打っている。


「これが……星霊の筆?」


いちろうが呟くと、たびとが絵巻を手に持った。


「そう。こいつと絵巻を石台に納めれば終わりだよ。ただ、ここからが・・・」

「え、どういうこと・・・!?」


その瞬間、地面がドドン!と揺れた。


「何!?」


鳥居の奥から赤い鬼火がバーッと飛び出し、おに火衆が現れた。角を生やした赤い顔のヤツらが、そろばんをカチャカチャ鳴らしながら庭園に殺到する。


「さくら船だ! ほし絵巻をいただくぜー!」

「天ノ祭の仕上げだ! 燃やせー!」


鬼火がビュンビュン飛び、いちろうは慌てて竹筒を盾にしゃがんだ。花びらが焦げる匂いが鼻をつく。


「何!? またこいつら!?」

「ここまで追ってきたのか。しつこい連中だね」


ほしこがツクヨミに命令する。


「結界、張って!」


折り鶴が光って結界を広げるが、おに火衆の数が多すぎる。鬼火が結界を突き破り、庭園の地面に火が広がった。小川の水が蒸気になり、視界が白く濁る。


「うわっ! やばいぞ!」

「新入り、月影筆使え! 月が出てる!」


ほしこに急かされ、いちろうは空を見上げた。丸い月が輝き、体が熱くなる。耳と尾がピクッと出た。


「よし、行くぞ!」


月影筆を振ると、墨がシュッと飛び出し、二匹の狼がガウッと吠えておに火衆に飛びかかる。一匹が鬼火を食い散らし、もう一匹が角をガリッと引っ掻いた。


「うおお! くらえ!」

「やるじゃん、新入り!」


たびとが三味線をジャーンと鳴らし、光の波が鬼火を吹き飛ばす。ほしこもツクヨミを攻撃モードに切り替え、光の矢をビュンビュン飛ばした。矢が地面に突き刺さり、焦げ跡が広がる。


「おおお! うぜえぞ、さくら船!」


おに火衆が叫びながら突っ込んでくるが、数が減らない。いちろうは息を切らした。


「こいつらの数・・・!キリがねえよ!」


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