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桜宮の門①

さくら船が星雲を抜けてから、つきみ いちろうは甲板の縁に立っていた。

星雲の赤と青が遠ざかり、目の前に現れたのは銀河の中心にそびえる巨大な桜の木――天ノ桜宮だ。幹は太く、星々を飲み込むように伸び、枝には無数の桜が咲き乱れている。花びらがキラキラ舞い、淡いピンクの光が船を包む。遠くで小川のせせらぎが聞こえ、甘い花の香りが鼻をくすぐった。


「見えた・・! これが天ノ桜宮!?」


いちろうは目を丸くして見上げた。村の小さな神社とは比べものにならないスケールに、胸がドキドキする。だが、不安も込み上げる。


「ここで村を助けられるんだよな……?」


母ちゃんの竹筒を握り直す。燃えた村の記憶が頭をよぎる――子供たちの泣き声、煙の匂い、神社が崩れる音。

そして、ふたご はなおが吐いた挑発、「気配があったから燃やしただけさ!」が耳に残り、怒りが再び湧いた。あの理不尽を終わらせ、母ちゃんとの約束を守るためなら、何だってやる。


「着いたよ。天ノ桜宮」


あまね ほしこが操縦桿から手を離して言う。冷たい声に、深い決意が滲んでいた。彼女の目には、おに火衆に故郷を奪われた憎しみが宿っている。


「ここでほし絵巻を封じるんだろ? そしたら、おに火衆もはなおも終わりだよな?」


いちろうが確認すると、ほしの たびとが三味線を肩に担いでニヤッと笑った。


「そうそう。絵巻を封じれば、村も元に戻るはずだ」

「はずってのがなぁ・・・でもやるっきゃねえ!」


いちろうが叫ぶと、頭上から低い声が響いた。


「うるさいのう……だが、ここは特別な場所じゃ。わしも久しぶりだ」


ゆうひ かげまるだ。青い炎がチラつく提灯が、桜宮をじっと見つめている。いつも渋い声に、懐かしさと重みが混じっていた。


「いよいよだな・・・」

「やるしかないよ新入り。あんたが村を助けたいなら、ここで決めるしかない」


ほしこが冷たく言うと、ツクヨミに指を鳴らした。折り鶴が光って宙に舞い、さくら船を桜の根元にゆっくり着陸させる。船が地面に降り立つと、花びらがフワッと舞い上がり、足元に敷き詰められた桜の絨毯が柔らかく沈んだ。

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