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カラオケ

 修学旅行から、学校に帰るバスの中。

 ビンゴで揃った人がカラオケで歌を歌うというゲームが行われていた。

「じゃあ、次の人が最後です! ……9番!」

 どよどよ、とざわつく。

 ……なんてことだ。

 揃ってしまった……。

 みんなの前で、歌うことになるのか……。

「……はい、揃いました」

 うわぁー、緊張するー……。

「じゃあ、トリは隆斗に歌っていただき……お前大丈夫か?」

 マイクが回ってきた。

「……あ、うん。絶叫も克服したし! 勇気は出たから大丈夫!!」

「絶叫……? まあいいや、そーしたら、歌って頂きましょう! じゃあ、曲選んで……」

 曲は……あ。

 BLUE PERMISSION のLIMIT BRAKEOUT、リストにある。

 これを歌おう……。

「BLUE PERMISSION のLIMIT BRAKEOUTで」

「オッケー」

 少し経った後、イントロが流れ始めた。

 ……いつも、歌い手の活動で歌っていたから……。

 ……いける。

 大丈夫。

 ……バスの中が、静まり返る。

 Aメロが歌い終わった。大丈夫かな。

「……上手くね?」

 少し、声が聞こえてきた。

「上手い」

「意外と上手い」

 たくさんそんな声が聞こえてくる。

 待って、俺、いい感じに注目されてる……!?

 Bメロに入る。

 みんな聞いてる。

 待って、楽しい!

 サビに入る。思いっきり、歌う!

 サビを歌い切った!

「おおおー!」

 バスの中が、拍手で包まれた!

 やった!

 みんなが、俺の歌を賞賛してくれた!

 ネットでは全然成功しなかったけど、ここでは、俺の歌を、みんなが、真剣に聴いてくれている!

 ここなら、少し調子に乗っても大丈夫だよね……!

「みんなも、一緒に歌おー!」

 そう、叫んでみた。

「イエーーイ!」

 バスの中は盛り上がった!

 みんなが、ブルパミのリミブレを、俺の歌に合わせて歌ってくれている!

 この、一体感!

 めっちゃ!

 めっちゃ、楽しい!

 ラスサビ前まで来た。

 真剣に歌わなきゃ。

 バスは、静まり返った。

 俺の歌を、みんなが真剣に聴いてくれている。

 俺が。

 俺が、まるでライブをしているみたいな雰囲気だ。

 冬月さんって。

 これよりも、もっと大きな会場で。

 もっと、たくさんのお客さんがいる中で。

 思いっきり、歌を歌えるんだよな……。

 そんなことができたら、いいな。

 そんなことを、夢、見ながら。

 ラストのサビに入る!

 大きな、強い声で、できるだけ楽しそうな声で歌ってやろう!

 みんなが一緒に歌ってる!

 俺と一緒に歌ってる!

 この一体感!

 最高!

 ワクワク! ドキドキが、止まらない!

 まるで、俺の夢が叶った瞬間を疑似体験しているかのように。

 俺は、俺の世界に入り込んでいった。


 歌い切った。

「イエーイ!」

 バスの中は拍手に包まれた。

「隆斗上手いね!」

「めっちゃ上手」

「お前めっちゃ上手くね!?」 

 達成感に包まれる。

「隆斗、ガチうめー! やべー! お、そろそろ学校着いたぜ! 最後に盛り上げてくれてありがとう、隆斗!」

 司会の、背の高いサッカー部の天野がそう言うと、バスの中はもう一度拍手で包まれた。

 こんなふうに盛り上げるって、こんなに楽しいんだ。

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