プライドを捨てる
「今日は持久走の計測をする」
持久走の計測……?なんでこんな時期に。ていうか、めっちゃ冬だし、さみーし。
意味わからん。
「隆斗、1位、取ってきたぞ」
「流石、俊太だ」
隆斗はそう言って、おれに計測ファイルを渡すと、すぐに、スタートラインへと向かった。
隆斗達の組が、始まった。
隆斗は、一気に加速する……!
そして、1位の位置に着いた!
なんで……。
なんで、1位に躍り出てるんだよ。
隆斗が。
そんなこと。
できるわけ、ないだろ……!
でも。
背筋が、伸びている。
頭が、動いていない。
手は、卵を持つようにして少し広げている。
中また……。
完璧な、走りをしている。
3周目から、どんどんペースが落ちていき、隆斗は。
最終的に、最下位でゴールした。
ダッサ。
「お疲れ様。最高にダサかったよ」
「ああ?」
「でも、姿勢は良かった」
そう言うと、隆斗は、俺の両肩を掴んだ。
「本当!? 姿勢、良かった!? 良かったの!?」
……何だ何だ!? 頭のいい奴のすることって、やっぱりよくわかんない。
「俺、思考・判断・表現の内申を取ることが目的だったから、いい姿勢で走ると結構スピードでんだね、焦ったよ、でも、良かった。いい姿勢で走れてたってことは、思考・判断・表現の評価が良かったってことだから、また一歩、秋楽園高校に、日本音楽芸術大学に、近づけたから」
え……?じゃあ、隆斗は、自分の内申を取るために、わざと最下位をとったってこと……?
どんだけプライド捨ててんの、こいつ……。




