表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/34

テスト

国語のテストが終わり、次は理科のテスト。

「なあ、学年1位の隆斗。理科、どこが出ると思う」

「だからその学年1位のってやつ、ちょっと恥ずかしいからやめて。いや、わからん……等加速度直線運動とか?」

 知らない言葉が出てきた。

「なんだそれ、等速直線運動と違うのか?」

「いや、おれも実はよくわからん……けど、ノートの端の方に書いてあったから、この言葉が出るかもしれない……」

「意味を教えてくれよー」

「それは……わからん。けど、矢印が横に書いてあって、物が落ちるとき、って書いてある」

 

「始め」

 テストが開始した。

 力学の問題が並んでいる。

 順調に上から解いていった。

 

第5問

 ガリレオ・ガリレイは、イタリア・ピサの斜塔から、質量が違う2つの物体を同じ高さから同時に手を放して落とす実験を行った、という伝説がある。その時、2つの物体は、等しい時間で地面に着いた。その理由を答えよ。

 

 ……質量が違う2つの物体が、同じ高さから落として同時に落ちた。

 なんで。

 ずっとおんなじ速度で落ちてるから?

 いや、手から落とした瞬間は速度0だ。

 考えろ。

 発想を転換しろ。

 ……ああ、そういうことか。

 加速しててその加速が同じってそんだけだな。

 隆斗が加速とか言ってたな。

 この問題は楽勝。少し考えればわかる。


 テストが終わって、風が吹く。

 少し、思う。

 あいつらとは。

 隆斗と、太雅と、昌磨とは。

 高校に入ったら。別れて、しまうのかな。

『なあ、めっちゃワクワクしない……?』

『……確かに、少しだけ……ワクワクする』

『……だろ! だろ! ワクワクするだろ! 次の体育では、おれは真ん中のポジションに着く! だから』

『……じゃあおれは、フォワードにつくわー。りゅーとー、最高のパスをくれよー』

 わあ、と隆斗は満面の笑みで俺を見つめる。

『当たり前だ。その代わり、最高のシュートを打てよ!』

『……ああ』

 ……嫌だなあ。

『おれたちの最高の連係プレーだぜ!』

『……ああ! 最高! ……ねえ、隆斗』

『なんだよー!』

『俺、今、久々に……めっちゃ、ドキドキしてる』

『それ、最高の感情だよ! 俊太!』

『……ああ!』

 ……ずっと、一緒にいたいなあ。

 友達を、手放したくないなあ。

 離れたく、ないなぁ……。


 ……熱くなる、感情。

 サッカーで確かに感じた、感情。

 バレーで昔感じた、感情。

 もし。

 もしも。

 春高に出られたのならば。

 その感情は、どんなもんなんだろう。

 その理想が叶えられたら、死んでもいいくらいの。

 でも。

 それは叶えられないことくらい知っている。

 俺は、バレーが弱い……。

 それなのに。

 無理な理想を掲げるたびに。

 辛く、悲しくなる。

 本当に、辛い。

 悲しい。

 最近、冬月になっている時にも、バレーを思い出す。

 せっかく忘れようと思って、現実逃避をしようと思って歌い手活動を始めたのに。

 こんな感情になったのは、なんでだ。

 隆斗が、気づかせてきたんだ。

 ……隆斗の、せいだ。

 隆斗の、せいだ。

 あいつさえ。

 あいつさえ、いなければ。

 俺は、こんな感情には。

 ならなかった、はずなのに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ