8. 【前嶋 恵】ゴブリンの女王
今回の話は、かなりダークです。
気が付けば、洞窟の中にいる。
松明の火がユラユラと陰影を付けながら周囲を照らす。陰影の向こうからは、悲鳴と嬌声が流れている。
嗚呼、いつからここに居るのだろう……。
理性の中では、一ヶ月。
感覚では、もっと長い間、ここに居る。
ここに連れ込まれる前を思い出したら、少し前のようにも思える。
今日も、抱かれる。
横には一人の男。周りには小さなゴブリン達。
男の名は根岸……トオルだったかな?ワタルだったかな?とにかく、そんな名前。同級生だった男。
根岸には、左手の肘から下がない。
学校にいた時にはあったはず。
「やぁ、前嶋さん。ご飯は食べたかな?」
そんな事を言いながら、根岸はカチャカチャと片手で器用にベルトを外しズボンを脱いでいく。
私に脱ぐ物はない。
裸になった根岸が前に立つと、股を開く。
小柄で痩せた根岸からは想像できないような、歪で巨大な物が私の中に入っていく。
横から、啜り泣く声とヌチュヌチュという音が聞こえてくる。二人……三人、私を含めた四人共、今日も犯される。
今日、三人を抱いている内の二人は、私の子供だ。
私は、ここで二度出産している。一度目が二人、二度目の出産で一人。『人』?『匹』?どちらかは分からない。
大きな頭部には、額に小さな角、尖った耳、長い鼻、牙が見える大きな口、白眼がちの大きな目、灰色の髪の毛が生えているのもいるが、殆どは髪がない。幼児なみに小さい身体には、人よりも長い腕と短い足があり、肌は緑色を帯びている。
どう見ても、見分けのつきにくい、気味悪い生き物。だけど、何故か、自分の子だけは分かる。比較的、身体が大きくて、髪の生えたのが、そう。
それが、妊娠して一週間程で産まれてくる。
そして、二週ほどで成長する。
僅か一ヶ月で、3児の母。
…………化け物だけど。
「ウッ!」
──ハァッアァァァ……
根岸が一発目の射精をした。
大量の精子が下腹部に充満する。
「いくよ!前嶋さん」
ニタリ顔で根岸が体位を変える。
こいつは、一発目が済んでからが本気だ。
グジュッグジュッという音がパンッパンッという破裂音に混ざって周囲に響き始めた。洞窟内に反射した音が多重に聞こえてくる。その中に意識外に漏らしていた自分の声。自分でも聞いたことのない艶やかな声。クソッ、こんな奴に────
──放心していた。
ただ前を見詰めていた。
根岸の姿はない。
何人もの小さなゴブリンが、甲斐甲斐しく動き回っている。
ゴブリンは、意外とキレイ好きでマメに動く。ただ、集中が続かない。掃除を始めると、すぐに飽きて遊び始める。すると、遊び飽きて、また掃除を始める。そのスパンが短い。結果、チョロチョロと動き続ける。
一人のゴブリンが、私の手をとる。立ち上がらせようとしているみたい。
私は壁を背に、両足を投げ出しているような格好。股間から白い液体がたれ出している。
ゴブリンに手を握られたまま立ち上がると、太腿に精子が流れ落ちる。ちょっとくすぐったい。
泉に向かい、身体を洗う。
振り向けば、私がいた場所を別のゴブリンがゴシゴシと拭いていた。
──ギャギャ
私の手をとったゴブリンが『大丈夫?』と言うように声をかけてくる。灰色の髪、私の三人目の子。
泉には、さっきの三人の女の子がいた。
同じクラスだった。同じグループと言ったほうがいいか。
ずっと泣き続けていた美穂は、まだ泣いている。
途中から嬌声を上げていた真美と美悠は、異常な程念入りに陰部を洗っている。
「あっ、恵」
真美が呟くように声をかけてきた。
左手を上げて応えると、泣いている美穂の肩に右手を乗せる。
「大丈夫?」
「ヒック……ヒック……。無理、もう無理、帰して、お願い、お家に帰して……ヒック……ねぇ、お願い」
「美穂……」
「ゴメン……ゴメンね……恵に言っても仕方ないのに…………。でも、怖いの……とっても怖いの……ゴブリンが……」
「美穂……」
それしか言えなかった。
言う言葉を持っていない。
「確かに怖いよね」
真美も寄ってきて美穂の空いた肩に手を乗せた。
「恵は良いよね、いつも根岸でしょ。ゴブリンとしたことないでしょ。怖いんだよ。本当に……」
思っていた。
根岸が、美穂を真美を美悠を抱く事はある。三人共、根岸に抱かれていないときは、ゴブリンに抱かれている。でも、私はゴブリンに抱かれた事はない。
思っていたけど、思っていない。
あんな奴に……。
根岸が私に惚れているという事はありえない。
だって、私を抱いている最中に別の女の名を口にすることがあるから──『如月さん』って。
身体を洗った後は、またさっきの部屋(洞窟の袋小路?)に戻る。
二方は洞窟の壁。一方は泉に続き、残る一方には線が引かれている。
ボーダー。
勝手にこの線を越えると、この部屋には戻ってこれない。
私は、他の3人よりも先に捕まった。その時、この部屋には、知らない二人がいた。今の私たちと同じように、裸で根岸とゴブリンに抱かれていた。
ある日、その二人が逃げた。
ボーダーを越えた。
その瞬間、夥しいゴブリンに襲われた。
噛みつかれたとか、殴られたとかではない、嬲られた。穴という穴に股間の棒を代わる代わる突っ込まれ、悲鳴をあげようが、吐こうが止まることのない責めが行われた──蹂躙。
ゴブリン達が飽きて去った後には、精液塗れで壊れた二人。
それを眺める根岸。
根岸の合図で、二人は連れて行かれた。
私の知らない所。
おそらくは、別の部屋。
一度、聞いた事がある。『彼女たちはどうしているの』と、すると、根岸は、『さぁ、生きてると思うよ。だって、偶に声が聞こえるよ。でも、僕はあそこには行かないから──だって、臭いんだもん』て、ちょっと眉を寄せて言った。
『声』というのは、悲鳴なんだろうか?あの日の彼女たちの助けを求める叫声が耳に残っている。
私は、絶対に線を越えては駄目と、三人に言う。
私たちが、ここから出られる日は来ないと思う。
二人が連れて行かれ、三人が連れてこられる前、この部屋で一人きりの私に、根岸が言った。
『僕だってね、こんな事して、可哀想とか申し訳ないとか思う事もあるんだよ。でもね、前嶋さんなら、そんな事、思わなくてもいいからね。気楽だよ』
知られていた。
私がしてた事。
そして、私と同じグループにいた三人も同じ。
私をここに閉じ込めている、根岸。
私を力いっぱい抱き続ける、根岸。
私をゴブリンに抱かせない、根岸。
私を抱きながら別の女の名を呼ぶ、根岸。
別の女を思われながら抱かれ続ける、私。
ああ、使うことなんてないと思っていた力を使う。
【幻夢の日々】ON
願ったのは──推しに囲まれる日々
欲したのは──イ・シャンテ
──他の男達が、好きなアイドルに見える力。
これで、明日から根岸はイ・シャンテ。
子供は、リィ・チイ、ホ・イツ、ト・イト。
他のゴブリン達も皆んな──アイドルはいっぱいいる。
私は、夢の中の女王。
【昊ノ燈】と申します。
読んでいただき、ありがとうございます。
もし、この小説を応援したいと思っていただけたなら、ブクマを宜しくお願い致します。
面白いと思われた方
[★★★★★]で、評価くださると幸いです。
面白くないと思われた方
[★☆☆☆☆]と、一つ星で教えて下さい。
ご意見を持たれた方も、遠慮なくお伝え下さい。
良いも悪いも作者のモチベーションとなります。
これからも、宜しくお願い致しますお願い。