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業火に焼かれたロストマン  作者: 六波羅朱雀
4/5

記憶の彼方を引き摺り出して02

ぜひ最後まで読んでください!


そうして二十分ほど。

ようやくアパートの前へと辿り着いた。

二階建て、全部で九の部屋と大家の部屋がある。こじんまりとした場所だ。

鍵を使ってドアを開ける。ちなみに、おれの部屋は二階の一番端だ。

家賃が安い分とても小さな室内だ。1LDKである。まあ、風呂とトイレがあってキッチンもあって、小さいけれどテレビもある。十分だ。


なにしろ、未来のおれの家はボロッボロのゴミ屋敷みたいなアパートだったからな。


ギシギシと音が鳴る安っぽいベッドに身を預けた。

灰色の薄っぺらい布団が冷たくて、気持ちがいい。

そのままウトウトとしてしまった。


未来のおれ、いわば今のおれの意識が移る前のことは分からないが、おれは夕飯をまだ食べていなかったのだろう。

お腹が空いて、体力がなかった。


気がつけば、そのまま眠ってしまっていた。


□■□■□


眠りに落ちたおれは、いつかの夢を見た。

未来と過去の記憶が混雑して、曖昧だ。

言葉にしようにも言葉が纏まらない。自分の語彙力の無さを呪いたいものだ。もっと勉強すればよかった。


夢は、前の世界での記憶だ。

ちょうど、今のおれから半年ほど後のことだろう。

混沌とする脳内のせいで時系列もよく分からないが。

ああ、本当に、語彙力だけでなく記憶力のなさも嫌いになる。


『死んだなあ』


隣に立つ男がそう言った。楽しそうな声だった。愉快そうというか、初めて昆虫を捕まえた少年のような雰囲気だ。


けれどもその声とは違って、状況は最悪だ。

目の前に一人の警察官が倒れている。

助けなければ、と思ったのは夢を見ているおれの意識か、あるいは当時のおれの意識か。

どちらにせよこれがかつて起こった夢である以上、その時と同じ結末になるのだろう。

決して変えられはしない。


警察官の体から血が流れていく。

同時に、おれの体からも血の気が引いていく。


ああそうだ。当時のおれはこの時、選択肢を間違えた。


『なんだ、怖気付いたか?』


男が馬鹿にしたようにそう言った。

銀髪の男だ。ほとんどが黒か茶、金という髪の中で、染めることもなく銀髪になっているのは珍しい。

おまけに目の色は赤だ。まるで充血しているかのよう。


『怖気付いてなんざ、いねぇよ……』


おれの声は震えていた。


『ははッ! 真っ青じゃねぇか! 相棒!』


男は決まっておれを相棒と呼ぶ。

特に、こういう狂気の場では。


それがおれは嫌いで、逃げた。


確か、そうだ、怖くなったおれはこの場ではそれっぽく見栄を張りながらも、後日やっぱり警察署へ行って密告したんだ。

それで相棒は捕まって、おれは、裏切り者として不良の間で噂になった。


仲間を売ったクズ。

仲間を見捨てたゴミ。

一緒にいたくせに、一緒に殺したくせに、警察官を助けなかったくせに、なのに、自分だけは助かろうと密告した人間。


それがおれが世間から得た評価だ。


『相棒?』


無邪気で、強くて、馬鹿みたいに明るくて、子供で、わがままで、それでも、おれだけを相棒と呼んだ男が何度もそう繰り返す。


『相棒?』


この時の選択肢が違えばおれはこの土地を追われることはなく、不良たちから逃げるように生きることはなく、仲間を売った罪の意識を背負うこともなかったのだろうか。


『相棒? 相棒?』


ここがおれの人生のターニングポイントなのだろう。

だとすればあと半年ほどあと。


警察官には、気をつけなければ。


『相棒? 相棒? 相棒? 相棒?』


やがて来る未来で気をつけなければならないことはもう十分分かったのに、夢はまだ醒めてくれない。


『相棒? 相棒? 相棒? 相棒?』


いつしか男の顔は、かつて彼が警察に連行される時におれが電柱からこっそり見た、捨てられた子犬のような顔になっていた。


──そういえばアイツ、おれが売ったと分かってるのに、復讐してこなかったし、恨み言も言わなかったな。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

面白いと思っていただけたら嬉しいです!!

いいね等お待ちしています。


他作品もぜひ。

六波羅朱雀をどうぞよろしくお願いします。

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