第1章 絶対絶命
主人公は、さえない男子高校生。高校2年生だ。
身長は、175センチで、運動音痴、更に運の悪い事に実家は病院のため、小・中高校時代と家庭教師を付けられるも、国立大学大学院の家庭教師も匙を投げた。
ただし、この主人公には、高校入学時に、凄い美人で、スタイル抜群の女性と、恋人同士になった。何故か、気が合ったと言う。
しかし、彼女と帰宅途中、コンビニ前で、3人のチンピラに絡まれた。
しかし、フッと意識が消え、その意識が戻った時、チンピラ2人は、主人公の前で倒れており、もう一人は既に逃走していた。
恋人曰く、まるで、ブルース・リーのようだったと言う。
主人公の妹は、兄と違って、超成績が良い。その妹、曰く、次元のゆがみによりブルース・リーが転生したと言うのだ。妹は、多次元宇宙あるいは平行宇宙から、ブルース・リーが転生したのだと言う。
やがて、この話は、学校中の評判になり、主人公は、一学年上の柔道2段の番長との、タイマンへ事件と発展して行く。
何とか、このタイマン事件は、恋人の兄が大学の空手部の主将だった事と、ここでも、再び、ブルース・リーが転生し、奇跡的にこの勝負に勝つ。
更に、高校3年時には、何と、授業中に包丁を持ったかっての卒業生が、教室に乱入。先生は刺されるが、主人公の驚異的な働きで、この場を乗り切る。
この不思議な現象に、主人公は、更なる推理を考え出すのであるが……。
果たして、この主人公は、一体、どのような運命を、辿るのであろうか?
第1章 絶対絶命
俺は、さえない高校2年生。男子である。名前は、山本光一だ。
勉強もぱっとしない。身長は175センチ。そして運動音痴ときている。
実家は医者で、小学校・中学校と家庭教師も付けてくれたが、
「こら、駄目だ」と、当の家庭教師の国立大学大学院生も匙を投げた。
俺には、3歳年下の中学生の妹がいる。
両親は、どうも、この妹に医者を継がせる決心をしたようだ。
妹は、常に、学年トップである。……こりゃ、勝てんわなあ。
雄一の救いは、俺には、過ぎた恋人がいる事だ。
出逢いは、入学式の時、フト、目が合って、お互いに感じるところがあったのか、急速に仲良くなった。同じクラスだったのも幸運だった。
自宅に彼女を連れて行ったら、まず、俺の母親が腰を抜かした。
何の取り柄も無いこの俺が、美人で背も高く、スタイル抜群の女性を連れて来るとは、奇跡以外の何ものでも無い。性格も良いのは、見て、直ぐに分かる程だ。
「絶対、彼女を逃がしちゃ駄目よ。将来のお嫁さんになさいよ」と、薬剤師もしている母は、まるで、呪文のように、この俺に吹き込んだ。
言われ無くても、絶対逃すものか。
彼女: 橋本詩織は、スポーツウーマン。慎重164センチ。何より目を引くのは、その長い黒髪と、抜群のスタイルだ。
ホント、何で、こんな美少女と付き合えたのか?何度、考えてみても、やはり、お互いが気が合ったとしか、説明できない。
だが、高校2年の時、不思議な、事が起きたのだ。
彼女と、高校が終わって仲良く帰ろうとして、駅前のコンビニに寄った時の事。
見るからに柄の悪そうな三人のチンピラ風の若い兄ちゃんらがいた。……この時点で、嫌な予感がしたのだが。
その予感は、即、現実に変わった。
まず、一人のチンピラ風の一人が、俺に、近寄ってきた。
「よう、僕、美人のネエチャンと、仲良いじゃねえか。ネエチャンも、俺達とも遊ばねえか?」
これは、随分と危険な状況である。しかし、母親からは、絶対に彼女を逃すなと言い聞かされている。この場合、引き下がる、あるいは、逃げる事は出来ない。例え、半殺しにされても、彼女を守らねばならない。
気持ちは直ぐに顔に出る。
「誰が、お前らの言う事なんか、聞くもんか!」と、多分、そんな表情だったのだろう。
「生意気な顔をしやがって」、それが、相手の感情に火を付けたらしい。
つかつかと近寄って来た一人が、俺の、胸元を掴もうとしてきた。しかし、俺は、武道の話は、漫画『北斗の拳』ぐらいの知識しかない。習った事も当然無い。
絶対絶命の状態だ。
相手の右手が、俺の襟を掴んだ、正に、その時、意識が吹っ飛んだ!!!
フト、我に帰ると、二人のチンピラが、倒れているではないか?
これは、一体、どう言う事だ。
振り返って、彼女の橋本詩織を見ると、彼女も本当に驚いていた。しかも、信じられない事を言ったのだ。
「光ちゃん、いつ、どこで、カンフーを習っていたの?」
「えっ?詩織ちゃん、一体、何を言ってるん?」
「いや、だって、あんなに光ちゃんがケンカが強いなんて、まるで、映画『燃えよドラゴン』のブルース・リーのような動きだったのよ!」
「んな、馬鹿な。僕は、小学校や中学校は、勉強しかしてなかったよ。そんなブルース・リーの映画も見た事もないし……」
「でも、最初の相手は、即、右手で相手の手を払い除けて、その反動で裏拳を使って気絶させた。次の相手は、一歩踏み込んで、掌底で顎を打って、即、一歩進んで正拳突きよ。だから二人とも、一瞬で気絶。最後の一人は逃げて行ったでしょ」
「詩織ちゃん、裏拳とか掌底打ちと言う言葉は、漫画等では読んだ事があるので、少しは理解できるけど、どうしてそんな武術用語を知っているんだよ……」
「あら、私のお兄さんは、大学の空手部に入っていて、私、小さい時から、お兄さんの持っているDVDで、カンフー映画を見て、良く教えてもらったのよ。
絶対に、あの動きは、素人の動きじゃ無いわ。
光ちゃん、昔、カンフーか空手を習っていたんじゃないの。私に黙ってたんでしょ」
「それは絶対に無いよ。でも、ともかく、倒れているこの二人どうしようか?」
そこに、コンビニ店の店長も顔を出した。
「いやあ、君、もの凄く強いねえ。ともかく、君は悪くは無い。正当防衛だよ。最初に手を出したのは、こいつらだからねえ。デモ、あんなに瞬間的に勝負が付くとは思わなかったよ」と、店長も同じ事を言う。
そうしている内に、のそのそと二人が目を覚ました。この俺に、深々と礼をして、その場所から走るように逃げていった。
一体、何が、あったのか?自分でも理解できないままに。