第六話
小隊長の個性が強すぎて、イケメン指導係のフレイル学生の案内する校内について全く頭に入ってこないまま、なぜか付きまとうプロテインに早くもノイローゼを起こしそうだ。
「さて、いろいろ見たことで疲れた様子だが大丈夫か?ベルナール学生」
「覚えることが多いことと、とある圧がかかってくるために胸やけを起こしそうです」
「なにぃい、それはいかん!一刻も早くこの薬剤を口にすると良いぞぉお!」
フレイル氏がかなり気遣った言葉をかけてくれたのも束の間、小隊長がここぞとばかりに乳白色の液体を片手に近づいてくる。なぜ、俺のところについてくるんだこの人は?俺は<不遇>の人材だぞ?頼む優秀な一学年のところへ行ってくれ。
「いやぁ、私は嬉しくてたまらないぞぉお。<不遇>の雷の適正者が同じ小隊員として過ごすことができるとは、神に感謝せねばならんなぁあベルナール学生!!我奥儀を一年間徹底的に伝授してやろう。共に<不遇>と呼ばせぬように活躍しようではないかぁあ!はぁぁあああっはっはぁぁああ!!」
貧乏くじ様ありがとうよぉおおおお!!と叫びだしたいのは俺だけだろうか。
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一週間にも及ぶ小隊長直々の指導の甲斐もあり、寮生活の基本的な姿勢と周りからの評価を得て、行進訓練に次ぐ行進訓練も終わり、ようやく課業が始まる。
なんなんだあの小隊長。軍事行動の基礎とかいいながら魔術とは関係のない体育会訓練ばかりで予定を埋めやがって、他の三学年も止めに入らないし、基礎体力以前に小隊長の趣味だろうが!!
愚痴が思考を埋め尽くす中、筋肉たちの宴から離れられたことを他の一学年と祝いたいものだ。
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養成校の基本カリキュラムとして、小隊単位の活動もあるが魔術師としての思考と研究も養成校の役割である。一学年は魔術の基礎の学習と魔術師としての基礎訓練、軍事行動の習得、集団行動になれることと盛りだくさんの一年なのだ。
そんな中でなぜ俺が<不遇>の扱いなのかを教える。この世界における基礎魔術理論の講義を見てもらいたい。
「基礎魔術理論、教官のワーレン・ギアーズです。君たちが魔術師として国に貢献するために魔術の体系と現在、正しいとされている理論に関して講義をしていきたいと思います。」
俺は常識を壊す。
「さて、魔術の体系に進める前に、君たちは魔術師としての資質を認められたために成人前からこの養成校に着講し、軍人としての一歩を踏み出したわけだが、資質検査の基準と魔力系統について述べられるものはいるかな?」
そう、この検査で俺はこの<不遇>を――――
「ハイッ!」
「では、君が答えてください。所属と名前は?」
「二一八小隊、一学年レイ・ワトソンです。資質検査は魔吸結晶を利用して、体調の変化を見て調べ――――」
この、軍属を受け入れ――――
「魔力系統は“燃料”と“操作”に分類され―――――」
そして、そのどうしようもなく現実的な世界を――――
「炎と雷と活性を“燃料系”の属性、風・土・水を“操作系”の属性と分類し、雷と土を除く、四属性を主に戦闘系の魔術属性として確立させています。」
どうしようもなく物理にそぐわない常識を破壊しようと決めた。