第十四話
「二一中隊、15分間の休憩とする。各小隊単位で確認の上で休憩をとれ。以上」
「「「了解」」」
訓練開始から9時間、6度目の休憩になった。補給時間も含めるために前回までと比べて多少は長く休めるようだがもう足全体が痛い。
「二一八小隊、食事だ。少ないが入れろ」
小隊長も珍しくうるさくない。作戦行動を想定している訓練のため、騒々しいのも減点対象のようだ。
「ルード学生、足は大丈夫か?」
「フレイルさん。もう棒みたいですよ。」
乾パンもどきをかじりながら、初めての長距離行進についてぼやく。ただでさえ、軍装備に加えて、【雷】魔術用の専用装備まで背負って訓練にあたっている関係上かなりの負荷が足にかかっている。
「ははは、1学年の山場といっていいね。それよりもその装備は何だい?」
「これは秘密兵器です。対番の先輩とはいえ、まだ教えるわけにはいけませんね。」
「そうか、訓練終了までサポートはさせてもらうから頑張ろうな。」
「はい!しかし、巨獣の生息圏での訓練なのに一切戦闘行為が発生しないんですね。」
「それは、4学年の養成課程である部隊訓練実習の一環で訓練の準備や警備、安全管理を行うんだけどその一環で訓練区域の事前掃討作戦実習で巨獣生息圏でも安全に訓練することができているんだよ。将来の戦力が再起不能や死亡してしまったら大きな損失だからね。」
「なるほど、上級生の協力によって訓練に集中できているんですね。」
どうやらラノベでおなじみのトラブルが発生することのないように、徹底的に準備を行ってきたらしく、いやでも行軍訓練は中止されそうにない。
「まぁあと9時間行動したら6時間の仮眠と警戒訓練だからそれまでは頑張るしかないね。」
「二一八小隊員、残り五分だ。装備をまとめて動ける準備をしろ。」
「「「了解」」」
小隊長の指示で同級生や2学年の先輩方も動き出す。
「ルード、メシ足りたか?」
「ヤナル、少しはメシ以外のことで話題はないのか?まぁ食った気はしないが。」
同じ隊の同期が話しかけてきた。いつもメシか筋肉についてしか話をしないやつだが悪い奴ではない。オツムについては察してくれ。
「じゃぁ、訓練の確認でもするか?」
「気がめいりそうだからメシの話でいい」
そんな苦痛に等しい訓練から必死に目を背けようとするのだった。
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「二一中隊本部より伝令。これより6時間の夜間休息をとる。小隊ごとに警戒を行うこと。小隊長は20分後に中隊本部に集合。以上」
「了解した。小隊休息ポイントの選定をする。道をそれろ」
ようやく訪れる長時間の休憩に燃え尽きかけた一学年たちにも生気がほのかに戻った。
「よし、このポイントで休息をとるぞ。バディ単位で3時間ごとで警戒を行う。副隊長は3時間ごとの組み合わせを選んでおいてくれ。では、中隊本部へ行ってくる」
「了解しました。本部ではあまり口を開かないようにしてくださいね小隊長。」
「メルビィ副隊長任せるが、さすがに空気ぐらいは読めるぞ?まぁ行ってくる」
やっと強烈な一日が終わりそうだ。