第十一話
小隊長のおかげで関係を築くことのできた工房に休みの日には足しげく通い詰めては“例のもの”の製作に時間を費やした。
仕組みや何やらを問い詰められるというボーナス付でとても充実していた。
まぁ仕組みについて講義するのはとても気持ちのいいものだったのでまんざらでもなかったが・・・。
強面和彫り筋肉たちにが貪欲に知識を欲する様子は恐怖でしかないが・・・。
「若旦那ぁぁ!!上がったぜぇ!!確認してくんなぁあ!!」
「頼む、ヤトゥさん。若旦那はやめてください。確認はさせていただきますが。」
「じゃぁなんと呼べぁいいんで?旦那の部下なんで若旦那なんですが、不満すかぁ?」
「普通に名前で呼んでください。俺は敬われるようなことはしていないです。ですが“これ”はとてもいいですね」
と依頼したイメージ通りの“自分専用兵器”に湧き上がる興奮を抑えきれない。早く、早く、早く撃たせてほしい。
今回制作してもらったのは超電磁砲の原理を取り込んだ遠距離用ライフルだ。
本来であれば電荷を保持するために大型のコンデンサを必要とするが、【雷】魔術によって電子の操作が可能なため、コンデンサがなくても金属自体を電子の操作によって強制的に帯電させることができる。
また、射出用レールと弾丸が接触しないようにさえすれば大型の電気回路も必要としないため科学的ではないものの今回の試作機までこぎつけられた。
まぁファンタジーご都合素材の“バラン鉄鋼”によって熱による変形や膨張、伝導率の低下なんていうもろもろの問題のない、ただただ伝導する金属があったからに他ならないのだが・・・。
まぁ、【活性】魔術による特殊加工が必要な金属の“バラン鉄鋼”を加工する技術のある工房が【活性】魔術師の退役軍人が再就職するヤトゥ工房しかなく、小隊長に頼らざるを得なかったのである。
好き好んで小隊長を頼ったわけではないのだ。
「こかぁ放出系魔術も練習できるように補強してあらぁ。試作機、ぶっぱなすんだろ?」
「もちろんです。下がってください。」
そう声をかけ、魔術を発動させる。電子を操作し、“バラン鉄鋼”製のレールに帯電させるだけなので一瞬で準備を完了させる。
コッキングレバーを引き、マガジンから“バラン鉄鋼”を鉄で覆った弾丸を装填する。
コッキングレバーは引くと中心の部分の芯がロックされる。
今回は火薬によって射出させる仕組みではなく、ばねによって弾丸に推進力を与える仕組みにしたのだ。
「行きます!」
っっッッッガァァァァアア
引き金を引くと壁に大穴を開けた後にそんな音が響き渡ったのであった。