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第一話
陰気くさいコンクリートの箱の中、俺は教授から仰せつかった実験結果の入力に没頭しきれずにいた。
うだつの上がらない研究生生活
教授の奴隷としての生きがいのない日々に疑問が尽きない
なぜ自分はこんな日々を送っているのか
なぜ自分は煌びやかな世界にいないのか
なぜ自分はこの生活を抜け出せずにいるのか
なぜ自分はこれだけの時間をもってしても助手の椅子に座れていないのか
そのような鬱々とした日々が実験や現実とは別の場所に
「小説の主人公のように違う世界で歩いてみたい」という妄想に
物理学のない非常識な世界へむかう夢に
重くなる瞼と現実離れをした思考に支配されていく感覚を意識しつつも
「パワハラ教授」
の呟きと共に俺は抵抗をやめた
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現実はそう甘くはない
たとえファンタジーでも現実である
物理学からは逃れられない
そして困難な運命からも