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死に逝く1分前

作者: 七色 鈴音


ザシュ


そんな音が聞こえた。


小説好きな私は今までグロい表現がある小説も見たことがあるけど、本当に人間が刺される音を初めて聞いた。それと同時に刺された人間の心情も理解出来た。いや、普通に生きてれば聞くことも感じることもなく人生が終わったのに、と短く後悔する。は、まさか自分が通り魔に刺されて死ぬ、なんて誰が思うよ。今になって、自分はきっとおばあちゃんになって老化して死んでいくんだ、って心のどこかで安心してたことに気付く。そしてその自分が少し憎らしい。

朝の静かな住宅街。私の学校は遠いため、人様よりも早めにでないといけない。少し静かすぎて不気味だとは思っていたが、まさか住宅街で自分が刺されるとは思わなかった。

私を刺した男は以前から度々見かけていた。

毎朝ランニングをしているらしく、ジャージを着ていた。あ、この人また走ってる、と何の感慨もなく思っていたら次第に距離が縮まって、ザシュ、とそんな音が聞こえ、それから一歩遅れるようにして腹部に走る痛みに気付いた。す、と私に刺さっていたナイフが抜かれる。それと同時に私は崩れるように倒れ、やっと男が視界に入る。

男の手に合ったのは平和な日本には似合わない、武骨なナイフ。形状からみてきっとサバイバルナイフだろう、とこんな状況でもしっかり把握している自分がいることに、少し自嘲する。そのまま目線を上にあげ、男の顔をみると、笑っていた。それは狂喜の笑みだった。私はそれを見て、怖いとかそういう思いは浮かばず、一人でその男の笑みに納得した。

額から冷や汗が流れる。血もかなり出ているらしく、アスファルトには私の血が溢れだしていた。痛い。痛い痛い痛い!さすがに女子高生の私には少しキツいかもしれない。今にも意識を手放してしまいそうだ。そんな私をよそに、男は走っていってしまう。

あーそろそろ駄目かも。もう痛みの感覚がなくなってきた。次に目覚めるのが天国じゃなく、病院でありますように。

そう願って私は目を閉じた。


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