勘違いしていた絆
あれ、ちょっと真面目な展開入ってきた……。
僕は兄さんに助けられてきた。何かしてもらったわけではなく、いつも一緒にいてくれたんだ。そこにいるだけで、僕は救われた。
周りからの過剰な期待に押し潰されそうになった時も、やる気の無い口調で救ってくれた。辛い時もそばにいてくれた。
だけど、僕は兄さんに辛い思いばかりさせている。僕がいるから両親からも見離され、友人もいない、兄さんの好きな女性は僕が好きだった。
いつからか、兄さんは死んだような目をしはじめた。何かが抜けたような、そんな瞳。恐怖さえ感じる瞳。
そうなった原因はおそらく僕にある。だから、償わせてもらうよ。今度は僕が兄さんを助ける番だ。
だから、あんな発言をした。僕ならどうなってもいい。充分に、幸せな人生を送れた。今度は兄さんの番。元の世界に帰れば僕はもう……。
ごめんね、兄さん。辛い思いをさせて。次は兄さんが幸せになるんだ。元の世界に帰って、兄さんは幸せになる。
ここにきて初めて気づいたよ。
だから……。
「たった一人の兄さんなんです。僕の大切な家族……。だから兄さんだけは……!」
「分かった」
いきなり、隣にいる兄さんが言葉を発した。
「え?」
「もうたくさんなんだよ。やめてくれ。俺を陥れるな、人としての格をこれ以上下げてお前に何の得がある? いつもいつも、うんざりする。兄さんだけは助けて? くそったれだよ。そんな偽善はいらない。俺は俺で何とかする……!」
ああ……兄さん、僕は……僕は、間違っていたんだね。兄さんの目がそう言っている。黒い感情が渦巻く瞳は僕への……。