たまには真面目も
あいつはいつだってそうだ。俺の理解を越え、全く違う領域から答えを見つける。俺から見れば甘い決断でも、必ず結果を出すのが順也だった。
優しく、万能な勇者。地球にいる頃でもまさにそうであった。だから人気も出だし、女からも男からも好かれている。自慢の弟。
俺は社交的ではなく、優しくもない。経過がどうであれ結果が出せず、いつも失敗ばかり。無能、更に性格も悪いときている。親や親戚、学校の連中からも弾き出された存在。それが俺だ。
憎いと思った事もある。けど気づいたんだ。俺が憎んだって何も変わらない。変える力なんて俺には無いんだ。
気づいた時、俺は死んだ。肉体ではなく魂が。
いつだって俺から奪う順也。立場、親からの愛情、友達、好きな女、全て順也に取られた。
いつからだろうか、俺が思考を巡らせるようになったのは。いつも考え、考え、経過は良好にする。だけど結果が伴わない。
思考こそが俺自身。魂の死んだ俺が生きる糧が思考。
だけどあいつはいつも……いつも思考の届かない、直感というレベルで全てを片付ける。今もそうだ。
俺が経過を作り出し、順也は結果をさらっていく。俺が思考を巡らせている時、順也は一手逆転を実現させた。
それは……自己犠牲から来る感情の揺さぶり。 順也は勢い良く前に出て、言った。
「あなた達のやり方は間違っている。だけど……だけど、言うことを聞きます。だから、兄さんだけは手荒にしないでください。僕はどうなってもいい、何でもしますから……」
ああ……俺の思考は暗く深い沼の底に沈んだ。