決断力無い無い
暗中模索。
やってくれたな。これは暗に先ほど条件など簡単に破れる事を示している。俺が作り上げた優位な空気をいとも簡単にねじ曲げた。
けど、気づいているのかな? そちらが条件を破るということは、取引自体が成立せず。その場しのぎの支配なんて……あの王妃もまだまだ甘い。今は対策を速やかに練り、今の状況を看破しなければ。
ふと隣を見る。順也は感情に流されている。が、少しの理性が感情による行動を押さえつけているような感じだ。悪い傾向だ。我ながら良い弟を持って幸せだよ。
さて、脳ミソをフル回転させろ、頑張れ俺。そろそろ周りの圧力に負けて気が狂いそうだ。いいさ、俺はチキンだよ。何が悪い。あれ、これって開き直りだよね。
いやいや、そんな事を考えている場合じゃない。まずは待遇、取引の成立だ。前提条件を覆してきた相手は、もう強行に出るしか道は無い。だとしたらどうする? 口でなんとか相手を言いくるめたら僥倖なのだけど、さすがに俺はそんな口はうまく無い。
あれ、そういえば王妃は言っていたよな、損得で考えれば……などと言っていた。だとしたら、この脅しは……いやいや、相手はどうとでも出来るのだ。そんな面倒な事はしないだろう。
でももし、相手が取引を成立させるために脅しをしたなら、まだ救いはある。それに、こちらの条件も追加可能。探りを入れるか。
「つまり、そちらの言う『破格』の待遇を避ける為には、取引をうけなければならない。そういう事ですね?」
「今さら確認も必要無いでしょう。もちろんです」
ふん、相手が何を考えているのかは分からんが、まあ何とかいけるな。もう一度、場の空気を俺に持っていくんだ。……いや、もしかしたら一手逆転もあるかもしれないが、これは賭けだ。
先ほど相手が言っていた、膨大な魔力という言葉。それは順也に当てはまるのだろう。だとしたら、ある程度のハッタリで脅しを返す事も出来る。面倒な方法を使わず、一手逆転。
だが、これはバレたら全てがおしまい。メリットは高いが、それだけ危険も高まる。決断……俺って決断力無いんだけどな……。