取引、条件
「さて勇者よ、貴殿には取引を持ちかけたい。もちろん、実現は可能な取引だし、どちらも得をする。話だけでも聞いてくれんか?」
その言葉に俺は順也をチラッと横目で見る。話を聞くだけなら別に良い。取引を受けるかどうか、それが問題になるのだから。
……いや待てよ、これをうまく利用出来れば……。
俺は勇気を振り絞り口を開いた。
「嫌ですね。話すらも聞きたくありません」
その言葉に、王様は不愉快そうに眉をひそめる。そりゃそうだ、関係無い奴に横からちゃちゃ入れられたら誰だってイラッとするよ。
「お前には聞いておらん。勇者に聞いておるのだ」
来た!
「しかし王様、勇者は混乱していますし、まず俺が話を聞かない、そう言った時点で勇者も話を聞きません」
「むう、どうすれば話を聞いてもらえる?」
すんなり行き過ぎて怖いよ。王様って案外、単純なんだな。
「そうですね……まずは待遇。勇者であるこいつはもちろん、俺にも破格の待遇をしてもらいたい」
「……分かった。だから取引の話を聞いてくれんか?」
「はい。けど、話を聞くのと受けるのはまた違う話。また条件の追加はあるかもしれません」
「うむ」
バカだ。やれるぞ、この王様相手なら。どうする事も出来る。問題は隣で微笑んでいる王妃。不気味だが、まあ害は無い。警戒に留めておくか。
さあ、どんな取引かは知らないが、受けてやる。俺には最初から断る気は微塵もない。わざわざ自分から元の世界に帰る芽を誰が潰すか。
まあ、条件は色々入れされてもらうけどな。場は、流れは完全に俺が支配しているのだから。