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間章、二幕


恐怖、は感じる。感じるが、それ以上に生に対する『執着』が上回った。まるで死神のような雰囲気を漂わせる青年を見て、同時に死に対する恐怖と、死にたくないという執着が表に出てきた。


自分の手にある両刃の剣を捨て、地面に落ちていた誰のかも分からない剣を取る。僕の剣は人を斬りすぎて使い物にならない。


血の匂い、死臭漂う戦場には逃げ出さなかった兵士と、僕、そして白髪の青年しかいなかった。先ほどまでの緩い空気は流れていない。殺気と恐怖の応酬。


青年はゆっくりとこちらに歩いてくる。愉悦に表情を歪めて。


ダメだ、のまれてはいけない。僕はまだ死ぬわけにはいないんだ。兄さんと一緒に帰るまで死ぬわけには……。


そう思い、僕は叫ぶ。


「うわァァァァァァ!」


全身を魔力で強化し、自分の脳が感知出来るギリギリのスピードで青年に向かって走る。景色は流れていき、死体が積まれた足場を踏み越える。


剣に自分の魔力を纏わせ、術式を構成。効果は切断、付属は光だ。


魔法とは基本的に魔力を込め、術式を構成して意思により発動する。それは自分の体に限らず、物や空気中にも言える事だ。


僕が発動した魔法は兵士が良く使う魔法で、剣の切れ味を上げ、自分が得意とする属性を付属させる魔法。この場合、光だから敵の目を眩ませる。それだけだが、命のやり取りの中では有効すぎる魔法だ。


僕は気合いとも恐怖とも分からない叫び声を上げながら青年に近づき、剣を振り上げる。


だが、その時を待っていたかのように、青年はニヤリと口元を歪ませ、低い姿勢を取った。瞬時に拳を作り、僕のがら空きになった腹を殴る。


「ガッ……」


激しい痛み、内部のどこかが破損したのか、腹から喉を通り、血が口から出た。信じられないくらいに重く、それでいて速い一撃だ。


やはり、身体能力と魔力だけに頼ったツケが出てきた。そもそも、あっちの世界では剣なんか握った事も無い。こちらに来てからは身体能力と魔力、魔法で強くなった僕だけど、あくまでも付け焼き刃。


勇者と呼ばれている僕。その要因は凄まじい魔力の量だけだ。普通の魔法でもかなり上の魔法になる僕は、強い部類に入るだろう。


だが、それだけ。


本当の強者に会えば負ける。今まで、戦場では運良くそんな相手がいなかっただけだ。


僕は弱い。勇者なんて、過剰評価もいいところ。


しかし、僕は負けられない。目的があるから、こんな所では死ねないんだ。



そんな事を考えながら、吹き飛んでいく。


瞬間、辺りに不思議な感覚が走った。微々たる変化だが、僕には分かる。


相手は何か、魔法を使った。それもここ一帯に、張り巡らされたような魔法だ。


そう考えた時、更なる違和感。剣に発動されていた魔法が、綺麗さっぱり無くなっている。どういう事だ?


僕はまだ魔法を解除する意思は無い。だとしたら、この感覚が何か関係があると踏んだ方が妥当。


ゆっくりと思案している僕を待っているのか、青年は笑みを浮かべたままそこに立っているだけだ。僕にとっては好都合。


再び、先ほどと同じ術式を構成、剣に魔力を込める。そして、発動の意思を頭に思い描いた。


……だが、魔力は発動しない。


「クソッ!」


悪態をつく僕とは対照的に、青年はただただ狂ったように笑みを浮かべているだけであった。

仕事の合間に更新しちゃいました。とりあえず眠いです。

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