友好、甘い感情
俺は笑顔を無理やり作り、白髪の奴に向かって口を開いた。
「さっきの、凄いな。能力はもちろん、人を殺すのに躊躇いが0。こちらの方が凄まじい」
「いやいや、俺は殺し殺される、殺気が満ち満ちた戦いが好きなだけ。だから人を殺すのに躊躇なんかしない。それで、君の名前は?」
あろうことか、白髪は俺の名前を聞いてきた。何を考えているのかは分からないが、これは僥倖だ。こいつを取り込むには名前を知っておかなければいけない。
「俺はカイル。あんたは?」
「俺はサイス。カイル、気に入ったよ。出来れば友達になってくれないか?」
こいつ、何を考えているんだ。思惑はどうであれ、こいつで友達関係を築いて損は無いだろう。
俺は笑顔を頷いた。
「当然だ。サイスと俺は友達だな」
「そうだね。君に着いていけば戦場に行ける。そういう匂い、気配があるんだ」
なるほど、これが思惑か。しかし強引かつ不自然。こいつはおそらく、思慮が足りない。戦闘能力は並外れているが、頭は弱いタイプだな。
これで揃った。戦力は充分にあり、資金も武器もある。カグラには予定変更の知らせを入れるとして、問題は……呆然と立ち尽くす後ろの二人。
この現場を見て平然としている俺に警戒心を持つな。それに、サイスが人を殺す現場も見ている。ややこしい事になるまえに殺しておくか。
俺は振り返り、魔力情報を見る。自己紹介の時に言った事は間違っていなかったようだ。視覚情報から見ればな。
しかし、アイカはともかくとしてリークは使い道がありそうだ。ここで殺すのはもったいない。ならば仲間にするか……?
いや、それにしても俺に対する警戒心が厄介だ。とても仲間になるとは思えない。友好関係さえ結べればどうとでもなるんだが……。
思考だ。考えろ、二人の接し方を。警戒心があるという前提での会話だ。
俺は二人に近づき、口を開く。
「アイカは大丈夫かな?」
「え? あ、はい。おそらく気絶しているだけかと」
最小限、最低限の会話。感情の無い声はやはり俺を警戒している。まだ攻撃体勢は無いが、表情からすると時間の問題だな。精神が不安定すぎる。
「そうか。それは良かった。リークも大丈夫?」
心底安心し、心底心配そうな表情を見せる。不安定な人間にはこれが一番効果的なのだ。この一年で学んだ事だけど。
「あ、大丈夫です。カイルさんは?」
リークの表情が和らぐ。警戒心が薄れ、俺を心配する素振りも出てきた。よし、こいつは頭が良いが感情の方はどうもダメ。甘く、優しく、不安定だ。そこを突くしかないか。
「大丈夫。すぐにヤンの所へ行こう。アイカは俺が連れていく。悪いけど、先に行ってくれないかな?」
「あ、分かりました。一応、こちらに向かいます」
「ありがとう」
幼い。甘すぎる。頭は良くてもやはりただの一般人。少し甘い顔を見せれば簡単に信用する。ある意味ではバカだ。
リークは慌てて来た道を戻る。
俺はにこやかな表情を一変、真剣な表情でサイスに向き直った。
「サイス、君は戦いたいんだよな?」
「ああ。君はその場を用意してくれるのかい?」
口元に笑みを作る。こうも不自然なうまくいくなんて……。
「ああ、最高の舞台を用意しよう。サイス、君でも手に余る程の舞台を……」
その言葉を効いたサイスは、笑みを浮かべた。心底楽しそうな、狂気染みた笑み。体を震わせ、興奮に耐えているようにも見える。
「やはり……やはり君は……血の匂いがするよ……」
意味は分からないが、彼から感じ取れる感情は、歓喜。
俺はククク、と声をもらす。どうやら俺も興奮しているらしかった。
まだ準備段階だ。全ては……。