狂喜、狂気の笑み
無意識に狂喜。狂う程の喜びが体を震わせ、同時に脳ミソの中心から心臓にかけて衝撃、電撃が走った。
両手で自分の体を抱きしめ、思考する。
あれはおそらく天夢の一族で間違いは無いだろう。圧倒的な存在感を放つ魔力、色素を失った髪の色がそれを物語っていた。
あいつを味方に出来ればどれだけの利益があるか……。考えただけで恐ろしくなってきた。
彼を味方につければ、何も神威を引き込むという面倒な事をしなくてすむ。
神威を引き込むには幾つかのリスクがあり、俺はそれも含めて彼らの力を必要としたが、白髪のあいつ──天夢の一人でも味方に出来れば、もう神威など不必要だ。
早くあの女に連絡しなければ……。まだ街にいるだろうか、俺が出発したのは三時間前、金を用意するのには時間がかかるから、あいつはまだいるな。
俺は脳内に溢れる興奮で恐怖を閉じ込めた。
「リーク、先を急ごう」
リークに声をかける。その声はかなり震えていた。
「え、ええ。まあ、あそこにいけば分かる事ですね」
リークは不思議そうな表情し、ポツリと呟いた。
走り、走り、ようやく件の場所まで着いた。そこには笑いながら戦う白髪と、彼に苦戦を強いられている三人の男女。地面には一人、血まみれで倒れている男がいた。
「ハハハハハ! こんなものじゃないだろ、君達の力は! もっと俺を楽しませてくれよ!」
畏怖すら覚える狂気が、白髪から満ち溢れていた。
苦しい表情で、一人の男が火系の魔法を使おうと、赤い魔力を手のひらに集中させるが、叶わず。赤い魔力は霧散、空気に溶けていった。
その隙を突き、白髪は圧倒的なスピードで男にタックルする。男は血を盛大に吐き、戦闘不能、再起不能にまで陥る重症を負った。
続いて二人の女は魔法が使えない不可解な状況に対して納得し、接近戦で白髪を倒そうと、二人同時に飛びかかったが、それもまた叶わず。
白髪は手に黒い魔力を集めた。それは徐々に普通でも見える状態になり、煙の形を変えて無数の針になった。それを放ち、二人の女に黒い無数の針が襲い掛かる。
驚愕。故に、一瞬だけ行動が遅れたが、すぐに自分を取り戻し回避行動に移る。しかし、一瞬が勝負を決した。突然、針が加速したのだ。それに対応出来ず、二人は黒い針の群を直撃。
結果、血まみれに倒れて絶命した。
そして、先ほど白髪がタックルを喰らわせた男が苦しみに悶え苦しむ。臓器の破損、痛みで気が狂うような叫び。
それを確認した白髪は、まるで壊れた玩具を見るような目で男を見やり、頭を魔力で強化した足で踏みつけ、潰した。脳ミソがぶちまけられ、後に残ったのはビクンビクンと痙攣した男の体。
白髪はこちらに向き、笑顔を見せる。
「遅かったね。もう俺が全部殺しちゃったよ」
隣にいるリークは口を押さえ、表情を歪める。アイカは目の前の光景に愕然とし、後に意識を失った。
俺はそんな二人を尻目に、白髪へ返事を返す。
「早かったな」
「ああ。彼らは弱すぎたよ」
そんな事は無い。彼らは動きからすると手練れ、肝心なチームワークは皆無だったが、思考の切り替えや魔力の量と質から見て、達人の域に達する。
だがそんな彼らをあっさりと殺したこいつは、やはり……。
更新遅くなりました。すみません。大変な事が起きました。なんと、赤ちゃんです。彼女の妊娠が発覚。この年にパパ……お父さん……親父……。