最強、一族の狂人
世界的にも最強と名高い一族、それが天夢一族。圧倒的な魔法、身体能力、独自で編み出した技術、どれも群を抜いている。そして、最強と呼ばれる所以が、天夢一族だけにある、彼らしか使えない魔法と、特殊すぎる魔力。
彼らが最強と言われるのは確かな実績と実力。天夢一族は大陸外に拠点を置き、世界各地に存在する。
彼らの特徴それは──色素を失った真っ白の髪。
俺達は急いで敵のいる場所に向かう。派手な爆発音や地を削る音が聞こえ、俺は逃げ出したい気分になった。
目を発動し、向こうで繰り広げられている戦いを見る。
だが、そこには異常な光景が広がっていた。
「なんだよ、これは……」
立ち止まり、呆然とする。向こうには黒い煙が充満しており、他の魔力は一切見えない。いや、黒い煙に、黒い魔力にかき消されているんだ。
異常な光景。あり得ない魔力情報。
あの魔力は、侵食。魔力自体が意味を持ち、効果を発揮している。全てを飲み込み、無効化する魔力。
俺の様子に気づいたリークとアイカは、立ち止まり疑問の声を上げた。
「どうしたんですか? 早く行かないと……」
「ダメだ!」
俺はすぐさま荒げた声を出した。
「あれに近づいたら殺される……」
それほどまでに黒い魔力は殺気を持ち、禍々しかった。凶悪、狂暴。
呆然と呟く俺に、リークは目を見開きながら再び尋ねる。
「一体何が見えてるんですか!?」
その時、凄まじい音と共に、黒い魔力が渦巻いた。ぐるぐると回り、全てを巻き込む。赤い魔力も、緑の魔力も、青い魔力も全て。
存在自体があり得ない。黒い魔力など見たことが無い。あれはなんだ? 本当に人間が持ち得る魔力なのか……?
そこで、俺の脳裏にある狂人がよぎった。あの、白髪の青年。真っ白い、色素の失った髪を持つ青年が、頭をよぎった。