敵、六人の味方
その時、木々が全く異質のざわめきを発した。魔力による間接的な接触でこうなったと瞬時に判断した俺は、周りを見渡す。
仲間が魔力を使った形跡は無いから、おそらくは第三者の仕業。そしてこれは脅しだ。俺達は監視され、いつでも襲われる状況にいる。
しかし、襲ってこないという事は、こちらの戦力を警戒しているということ。ならばこちらと同等の戦力ということか。少なくとも、敵の人数はこちらと同じか少ない。
十中八九、山賊みたいな奴らではないな。脅しをかけてくる、つまりはあちらも戦力を無駄にしたくない。ということは、部隊で動いてる可能性が高いな。
ここは仲間の反応で、これからの動きを決める。
全員がこの異質に気がついているようで、しきりに辺りを気にしている。後ろの、髪が短い腰に刀を携えている男は鋭い視線で構えていた。馬車も止まり、中の一人が外に出てくる。
出てきたのは、長い茶髪を後ろでくくっている眼鏡をかけた優男。見た限り、前衛で戦える者ではない。
前の人物は白髪が印象的な切れ目の青年。どこかこの状況を楽しんでいるように口元に笑みを浮かべている。
反対側は見えないが、おそらくは女だったと記憶している。
中から出てきた茶髪は聞こえるようにポツリと呟く。
「気づいていますね? 敵はおそらく、こちらと同等の戦力か、下です。人数はこちらが有利。奇襲しなかったのは救いですが、相手は多分手練れ。威嚇はその表れです。慌てず、陣形を組んで依頼人を守りましょう」
ほう、中々の切れ者。欲しい人材だ。彼の指示を聞いて、俺は声を発する。
「相手の情報が欲しい。誰か、収集に特化した人はいませんか?」
「あ、私です」
反対側にいた女が声を上げた。
「じゃあ、前衛の人がいれば彼女を守り、貴女は敵の情報を収集してください。馬車は俺達で守ります」
同意したように、茶髪の男は頷いた。