挨拶、バイバイの気まずさ
今ある手持ちが約100万。その内、仕事の準備で使うのが30万ほど。そして、残りはなるべく目的の為に使いたい。50万はさすがに、ねえ?
一瞬、狸ジジイからもらった魔石を売ってしまおうかと考えたが、やはりなんていうか、それはダメでしょ、人として。
「うーん、やっぱりいいや。確かに手が出ない」
情報を買ったとしても、まず必要のある情報じゃなかったら、かなり厳しい。リンナさん、情報屋としては二流もいいとこだからな。
「そうかい。で、次の仕事は?」
そうだ、言い忘れていた。俺がこの国を去る事、もう会う事も無いって事。
「リンナさん、実はこの仕事が終わり次第、俺はこの国を出るつもりなんだ。ちょっとはずせない用事があってね。次会えるかどうかも分からない」
その言葉を聞いた瞬間、リンナさんは目を見開き、驚きの声を上げた。
「ちょ、ちょっとかなり急すぐるんじゃないかい!? いきなりもう会えないみたいな事言われても、こっちは納得出来ないよ!」
「いや、まあ……言い忘れていた俺も悪いんですがね。っていうか、これはもう決定事項。変えるつもりはありません」
「だからといって……」
気持ちは分かる。一年間、一週間に何度も顔を合わせていた人がいなくなる、まあ結構辛いもんがあるね。
でも、関係無い。順也を捨てた時点で俺は進むしか無いって決めた。他人など関係無いんだ。
「…………」
「じゃあリンナさん、おやすみ」
黙りこくったリンナさんから放たれる空気に耐えきれなくなった俺は、そそくさと店を後にした。