光、嫌悪、目
光──勇者を憎む俺が求めるのは闇。憎しみに支配された闇を焦がれる。どす黒い感情は甘い蜜、果てない哀しみは至福の味。俺にとって光とは忌むべき存在だから。
いつも闇に隠れてきた俺は……。
「ねえ、どうした? 寝不足かい?」
「い、いや何でもない。リンナさんの美貌に見惚れていただけ」
俺の様子がおかしい事に気づいたリンナさんは、怪訝そうに声をかけるが、俺はふざけながら答える。
「口説いてるつもりかい? あたしはあんたのようなガキには落とせないよ」
「そうですね」
だって……彼女はまだ旦那さんの事を引きずっているのだから。リンナさんの旦那は、殺されたのだ。半年前に起こった内乱に巻き込まれて。
なんという悲劇か、そう言う人もいるだろう。だけど、悲劇こそが人を成長させ、進化させる。己に巣くった闇が人を成長させるんだ。
そんな闇を見ていると心地が良い。リンナさんを見ていると安らぐ。闇を抱えて生きる人を見ていると、ね。
「まあ、逆にあんたはあたしに見向きもしないだろうね。その目、一年前から変わって無いよ。それどころか、ますます酷くなる一方だ。あんた……一体何を抱えてんだい?」
「関係無いでしょうよ。リンナさん、誰も俺は分からない。理解しようとしても、理解出来ないんだ。例え同じ境遇の人がいても、俺っていうもんは理解出来ない」
「…………」
その言葉を聞き、リンナさんは黙りこくった。俺の言った意味でも考えているのかな? でも、彼女にはそれすら分からないだろう。
俺は肩をすくめ、用を足しに席を立った。