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ルビーアイ princess momoka  作者: アゲハ
2章 カタストロフィ
72/308

72話 嫉妬と幸せ

大広間


大きな長方形のテーブル




その両端を囲むのは、大勢のメイド姿の女性達


侍女達だと思われる




彼女達にも会釈しながら加藤さんに着いていくと、テーブルの先、上座まで促された


上座の中央にはノアが私を見て微笑む


ノアの右隣は1つ席が空き、その隣は浅田さんだ


ノアの左隣にも2席あり、老人男性が座って優しく私を見ている


そんな彼の左隣はムゥムゥさん




ソコからはテーブル両サイドに入り、ニコさん、リンリンさん、エリカ、サイカさん、そしてユユコから始まる侍女達が座る




ガコッ……




そんな音がした先に目を向けると、加藤さんが椅子を引いてくれていた


そこは、両サイドに入ったばかりの上座中の上座


浅田さんの斜め前方で、ニコさんの真ん前の席


左隣には、まだ見た事の無い侍女達が座っている




「え!? ちょっ!!」



「良いから良いから! 先ずは座れって♪ 皆、桃花待ちなんだから」




狼狽(うろた)える私の背中をグイッと押し込み、その後、肩に乗せた手で椅子に腰掛けさせた




今日来たばかりの私が、こんな()()()に……




そう思ったが、この世界の《しきたり》や《マナー》は知らないので、それ以上の言葉を(つぐ)んだ




加藤さんはポンポンと私の頭を撫でて、ノアの右隣、空いた席に腰を下ろす


ソレを見計らった様に、ノアが口を開いた




【さて、全員が揃ったようだし、食事にしようじゃないか♪】




そう言って、傍らにあったスプーンを手にし、食事へ向ける



ソレを皮切りに皆が同じく食事へ手を着けた




各所から「美味しい」「絶品」の褒め言葉が飛び交う




だが……




私が食事へスプーンを立てようとした矢先、かすかに()()()()が耳へ届いた




《誰よ、アレ》


《いきなり来て上座とか図々しくない?》




まったくもって当然だ


私だって同じ事を思ったんだから……




客人なら上座でも良いとは思うが、私が客人かどうかは疑問に感じる


いくら上の方々と知り合いだといえ、それなら侍女達の方が密な関係だろう




居たたまれなかった




解る……


今、一部の侍女から受けている感情


コレは《嫉妬(ジェラシー)》だ




でも、ソレを促されるまま了承した私にも非がある


だから、私はマナー違反だと解っていても、ノアに向けて、心のままに伝えた




「ねぇ、ノア」



【ん? どうした、桃花】




彼女は食事の手を止め、キョトンとした目を私に向ける




「私さ、こんな上の人の席は…… なんか、ヤだよ」



【何でだ? お前は僕の友人の曾孫だぞ?】



「ソレはソレだよ…… ノアとも、加藤さんとも、浅田さんとも…… 皆ともする食事は楽しいけど…… やっぱ……」



【やっぱ、何だ?】



「やっぱ、皆でワイワイ食べた方が楽しいと思う」



【だから?】



「私さ、もっと()()()()で良いよ♪」




そう笑顔で告げ、両手の小指にそれぞれスプーンとフォークを絡ませ、食事の乗った皿をこれまた両手で持ち上げる




【おいおい…… 行儀が悪いぞ……】



「うん、知ってる♪」



【なら食事を置けって……】



「ヤだ! 堅っ苦しいの好きじゃないし…… 言ったでしょ? ワイワイ食べたいの♪」




ニコリと笑顔を向けたノアに軽く一礼した私は、食事を持って大広間の扉へ歩いた


勿論、部屋を出たかったわけじゃ無い


向かった先は、円卓


()()()()()()()()()()()()()()()()




「リンデロイさん! 隣に良い?」




円卓のリンデロイに向け、私は言った




「か、構わないが…… 桃花、上座からコッチはマズくないかね?」



「何で?」



「私らは料理人さね…… 宮殿警護もしている上座グループのが、本来は役が上だよ?」



「ふーーーん…… でも、別に良くない? 食の魂を語り合った仲じゃん! 私さ、1番気心知れてる人達との食事のが美味しく食べられると思うんだよね♪」




目を丸くしたリンデロイと料理人達


そんな彼女達が、直後、笑った




「あっはっはっは♪ やっぱり桃花だねぇ! そういうアンタの型にハマらないそんなトコ、私は大好きさね♪」



「でしょ!?」



「うんうん♪ よし、お前達も隙間空けてやんな!」



『『あいさ♪』』



「ありがと♪ あ…… でも、狭くなっちゃったかな……」



「構わない、構わない♪ 立ち食いビュッフェスタイルと洒落(しゃれ)こもうじゃないか!」



「それ良いね♪」




カチャカチャと皿を寄せては私の場所を作ってくれる料理人達


皆が笑顔で、私まで癒される




そして、空けてくれた隙間に私は食事を置いた




その時だ




隣にもう3皿、同じ食事がコココトンと音を立てて並ぶ




エッ!?


顔を向けた私の隣


ソコには見知った()()()()()()が私を見ていた




「私も一緒して構わないか?」




その内の1人がそう言った




(わたくし)も是非にご一緒させて頂きたいですわ♪」



「うんうん! 私も桃花と、もっと近くで食べたい♪」




続いた2人もそう言って笑顔を映す




「エリカ…… サイカさんも、ユユコも…… 良いの? 上座グループって方は……?」




ニコリと微笑むエリカ




「食べたい人と食べるのに、権利や《しきたり》が必要なのか?」



「そうですわ♪ 食べたい人と食べた方が、より美味しくってよ」



「だねだね♪」




胸の中が熱くなる


幸せ


コレが、幸せ


一欠片の幸せに、私はちゃんと気付けている




溢れそうになる涙をグッと堪えた


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