7話 金髪7紐の美女
何だか……
色々と忘れて居た気がする
私が幼心ながらに持った《覚悟》
泉ばあちゃんから託された《覚悟》
この日……
見せられた映像の日
泉ばあちゃんは他界した
後悔した
あの日、あの継承の後に友達の家へ……
ひなこの家に遊びに行かなければ救えたのかも知れないと幾度後悔しただろう
でも、もう……
泉ばあちゃんは戻らない
咲子ばあちゃんは老衰だった
歳も歳だったから巡り来るモノ
寂しいけど、変えられない
だけど泉ばあちゃんは、咲子ばあちゃんの墓参りに行った帰りに上り下りのある道で…… 逝った
老体なのに負荷を掛けたのだろう
そういう理由なら止められたんだ
私がその場に居れば手を引いて歩けば……
直ぐに人を呼ぶことだって出来た
ああ……
そうか……
私の深層心理には後悔しか、無い
そういう事なんだね
もうヤだ
私が…… 消えたい
いや、ダメだ
絶対に果たさなければならない約束が残っている
泉ばあちゃんも咲子ばあちゃんも私とイッちゃんに世界を任せたんだ
投げる訳にはいかない
棄てる訳にはいかない
果たさなければならない
【整ったかえ?】
突如耳に届いた誰かの言葉
即座に声のした側に目を向ける
ソコには《女性》が居た
居無いと思っていただけで、人が居た
いや、ヒト…… なのだろうか?
そのヒトと思われた者は着物の様な衣服を纏い、だが髪は結われておらず、地まで着くロングヘアはブロンドの輝きを放つ
目鼻立ちは整い美麗で着物姿でもスラリとした立ち振る舞いは妖艶さもを感じる
美しいまでに昇華された透き通る白い肌
手も…… はだけた足も吸い込まれそうなほどに美しい
そんなヒトとは思えぬ美女が立って居た
だがヒトでは明らかに、無い
彼女の首元からは紐の様な…… ロープの様なモノが生えていた
4、5、6…… 7本のロープが彼女の頭頂部までの長さでグニャグニャと揺れる
「貴方…… 誰?」
私は疑問をそのまま問い掛けた
知らない
見た事は無い
ココは夢だ
なのに、全く知らない人物が現れるものなのだろうか?
こんなにインパクトのある、しかも美女なら1度目にすれば忘れるわけが無い
彼女は少し、巫山戯た様相で笑った
【ククク…… 妾を誰かと聞くかえ? 面白い宿主じゃ♪】
「宿…… 主……?」
【呆けた顔をするで無いぞ、宿主…… まぁ良いわ…… ヌシの覚悟に免じて力を使うてやろう】
「え!? 何を言ってるの!?」
ソレよりも何だ……
声が……
会話をしているというよりも、直接頭の中に語り掛けられているような響き
私の中にある4つの力に似ている
いや……
でも……
コレは、彼等と話しているよりも何かが違う
畏れ
神様を目の前にしたような……
そんな威圧感
明らかに解るのは、私と違う次元の生物だ、コレは……
そう心のどこかで確信した
【会話など必要は無い…… ヌシは後悔と覚悟とを内に秘めた…… よって、世界の為とやらに身を移そうではないか♪】
「身を移す……!? 意味が解らないよ!」
何を言っているんだ、このヒトは!?
私の焦りとは真逆の笑顔
【時が来たのじゃ♪ やり直したいのじゃろ? 後悔のする前にのぅ…… ヌシの罪を媒体に連れて行ってやろう♪】
「罪…… 媒体?」
【宿主や…… 最後に聞くが、曾祖母御と交わした覚悟…… 如何ほどかえ?】
彼女が言っている内容は解らない
でも、言っている表層の意味だけは解る
だから私は彼女の眼を見据え、答えた
「果たす…… 私は曾祖母ちゃん達との約束を違えない」
【おお、言うたわ♪ それで良いぞ! では向かうとするかえ♪】
「どこに!?」
【ヌシが曾祖母御から覚悟を託された地じゃ♪】
「な、何よ!? ソコはドコ!?」
私は叫んだ
だが、彼女は笑って居た
その美しい顔を満面の笑みにして……
でも、その顔には悪意が感じられなかった
率直に嬉しいと……
そう表現している表情
そしてその口から告げられたのは奇妙な言葉
【せっかくじゃ! 宿主が大切にしている物を持っていこうかや♪ 先ずはいつも着替えるお気に入りの着物じゃな】
そう彼女が言うといつの間にか私はパジャマ姿では無く、高校の制服を着ていた
え!?
何が起きた……!?
というより、気に入って着てるわけでは無い
制服だから着ているだけで、彼女は何か勘違いをしている!
【次は曾祖母御の生き様が入った《御守り》と《腕輪》……】
瞬間、制服のポケットに何かが現れた気配
そして左手首には咲子ばあちゃんが大切にしていた紅い装飾品の付いたブレスレットが付いていた
【さて、準備は整うた♪ 向かおうぞ】
「ドコ!? それ位教えてよ!!」
私は精一杯の冷静で問い掛ける
え!?
冷静に聞こえないって?
暴言吐かないだけ冷静でしょ!?
そんな私の思いに笑った訳では無いだろうけど、彼女は口に手を当てて最後の質問にのみ答えた
とても嬉しそうに、はしゃぐかの様に……
そして、焦りを剥き出しにする私を楽しむかのように言ったんだ
【それはのう…… 終焉の世界、《カタストロフィ》じゃ♪】
「え?」
そこで私は起きた
夢から覚めたんだ
そう、コレは夢だ
有り得るわけが無い
目が覚めた瞬間、私の体は墜ちていた
遥か上空から、風を切って……
高度何メートルっていうのかな、コレ……?
私の体は真っ逆さまに地上へと落下していた