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ルビーアイ princess momoka  作者: アゲハ
2章 カタストロフィ
62/308

62話 慈しみの心

「痛てて……」



猫化したムゥムゥを見に、扉を飛び出した瞬間、()()()()()()()部屋に()()()()()()()()




吹き飛び、倒れた私とエリカ


目を開くと、ソコには《ノア》が立っていた




【痛いのは僕の方だ……】




そういうノアは胸の辺りを(さす)っている


そんな彼女に倒れたままの私は、もはや解明した疑問を、より確立させる為に問い掛けた




「あ、ノア?」



【ん?】



「ねぇ、貴方さ…… ムゥムゥさんに何かした?」



【ああ…… あんなに拒絶されるとは思わなかったが…… 桃花の《猫》を見てな? ムゥムゥは少し感情が固めだから、もう少し柔らかい雰囲気を育てたいと思ったんだ…… 彼女は侍女から敬意を持たれているが、慕われて居るのとは少し違う気がしたんでな】



「ノア……」



【やっぱマズかったか?】



「いや、ナイスよ!!」




私はピョンと立ち上がり、ノアにグッドポーズを向ける




【あ、そう?】



「勿論よ! ネコ耳、尻尾付きとか…… 好きな人にはヨダレものよ♪」



【そう言ってくれると救われるな♪】



「うんうん! 早く見たいよ♪」



【ん? なら()()()()よ】



「ん?」




首を傾げる私に、ノアは言った




【飾りを付けた訳じゃ無くて、軽く肉体変化させたモノだぞ?】



「だから?」



【あくまでも試しにしただけって事さ♪ つまり、3()0()()()()()()()()()って事】




マジか!?


()()()()が付いてるなんて!




「ソレを早く言ってよ! 無駄な会話で時間潰したじゃん!!」



【僕との会話を無駄と言い切るお前って…… ホント命知らずなのな……】




呆れた顔を向けるノア


そんな事は知ったこっちゃ無い


今の優先順位は、間違いなくムゥムゥさんの猫姿を見る事だ


だから、私は振り向き、エリカに言った




「時間が無い、制限時間は30分だってさ! 行こう、エリカ!」



「だな! レア過ぎる状況…… こんな機会は2度と無い!」



「うん!」




私はエリカと通路へ駆け出す




【あ、エリカ……】



「はい!?」




突然、声を掛けたノア


エリカはキキキと足元からブレーキ音を鳴らし、止まった体をノアに向き直った




【ん…… んーーー…… いや、何でも無い】



「そうですか? では少し部屋を離れます!」




どうしたというのだろう?


そんな疑問を持つが、私には……


というより、ムゥムゥさんの猫化の限界時間が近付いている現状では、後が押しているのは否めない


改めて走り出そうとしたエリカに、ノアは、




【うん、気を付けてな】




と、笑顔で手を振り、



「はい!」と答えたエリカは、私と共に廊下を疾走した








桃花とエリカが、浅田 藍の部屋を出て暫くした頃


ノアと藍は、開いた扉をぼんやり眺めていた




不意に目を向けた藍の視線


その先に居るのはノアだ


何ともいえない表情のノア


そんな彼女へ向け、藍は言った




「どうなさったのです? 最後の言葉から察せば…… 何かエリカに用が有ったのでは?」




藍に目を向けたノアはポリポリと眉を掻きながら呟くように言葉にする




【ん? うん…… エリカにも試しに《ネコ耳》と《尻尾》を施そうとおもったんだよ…… アイツも少し、固めの性格だからな】



「あらら♪」



【でもな…… ()めた】




そう言ったノアは、またエリカが走り去った扉に目を向ける




「どうしてです?」



【何かさ…… 昔より表情も豊かで…… 取っつき易くなった気がしたからかな? だから必要無いかな…… ってな】




目を丸くした藍は、その後笑って口を開いた




「フフフッ♪ ソレなら原因は()()()()()ですね」



【ほぅ…… 何故そう言える?】




不思議な表情を藍に向けるノア


そんな彼女に藍は笑顔を向けていた




「友達ってソウいうものでしょ? ノア様だって昔と比べれば、とても表情が豊かになりましたよ」



【そうなのか?】



「ええ、間違いなく♪」



【そんなもんかね?】




開かれた扉を閉め、首を傾げながら部屋へと入室したノアは、丸テーブルへと歩みを進めて椅子に腰掛ける


そんな彼女へ藍は笑い、言った




「キッカケは知ってます?」



【キッカケ…… さあなぁ?】



「泉と咲子ですよ♪」



【は? アイツらが僕に何をした?】



「心を…… くれたんでしょうね」



【心…… とは?】



「慈しみの心です♪ 昔と比べ、ノア様はとても優しくなった…… それは彼女達がくれた心だと思いますよ」



【ふーーーん…… ソレって良い事なのか?】



「勿論♪」




笑い掛ける藍につられ、ノアもまた笑顔を向ける


実に優しく、嬉しそうな微笑みだった




【そっか♪ ……でな、ソレはソレとして藍、お前は随分と()()()()()()()()()してきたんじゃないか? 僕の昔を思い出せる程にな】



「思い出せるというよりは、前世の私と融合してきた感じですかね……」



【藍のまま、アースの記憶も持つと?】



「そんな感じですね」



【ふむ…… どういう場合であっても、藍の中心にはアースが居るわけか…… 問題があるなら、前世の記憶を取り外してやろうか?】




その言葉に藍は顔を振った




「大丈夫ですよ! 彼女が居て、今の私が在る…… 邪魔だなんてこれっぽっちも思ったこと無いです」



【そうか? なら良いんだが…… 共に生きていくアースか…… お前の心の中心に……】



「ん?」



【なら、今の藍の本当の名は《藍・アース・浅田》って事だな♪】




キョトンとした表情を見せる藍だったが、その後、彼女は笑顔を見せる




「私の中心にアース様が…… 良いですね、ソレ! ひょんな所で、ステキなミドルネームを頂きました♪」



【気に入ったかい?】



「とても! そして、私がその名前なら、モリサダさんは《守定・ムーン・加藤》ですね♪」



【あはは! 確かにそうだな♪】



「俺がどうかした?」




突然の声


ノアと藍は驚き目を向ける


その先には、先程ノアが閉めた扉が開かれており、その場所には、30代半ばと見られる男性が立っている


驚いた表情を、ホッと戻したノアと藍


そのノアは改めて笑顔を映し、声を掛けた




【よお、《モリサダ》♪ 今、戻ったトコか?】



「ういっす、ノア様♪ なんか俺の名前が聞こえたもんで?」



【ん? ああ、まぁな】



「悪い噂スか?」



【そんなんじゃねぇよ……】




引き攣る顔のノア


彼女にニコリと笑ったモリサダは、直後、立っていた扉前から宮殿通路へ視線を移す


そして何かを感じ取るように瞳を閉じた




「てかさ、宮殿に()()()()()()()の気配が動き回っているな…… てことは、ついに来たんスね、桃花が」



【ああ、来た♪ 咲子に似て、勘の良い女だよ…… それに咲子とは違って、友達作るのが巧いようだな】



「へぇ、もうスか!? んで、誰と友達に?」




驚く男性は意外そうな表情で、ノアへと問い掛ける




【エリカだよ】



「エリカかぁ…… って、エリカ!? あの、猪突猛進なエリカと!? ほぁぁ…… 大したもんだなぁ……」



【だろ? さすがは咲子の曾孫だな】



「ホントっスねぇ…… エリカかぁ…… あのエリカとなぁ……」



【意外すぎたか?】



「まぁ…… そうかも知れないっスねぇ…… でも……」



【でも、何だ?】



「ああ…… 新しい時代の幕開けって、こんな感じなんでしょうねぇ、ってね?」



【ククク…… だな♪】




ニヤリと笑うノアに、モリサダはフゥと一息つき、表情を整える




「さて、と…… 最後の仕上げも済んでるから…… 後は桃花の創る未来を待つだけだ」



【桃花の創る未来? 何だそりゃ?】



「こっちの話ですよ♪ なぁ、藍?」



「はい♪ 後は…… 待つだけです」




モリサダの言葉にコクリと頷く藍


互いが、互いを見詰める視線には優しい何かが映りこむ


そんなモノを知ってか知らずか、ノアは口を開いた




【僕だけ()け者か?】




モリサダと藍を見比べるノアは、少し膨れた顔を見せるが、2人はソレを受け流し言った




「夫婦の秘密って事で♪」



【ヤレヤレだな…… 仲の良い事だ……】




苦笑いに変えるノア


その顔に笑うモリサダと藍




そんな中でモリサダは思った




《頼むぜ、桃花…… お前の覚悟、俺に見せてくれ…… そして、彼女を救ってくれ……》

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