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ルビーアイ princess momoka  作者: アゲハ
2章 カタストロフィ
54/308

54話 尊厳

「まぁ、とりあえずは僕が指揮を取るニャ♪ また戦い以外の機会があればアカやアオ、クロにもチェンジのタイミングを譲るニャ♪ やったッピ! シロは器がデカいッシャ♪ 究極…… 感謝……♪」




勝手に私の体を受け渡しする契約を結ばないで欲しいが……


まぁ、皆には本当に感謝している為に、それ以上の口出しは抑えた




他の皆を、今後の飴を与えた会話で懐柔したシロの巧みさには舌を巻く




そして、目を向けたサイカ


彼女は震えながら微笑んでいた




「素晴らしい…… 素晴らしいですわよ、桃花さん♪ 1度で完成させるとは……」



「完成かどうかは解らないニャ…… 桃様も試験的と言って居るニャ」



「充分では御座いません事?」



「ソレも今後の事ニャ」



「そうですか…… でも…… 先ずは、おめでとう御座います、ですわね♪」



「さて、ニャ?」




私達の会話


ソレを端から見ていた侍女、リンリン、そしてエリカ



そのエリカは私に修練場の隅からスタスタと歩き、私の前に止まって手を上げる


そして、その手が止まったのは私の額


熱でも測っているような仕草だった




「熱は…… 無いようだな? お前、大丈夫か……? ニャとか、シャとかッピとか…… 先程までのサイカ戦で壊れた訳じゃ無いよね?」



「僕は正常ニャよ、エリカお姉ぇ」



「エリカ…… お姉ぇ?」



「何ニャ? エリカお姉ぇは、桃様のお友達ニャ♪ ニャったら、僕等もお姉ぇと呼ぶべきニャろ?」



「何言ってんだ、桃花……」




目を白黒させているエリカ


そんな彼女に語り掛けたのはサイカだった




「エリカ、その方は《桃花さんでは御座いません》わ♪」




サイカに目を向けるエリカは眉を歪ませ、言葉の意図が理解者出来ない雰囲気だ




「サイカまで何言ってる……?」



「理解出来なくても仕方なくてよ♪ 姿形は桃花さんでも、表面に出ているのは彼女の力、《猫さん》ですから」



「猫って…… あの猫?」



「そう、この世界にも居る、あの猫です♪ 桃花さんは己の能力を4つに分けてますの♪ 5匹目も居ますが…… ソレは表面に出て来れないようですわね」



「何言ってるのか解らないけど……」



「理解出来なくてもしょうが無いと申し上げました♪ まぁ、なんにせよ、桃花さんの姿をしてても、その方は違う…… ソレだけ覚えておいて下さいな」



「ハァ……?」



「いいから離れて下さいまし! お楽しみの邪魔は淑女(レディ)(たしな)み以前の事ですわよ!」



「あ、ああ…… 解った……」




私とサイカを交互に見返すエリカは、その場を後にする


そして、修練場の隅に戻った所まで目で追い、私はまた、サイカに向き直った




「さて…… 始めるニャ」



「ええ♪」



「でニャ、女」



「はい? 女とは(わたくし)の事ですの?」



「そうニャ…… そして先に言っとくニャ」



「何をですの?」



「エリカお姉ぇは、桃様のお友達ニャ…… ソレは本気で桃様も思ってるし、僕等も嬉しいニャ……」



「つまり?」



「僕は桃様の体以外をトレースした存在ニャ…… ニャけど、僕の仲間もイラついてるのは否めニャい」



「イラついてるとは?」



「桃様は負けるのが本当に好きじゃ無いニャ…… 僕等も同じニャ! 地球の友達、《ひなこ》お姉ぇは特別ニャった、負けたくて負けたニャ…… でも、この世界は別ニャ…… 勝ちたくて負けたんニャからな」



「エリカの言葉ではありませんが…… 仰る意味が……」



「言ってることは至極簡単ニャ…… 桃様は、心の奥底で悔しいと言ってるニャ…… 女…… 心の奥底では、お前に()()()()が悔しくてならないニャ!」



「強い者が勝ち、弱い者が負ける…… コレこそ真実で御座いましょう?」



「勿論で正論ニャ…… ニャけど…… ココからは僕等の想いを含めたもんニャから…… 女、聞いとくニャ……」



「はい」



「僕等の全ては桃様の為に有るニャ…… ソレこそが僕等の生きる道であり、忠誠ニャ…… 解るかニャ?」



「いえ……」



「ニャったら解りやすく伝えるニャ…… 桃様に完全ニャる敗北を抱かせた女…… 死の感情まで抱かせた女…… ボコった女……」



「ああ、なるほど♪」



「ああ、許せんニャ…… 構えるニャ…… 即座に殺してやるニャ」



「楽しませ……」




ドゴッッッ!!




変な音が周囲に響いた


何が起きたとも解らず……


でも視界に捉えたのは、サイカが吹き飛んだ光景



彼女はそれでもクルリと回転し着地した


だが、ダメージは火を見るより明らか




彼女の口から流れていたのは、吐血だった




「ゲホッ…… ゲホッ…… 素晴らしく…… 早いですわね…… こんな場所で…… ムゥムゥ様レベルと戦えるとは……」




彼女はそう言ったが、滑稽な姿だ


痛々しく口元から流れる血は、重力に逆らって流れ《上る》


実に奇妙な光景


サイカは《逆立ち》していた




ん?


いや、違う……




手を地面に付けていない?




私だ




()()()()()している!?




それも違う




《見上げて居る》、私が…… サイカを?




見上げてるのも違う




現状が解らない私は混乱していた


視界がブレた瞬間、見ているモノ全てが《反転》した様に感じる




ガチリと鳴った手


ソレを一瞬、眼が捉えた




私だった




私の体が、修練場の天井に座るかの様に……


左右の指、五指を、めり込ませた姿で…… ()()()()()()()()()いた




「女…… 桃様をイジメるのは止めるニャ…… ()()()()()()()()()()()()してるニャ…… お前がどう足掻いたとしても見舞うことは不可能…… 《鍵》は4つに分けて僕等が所持してるから、桃様に何をしても意味は無いニャよ」



「ソレは残念♪」



「つまんねー女ニャな、お前…… 余裕そうだニャ?」



「さぁ? 痛みは…… 酷いですけどね…… 一撃で吐血レベルの衝撃(インパクト)とは恐れ入りますわ」



「大丈夫ニャ、生きてるんニャから…… 桃様は…… 桃様は、お前の一撃で…… 死を覚悟したニャ…… 僕等の桃様が…… 許せるわけ無ぇニャろ!」




視界がまたブレる!


上に、下に……


右に左に!?



修練場を飛び跳ね回ってる……



有り得ない速さで!?




「お前は数秒後の未来が解るんニャろ!? 見ろ、ソレを!」




至る所に視線を向けるサイカ




「見えませんわ…… というより…… 未来が…… 変わる!?」



「僕らは獣ニャ! 当たり前が、当たり前の様に通じると思うニャよ!? エリカお姉ぇとは別の方法でお前を殺すニャ! 3秒先が見えるニャら、2秒後に気紛れを起こす事ニャんて僕達、獣は簡単なんニャよ! ソレでも見るニャ! 感じ、考えるニャ! じゃ無きゃ……」




シロの言葉を最後まで聞かず、サイカが構える


ヒュンヒュン(まわ)る廻転刀2本


防衛スタンス


高速で回るソレらは刀というより、円に見える速さ


縦横無尽に振り回すサイカの周囲全てを覆った





だが、ソレが、()()()()()()()()





私が……





私の体を動かしているシロが、手が、指が…… ソレを《つまんで》いた





「遅いニャ…… 守りとか、クダラナイ遊びは止めとくニャ…… 興醒め甚だしいニャよ…… その程度で最高速度かニャ? 蠅が止まるニャ」




一気に跳び下がろうとするサイカだが、()()()()()()()から廻転刀は離れようとしない


その表情には溺れる程の汗が流れる




「もっと本気出せニャ」



「本気…… ですわ」



「ニャら…… お前は死ぬだけニャ…… 限界超えてみせろニャ」



「コレが…… 限界…… です…… わ」




プルプルと震えるサイカの手


つまんだ程度の私の指から、廻転刀を引き剥がそうとしているが、ソレは不可能と察したのか……


彼女の手は、震えを止めた


()()()しまっていた、行動の全てを……




「弱ぇニャ、女…… その程度で桃様をボコにしたとか…… 歴史に名を残す訳にはいかないんニャ…… 解るニャろ?」



「は、はい……」



「女ぁぁ、お前はさっき言ったニャ、《負けたままの感情で終わるのは気持ちが落ち着かニャい》って…… どういう意味ニャ?」



「い、いえ…… 特に意味は……」



「はぐらかすニャ!! エリカお姉ぇには勝てニャくて悔しい…… ニャけど、桃様には勝てるから…… 今の敗北感を払拭したいと言ったのニャ! ふざけんじゃ無ぇニャ……」



「そんな…… 事は……」




サイカの言葉を聞くか聞かないかの瞬間、廻転刀を手放した私の体が、居た場から大きく飛び退く


そして少し俯いた表情、上目遣いでサイカを睨め付けた




百回(ひゃっぺん)ブッ殺しても怒りが収まら無ぇニャ…… 早く構えろニャ」



「は、はい……」




サイカは構えた、言われるがままに……




シロの……


いや、シロはアカやアオ、そしてクロの想いを背負って……


私の()()()()()()()()()()()……




言えない、私には……


サイカさんに厳しすぎる当たり方をしても、ソレを止めてと言える程、彼等の気持ちを察せ無い私じゃ無い……

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