51話 緊急回避システム
「エリカさん、本当に友達に成ってくれるの!?」
「ば…… バカ言うな! 誰が友達などと!」
「ええぇぇ!? 成ってくれないのおぉぉ……」
「いや…… ど、どうしてもと言うなら……」
「成ってくれるの!?」
「う、うん…… まぁ…… 成ってやらない訳では…… 無いけど……」
随分、上から目線の言葉だったけど、この世界に来て初めての友達と呼べる人が出来た
それ自体も嬉しかったが、私はもう1つ嬉しかった事に気が付いた
多分、間違いは無い
というわけで……
折角なので、試してみた
「あのね、エリカさん」
「エリカで…… 良い……」
「じゃあ、エリカ」
「いきなり呼び捨てか!?」
「はぁ!? 良いのか悪いのか、どっちよ!?」
「ベベベベ…… 別に…… 構わないが……」
「ハァ…… うん、まぁ、やっぱりって感じで解った……」
「な、何をだ?」
「ソレは置いとくとして…… でね?」
「うん」
「私の事、友達として好き?」
「はぁ!? 何だソレは!」
「言わなきゃ伝わらないこともあるだろうし…… ちゃんと言葉にしていた方が、今後の関係性が長続きすると思うの♪」
「長続き…… って…… ううううううう……」
「う?」
「うううううううあああぁぁぁぁ!!! 言えないぃぃぃぃ!! そんな突っ込んだ先までは言えないぃぃぃぃ!!」
「ちょ! 壊れないでよ!!」
「無理だぁぁぁぁぁ!!!」
顔を激しく赤らめ、頭を両手で抱えながら上下させては悶えるエリカ
端からは不思議な踊りをしている様に見える
そして、私は確信した
エリカは恋愛稀少種…… 《ツンデレ》だ♪
私の住んでいた場所、地球の友達にはそういったアビリティを持っている女性は居無かった為に、心が躍る
異世界で、こんなレア・ガールと友達に成れるなんて……
逸る心、感情が大きく波立つ
なんというか……
私の眠り眠ったSっ気がザワザワと起き立つ感覚を覚える
が、突如割り込んだ声の主はサイカ
「ところで桃花さん、いつまで片足を上げてますの? 下着を見せたい御趣味がお有りなのかしら?」
もうチョットだけエリカをイジメてみたかったのだが、私の感情を沈静化したサイカの言葉で、その心は収まった
「違ががぁぁぁう! そんな趣味はこれっぽっちも無い!」
即座に下ろす、蹴り上げていた足
そしてスカートの裾を直した
というより、私の意識無く蹴り上げる事なんて出来るのだろうか?
そんな疑問を持った
あの時の私は、確かに死を覚悟した
でも、生きたいとも思った
そんな2つの真逆な想いが交錯した中で、未来を読めるサイカに、しっかりとした一撃を食らわせた……
何が起きたのか、私には解らなかった
解決はしない疑問だったが、心の奥に語り掛けた者が答えを告げた
【桃様… ゴメンニャさい……】
『え、シロ……? どうしたの?』
【僕が蹴り上げたニャ…… 桃様の許可無くヤッちゃって…… ゴメンニャさい】
『そっか! どおりで…… 私が私の意志で蹴った感じじゃ無かったのよね』
【うん… 僕の責任ニャ……】
『責任なんてとんでもない! 私を助けようとしてくれたんじゃん! ありがとね♪』
【ゆ、許してくれるニャ?】
『勿論! 全然気にしてないよ!』
【よ…… 良かったニャ~♪】
本当にホッとして居るシロの感情が胸の奥に広がる
『でもさ、どうやったの?』
【ソレは、ヒトの持つ緊急回避システムにリンクして動かしたんニャよ】
『緊急回避システム?』
【誰でも持ってる感情回路ニャ♪ 死にたくニャい、生きたい…… だから防ぐって気持ちニャ】
『それで?』
【桃様の生きたいって気持ちより、死ぬかもって気持ちが優ったから…… 僕が防御行動にスイッチしたんニャ】
『ソレって凄くない!? って、他の皆も出来るの?』
【無理ニャ…… 僕は桃様の分身体、限りなく桃様の心や能力をトレースした存在ニャ♪ アカ、アオ、クロもスイッチ出来る可能性はゼロじゃ無いかも知れニャいけど、動きは僕の比じゃ無いと思うニャ…… ソレに桃様の許可が有れば、緊急回避システムに移行しニャくても出てこれると思うニャよ♪】
『そっか…… なるほどね…… って、ん!?』
【どうしたニャ?】
『ソレって…… もしかして……』
【何ニャ? って…… 桃様の心が届いたニャ♪ 《その通り》だと推測出来るニャね!】
『だよね!? 試したいね、今後の為にも!』
【賛成ニャ♪】
『うんうん! あ、でも待って! 折角エリカも居るんだから、サイカよりも強いエリカの実力を見たいし、参考にもしたい♪』
【了解ニャ!】
私の意識を現実に戻す
ソコには修練場が広がる
そして、私はエリカに顔を向けて言った
「エリカ、頼みが有るんだけど……」
そう問い掛けた先に居るエリカは、
「無理ダァァァァ!! 好きとか嫌いとかぁぁぁ言い伝える勇気は無いぃぃぃぃ!!」
いまだに葛藤し、悶えていた
「ゴメンゴメン! 解ったから! 大丈夫、エリカの気持ちは充分解った♪ 今後ともヨロシクね!」
顔を赤らめたまま、ピタリと止まるエリカは私を見る
「ホントに……?」
「うんうん♪ 私は貴方が好き! エリカの気持ちも充分解った! 言葉にし無くても凄く伝わったよ♪」
「言わなくても…… 良い?」
「うんうん♪ てか、汐らしく成りすぎでしょ……」
「汐らしくなど成ってない!! 愚弄するな!」
「解った解った! ソレも撤回する! 初めて会った時と変わらないじゃん……」
「また愚弄したな!?」
「してない、してない! 先ず落ち着いて! 頼みたい事があるから」
「クッ…… まぁ良い…… 頼みたい事とは何だ?」
私はコクリと頷き言った
「エリカの強さと戦い方を見せて欲しいの♪ 今後の為にも参考にしたいのよ」
「ふむ…… まぁ、私は構わないが……」
そう言ったエリカは、サイカに目を向けた
そのサイカはエリカに向けて笑顔を見せている
「私は構わなくってよ♪ エリカさえ良ければ、私の実力も測れるというものですし」
「だそうだ…… 桃花、少し修練場を広く取りたいから隅に寄っててくれない?」
「解った!」
私はエリカとサイカにお辞儀をした後、小走りで広い修練場の隅っこへ移動した
サイカが私に言ったんだ、エリカは強いと……
私に敗北と、死を抱かせた彼女が勝てないと言った
見たい、エリカの実力が……
エリカの力が、今後の私を強くする
そう思えてならなかった
「さて、サイカ…… お前とヤるのも久しぶりだな」
「エリカとどの程度、差が縮まったのか試せる又とない機会…… ゾクゾクしますわ♪」
「ホント変わらないね、バトル・マニアっぷりは……」
「何とでも♪ 戦いこそ私の全てですから」
「解った解った……」
「エリカ! 2度言いはダラシナイよ!」
すかさず私が茶々を入れる
「ウルサイ、桃花! お前の望みなんだぞ!?」
「はぁぁぁい……」
「間延びさせるな!」
「す、スミマセンでした……」
緊張を解そうとしたダケなのに、私が怒られてしまった……




