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ルビーアイ princess momoka  作者: アゲハ
2章 カタストロフィ
44/308

44話 遭遇

宮殿通路を歩く私


スタスタと鳴る足元と、背後から鳴るゾロゾロスタスタという音


何だか落ち着かない




そして私はいい加減振り向き言った




「あの…… 医療ドラマの総回診ですか、コレ……」



「ドラマ? ドラマって何?」



「いえ…… 言ってみただけ……」



「そう?」




そう答えたのはユユコ


そして彼女の背後には9名の侍女達が連なる




「すぐ後ろを付いてこられると…… 落ち着かないっていうか……」



「それはお気になさらず♪」



「いや、フツーに気になるでしょ……」



「だってしょうが無いじゃん…… 私達は上からの命令で貴方を追ってたのよ? まぁ、今は危害を加えるつもりも無いけどさ」



「あ、ありがとう……」



「うん、でもさぁ…… 私達が付いてないと、桃花を知らない他の侍女達から斬られるよ、マジで」



「マジですか……」



「マジマジ♪ マジモンのマジだよ」



「マジ怖いね、ソレ……」



「うん、私らじゃマジで助けられないレベルの人と会ったらマジヤバいよ」



「こら、ユユコ! マジマジマジマジなに楽しんでんのよ!?」




突如、横槍を入れてきたのは背後の侍女達だ




「懐いてる場合じゃ無いでしょうが!」



「えーー! でも…… この桃花って子、妙にウマが合うってゆーか…… 話し易いんだよねぇ」



「ソレは理解もしてあげられるけど…… 元、(ぞく)だよ?」





元、暴走族みたいな言い回しは止めて欲しい





「まぁ、良いじゃん♪ 上様に会うまで位だし楽しく行こーよ!」



「アンタねぇ…… ハァ…… もう良いわ……」




後ろの侍女達は肩を落としていた


中々に譲らない性格を持っている様子のユユコ


もう、諦めた方が早いと踏んだのだろう


上下関係というか、仲間内でのマウンティングというか……


憎めない子なんだろうな、この子は……





まぁ、そんな諦めと呆れを背後からヒシヒシと感じながら、私はユユコとおしゃべりして歩く


この世界に来て、初めてゆっくりとした時間を感じながら通路を進んでいた、そんな時だった




ズダダダダ……




遠くから何かの音が聞こえた




「今マシンガンの様な音が聞こえなかった?」



「マシンガンって何?」



「連射の機関銃だよ」



「何ソレ?」



「んーー…… この世界には無いんだったら説明のしようが無いけど…… 何かズダダダダって?」



「ああ♪ アレは()()だよ!」



「足音?」



「うん、もうすぐ来るかも?」



「何が?」



「あ! ホラ♪」




ユユコは笑顔で通路の先に指差す


促された私も、その方向へ目を向けた




長い通路の先


ソコから煙を巻き上げ何かが来る!?



段々近寄るソレを目視すると、()()だという事が認識出来た


もう直ぐ私達の元って頃



走り寄る彼女の表情が固まった



直後、その通路を私達に向けて大きく()()()()()()()()()




うお! ダイブした!?




美しく放物線を描く彼女


だが、表情は、やはり固い




ってゆーか……




私に吹っ飛び墜ちてくる!?




ズッダァァァァァン!!




驚いていた私は避ける間もなく潰された……




「痛てててて……」




仰向けに倒れた私は後頭部と背中を強く打ち付ける


確かに痛かったが、思いの外、痛みが少なかったのはシロとクロが瞬時に背後を守ってくれたからかも知れない




そして目を開くと、ダイブした彼女が馬乗りになり、その後、




「助かったぁ♪」




と、言った




倒れた姿のまま、私は彼女を見上げる


そしてそのまま更に上、歩いてきた通路側に目を向けると、ユユコと侍女達が居無い


あれ? と思いながら、顔を捻って更に通路の先に視線を移すと、10数歩下がった位置に彼女達は居た




「ユユコと皆…… 何でそんなに遠くへ……?」



「だって、潰されたくないでしょ?」



「おい…… 潰されるの解ってて私を置き去り!?」



「だって…… 言う暇無かったじゃん」



「そりゃそうだろうけど……」



「私達はいつもの事だから慣れてるし♪」



「じゃあ足音の時点で教えてよ!」



「そりゃそーだね♪ あはは!」



「こらこら……」




私は通路に倒れたまま呆れ顔を見せる


そして、私に馬乗りを続けている彼女へと声を掛けた




「あの……」



「ん?」




何事かと疑問を向ける彼女


その表情はキョトンとしている




「あの…… 体から降りて貰えますか? 立ちたいので……」



「てか、どちら様や?」



「えっと…… 私は桃花っていいます」



「ふーーーん? んで、何でココに()るん?」



「まぁ、ちょっと色々ありまして……」



「そなんや? でも、知らない人とか宮殿()ったら危ないやんね?」



「ええ、既に危ない目には何度か会いましたし…… 今も普通なら死にかけた様な…… ま、まぁ、とりあえず体から降りて貰えると助かるんですけど」



「あ! ユユちゃや♪」



「は、話しを聞いてよ……」




会話の一方通行に少々苛立(いらだ)ちを感じるが、私は宮殿部外者の為にソレは抑えた


そんな私と彼女の会話を何気なしに聞いていたユユコ達が、馬乗り女性に頭を下げる




「《ニコ》様、ご機嫌麗しく♪」



「うんうん、麗しーよ♪」



「ソレは良かったです♪ てゆーか、また何も無いところでコケましたね…… 無闇矢鱈に走らない方が良いですって、前にお伝えしたじゃないですかぁ…… ま、良いや…… で、さっき走られていたのはどうしたのです?」



「《ノアさ》に会いに行こー思てん♪ どこか知らん?」



「さあ……? でも、私達もノア様のお部屋に向かってたのですけど…… お部屋には御在室では無かったのです?」



「あ! まだ部屋、見に行って無かった!」




おい……


ソレで誰を探そうというのだ……




「と、とりあえずニコ様…… ノア様のお部屋を見に行かれては宜しいかと…… 下で潰れてる客人も苦しそうですし」



「あや!? 誰や、この人!?」



「だから…… 私は桃花ですってば…… お願いだから降りて……」



「でな、ユユちゃ」



「降りてぇぇぇぇ!!」



「ひゃゃゃあぁぁ!?」




私の上から驚いた顔で飛び跳ねるニコという女性




「大きな声出さんでや…… メッチャ驚くやん!」



「降りてくれて、ありがとうございます!!」




今更になって降りてくれた彼女へ少し声を荒げた私は立ち上がり、ユユコへと顔を向ける


そんな彼女達は引き攣った表情を私に返しながらニコへと言った




「ま、まぁ…… ニコ様、ノア様のお部屋に向かわれては?」



「せやね♪」




笑顔でそう言った彼女はブンブンと両腕を廻す




「ほな、行ってきまーす!」




そして、いきなりダッシュした!




「ニコ様! ノア様のお部屋はソッチじゃ無いですよ!?」



「あや!? じゃ、ドコ!?」




キキキとブレーキ音を足元から鳴らして立ち止まるニコ




「もう過ぎてますよぉ…… 来た道戻った方が早いです……」



「あ! アッチやんね♪ んじゃね、ユユちゃ!」




コロコロと表情を変えながらニコは言う


そして、私達の目の前を風のように走り去った




「な、何…… あの人……」



「ニコ様だよ」



「ニコ様?」



「うん、天然な人なの……」



「天然って…… 《様付け》する位だから上司なんでしょ?」



「そだよ」



「そだよ、って……」



「まぁ、でもソレが彼女の愛されキャラだから♪」



「そーゆーもん?」



「そーゆーもん、そーゆーもん♪ さ、行こう!」




そう言ったユユコはニコリと笑って移動を促した


私も頷き歩き出す




そして、また……




足を止めた




前方から誰かがまた来たからだった




「あ! サイカお姉様♪」




黄色い声を上げたユユコと侍女達が、私そっちのけでサイカと呼ばれた女性に走り寄る



白い縁の丸メガネを掛け、雰囲気的にはオットリした感じ


優しい人という印象を受ける


表情もさることながら、掛けている丸レンズのメガネが更に柔らかな表情を際立たせた


実際、優しいのだろう


侍女達から慕われている時点で間違いない


そんな女性の第一声




「あらら♪ 皆様お揃いでどうなさったの? お仕事は?」




口調も柔らかな雰囲気と変わらないものだった




「今は客人の…… 護衛? ですかね」



「お客人?」




サイカは私に目を向ける


そして足元から顔までを見上げた




「あ、あの…… 桃花といいます…… 初めまして」



「桃花さんね♪ ごきげんよう」




お辞儀をする私にサイカは優しく笑った



てゆーか、『ごきげんよう』って……


お嬢様か!?


まぁ、顔立ちや最初の口調からしてもあまり違和感は無い


さっきのニコよりもよっぽど天然に見えるオットリさだ



だが……


突如、彼女は妙な言葉を口にした




「貴方…… 面白い力を持ってらっしゃるわね♪」


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