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ルビーアイ princess momoka  作者: アゲハ
2章 カタストロフィ
34/308

34話 エリカ

突然現れた私を見て、女性はギャンギャン(わめ)きながら加勢を呼んでいる



え!?


ちょっと待って……


私は怪しい者じゃないし!




「と、とりあえず落ち着こう? 私はただココがドコか聞きたかっただけなの」


「だ、黙れ狼藉者(ろうぜきもの)! 叩き切ってやる!!」




怒りと焦りを全面に出した顔で彼女は身構えた


少し腰を低くし、ダラリと力を抜いたような両腕




「だから待って…… 落ち着いて…… ほら、両手上げるから!」




そう言いバンザイの姿を彼女に見せる私


だが、彼女の焦りは沈静化した様子は無い




「そんな真似事で騙されるものか!」


「じゃあどうしろって言うのよ……」


「服を全て脱げ! 武器を隠し持ってるでしょ!?」




おいおい……


また全裸希望か……




でも穏便に済ませたい私は考えた末、信頼回復の為にも服を脱ぐ選択を選んだ


変態先生と違い、相手は女性だ



同性だし問題は無いと思う



何よりこの場所がもしも宮殿なら大事(おおごと)にするのは私の望むところでは無い




「解ったよ…… 脱ぎます脱ぎます…… 待ってね」




私はバンザイしていた姿から手を下ろし、ブラウスのボタンに手を掛けようとした




「動くな曲者(くせもの)め!!」


「はぁ!? じゃあどうやって服脱げって言うのよ!?」


「手を上げたまま脱げ!」


「無理だよ! そんなに器用な事出来ないもん!!」


「こんのぉぉ…… ああ言えばこう言う…… 小癪(こしゃく)(やから)が!!」


「それはソッチでしょ!? 私は敵じゃ無いし、いきなりココに飛ばされたんだんだもん!」


「適当な事を言って煙に巻くつもりか!? いきなり飛ばされたというのも不可解ではないか!」


「本当だよ! 加藤さんが私の為に創ってくれた《移身(いしん)のシード》で来たんだよ!」


「加藤だと? 知らぬ! 誰だソレは!?」


「えっと……」




ラチが開かないなぁ……


何て言えば納得するのかな……?


神様が加藤さんであることは間違いないと思う


でも、加藤さんという名前を知らないって事かな?


となると……




「あ! ムーン様って人だよ♪」


「貴様…… 正体を現したな…… ムーン様の命が目的か!!」


「話を聞けぇぇぇぇ!!」




何なんだ!


一難去ってまた一難とはこの事じゃん……


ドムフェスでの騒動から変態先生の件


そして今度はコレか……





穏便に済ませたい私と、とにかく私を取り押さえたい彼女


完全に向いている考えは交差しない




「狼藉者は私が排除します!」


「話を聞く気は無いわけね…… どうしてこの世界の人は話を聞いてくれないのかなぁ…… ハァ……」


「今、私を愚弄(ぐろう)したな!? 許さん…… 素直に答えて立ち去れば多少の便宜はしてやったものの…… 当初の予定通り叩き切る! 貴様に最期を()げる者の名は《エリカ》だ! お前も名乗れ! 覚えておいてやる」


「私は桃花だけど…… まずは危害とか危ない真似はよして話し合おうよぉ……」


「命乞いは聞かん!」


「いや、貴方は最初から何も聞いてくれてないけどね……」


「また愚弄しおって…… 私が宮殿をお(まも)りする! ノア様直轄シークレット・フォース、ホワイツ部隊長エリカ…… いざ尋常に!」




やっぱりココは宮殿なんだ♪




とか考えている場合じゃ無い




腰を少し低く屈め、ダラリと下げたエリカの両腕


その袖が()()()()()()()()





何か在る


武器か?





ソレは即座に肯定された


膨らんだ両袖からストンと両掌に収まる何か……


その物体を、彼女は屈んだ体勢を少し起こして構えた



キラリと光る《2本の直剣》



刀の様な雰囲気だが、一般的な長物刀よりは短く、脇差し刀よりは長い


刀ならではの反りと柄先に鍔が無い《小太刀》の様な長さの《両刃直剣》だった




柄の尻からは紐が袖の中に伸び、その紐の先は袖に隠れて見えない




そして妙なのは彼女の直剣もまた、レイジの大剣インフェルノやミヤの直刀《兼光》同様に《純白の刀身》だ




もしかしてあの剣も()()()()のかな?




そんな思いで直剣を眺めると、エリカは表情を歪ませ言った




「イヤラシい目を《ジェミニ》に向けるな! 私の相棒だぞ!」


「いや、そんなつもりは全く有りませんが……」


「今度は言い訳か!? 恥を知れ!」


「あの…… 人の話を聞くのと、怒りっぽい性格と、勝手な思い込みとか直した方が良いと思うよ……」


「この…… 愚弄ばかりして……」


「もう! 顔は可愛いのに勿体ないなぁ」


「な!? こ、コイツ…… つ、次から次へと…… た…… たらし込めるつもりだろうが、そうはいかないぞ!」




気丈に振る舞っては居る物の、少し顔が赤い


ちょっと照れちゃったかな?




「もう許さない…… 構えよ! 構えないならコッチから行くぞ!」




突如変化した彼女の瞳は《白眼》


一気に振りかぶった右手


掲げた直剣を私に投げた


速い!



【桃様、筋力アップしたニャ!】


『ありがと!』



直剣に目を向け私は(かわ)


そして彼女に視線を移した


が、目の前にエリカが居る!?


振り上げる彼女の左手


ヒュンと風斬る直剣


プチンという音と共に体を引いて避ける


そのまま背後に大きく跳び下がりズザザと芝生(しばふ)に足を取られながら構えた




冷や汗が出る


久しぶりの緊張感




()()()と鳴った足元




視線を向けると、ソコにはブラウス首元のボタンが1個、芝生の上に乗っていた




危なかった……




この子、本気で首を斬りに来た……




「へぇ…… 私の《飛連刀(ひれんとう)》を躱すなんてやっぱアンタは只者じゃ無いね…… 絶対排除し無ければムーン様を護れないなら…… やはり死んで貰うしか無い」


「今、殺すこと決めた様に言ってるけどさ…… さっきので常人なら普通に死んでますけど……」


「いちいちウルサい!」


「あー、はいはい…… 解りました解りました! 私もちゃんと戦います!」


「《はい》は1回! 《解りました》も1回! 2回続けて言うな! だらしない女め……」


「アンタは私の母親か!」



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