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ルビーアイ princess momoka  作者: アゲハ
2章 カタストロフィ
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32話 移身のシード

「そういえば桃花、君は何か用事があってココに来たんじゃないのかい?」




そう言ったのはレイジだ




「あ、そうだった! すっかり忘れてたよ♪」



「おいおい…… 集落入り口で倒れた時に頭でも打った訳じゃ無いよねぇ……」



「違う違う! って、元々はその事でレイジさんに御礼を言いに来たの♪ その節はありがとうございます!」




私はレイジに深く頭を下げるが、彼はNoと手を振り、私の体を起こした




「それなら気にしなくて良いよ♪ むしろ俺が君にありがとうと言わせて欲しい」



「なんで?」



「君には本当に感謝しているんだ♪ 俺に足りなかった厳しさを教えてくれたし、それによりミヤもまた成長出来たからね…… 俺はミヤを甘やかし過ぎたようだ」



「うん、甘やかし過ぎだね♪」



「ハッキリ言うねぇ…… ハハハ……」



「でもね、そういうのってチャンスが無いとダメだからさ…… ミヤにとっても丁度良いタイミングだったのかも?」



「そうか…… うん、そうだね♪」




私達は笑顔を交わしてミヤに目を向ける


彼は苦笑いを浮かべていた




「でも、レイジさん…… もっと()()()()()()に連れてって貰えると良かったなぁってだけは言いたくなるよね……」



「エイユウ先生の所かい? 何かマズかったか?」



「マズいってもんじゃ無いでしょ…… ただの変態で女好きだよ、あの人」



「え!? あ…… ああ…… だから女性専門で()るわけか…… それは申し訳ない事をしたね……」




レイジの表情から読み解くと、本当に知らなかったようだ


まぁ、知ってて連れて行ったのなら彼も軽蔑に値するが、そんな雰囲気は微塵も感じられない




「良いよ良いよ♪ 何も無かった訳だしね!」



「そう言ってくれると助かるよ…… 俺からも後でキツく伝えておくからね」




そう呟くレイジはミヤと同じ苦笑いを浮かべて居たが、しばらくしてその表情を整え言った




「さて、修練は一旦休憩にするから何か御礼と謝罪に食事でも準備しようと思うんだけど…… 桃花に苦手な食材はあるかい?」



「あ、大丈夫だよ! お礼頂く程の事なんてしてないし♪」




有難い申し出ではあったがさっきカレーを食べたばかりだし、何より私は宮殿に向かう使命があるため丁重に断る


正直言えばドムフェスから逃走し、逃げがてらにユエさんと出会わなければオレンジ・ホームというこの集落を訪れる理由は無かった




「ふむ、それは残念だよ…… で、この集落へは用事があったのかい?」



「んーん! たまたま知り合いと会ってさ…… それで…… まぁ、付き合いみたいな感じで来たんだ♪ 知り合いは帰っちゃったけど」



「付き合わせた知り合いが先に帰ったのか? ヒドいなそりゃ……」



「彼女も忙しいのよ…… 多分ね」




コレは嘘だ


ユエは…… 内容を噛み砕いてしまえば、『自分はこの集落に入るべきでは無い』


そんな意味合いで私に語り掛けた後に去った



どんな思慮があってその言葉を残したのかは解らないが、彼女は彼女なりの考えが有って私の元から…… 背後から消えたのだ




「そっか、君は器が大きいな♪ じゃあ謝罪も込めた御礼をさせて貰えない理由は別に有るのかい? 時間が無いとか?」



「ま、そんなとこ♪ 私さ…… 少し急ぎめで宮殿行かなきゃならないっぽいの」



「どうして?」



「さぁ…… そう言われたから? かな」



「誰に?」



「曾じ…… じゃ無くて…… 門番さん達から」




誰かと聞かれ、私は答えただけだ


特別可笑(おか)しな事は言ってないと思う




だが、レイジの表情は固まっていた




「レイジさん?」




私が話し掛けると彼はハッと表情を戻す




「も、門番様達からか…… ノア様から浅くは聞いていたが…… そうか、君が…… 《あの》桃花なのか」



「あの、かは解らないけど桃花だよ」



「そっか…… その日が近付いているんだな……」



「その日?」



「我々、天人(アマツビト)の戦いさ」




アマツビト……


それも泉ばあちゃんの日記に書いてあった


この《世界の民》の事




そしてさっきの言葉は、このレイジという男性が《ノア》、つまり先代の神様と()()()()()()()()()()()にいるという事を意味している


状況から考えれば、彼に隠し事は不要と思えた




「レイジさんは色々と知ってるみたいね…… そう、私はこのカタストロフィの人間じゃ無い…… 地球っていう星から召喚されたっぽいの」



「されたっぽい?」



「うん、自分の意志で来たわけじゃないし、誰から召喚されたかも解らないから…… でも後悔は無いよ? 私の曾ばあちゃん達から受け継いだ宿命だからね」



「そうか…… この世界を頼むよ…… 俺も全力でバックアップするから」



「ありがとう、レイジさん♪」




彼はニコリと笑い掛ける


その笑顔に私はとても癒された




そして彼は何かに気付いた様子で衣服に手を入れ、何かを取り出し私の掌に乗せる


目を向ける手には小粒の石に似た物が在った




「コレは何?」



「移身のシード」



「イシンのシード? 種って事?」



「そうらしい」



「らしい?」



「俺も預かった物だからね」



「誰から?」



「ムーン様だよ♪ その日が来れば多分、宮殿来訪よりも先にこの集落へ《モモカ》が来ると言っててね…… 昔、俺が預かったのさ♪ ルビーのゲートとやらの力を危険の無い移動のみの作用だけ抽出した種らしいが…… 君なら言っている事が解ると話していた」




ムーン様……


それは私の曾ばあちゃん達の母親、その友達である加藤さんの前世の名だ




そしてとても有難い事だと痛感する




私の行動を先読みし、この世界を巡り歩き易いように細部まで配慮してくれている


魂字(こんじ)》も、《魂語(こんご)》も、《お金》も…… そして《(シード)》という道標(みちしるべ)までもだ





そして同時に少し…… 怖かった





ユェインズ同様、私が識らない彼等は、私の事を識っているという事実


多分、加藤さんにとっては()()()()を識っている


魂字や魂語、お金の件は《いずれ私が来る時の為》で説明がつく




だが、《移身のシード》だけは別格だ




私がこの集落にどういう経緯で訪れるかまでもを識っていなければ《準備》の説明がつかない


レイジさんが言っていた《宮殿来訪よりも先に私が集落へ来る》というのは、《私の今までと、これから》そして《全世界、星々の行く末》を識っている者と位置付けなければ理由に成らないということだ




コレが…… 神か……




恐ろしくも有り、怖ろしい以上の…… (おそ)




そんな人と肩を並べて戦えるとは……




緊張もするし、自分の未熟さを感じもする




だが、それと共に光栄とさえ思った


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