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ルビーアイ princess momoka  作者: アゲハ
1章 始まりは後悔
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3話 感情と罪

私は公園から家までの帰路につく



数メートル毎に(とも)る街灯に照らされては暗闇に入る



そしてまた照明にこの身を映す



その繰り返し



ヒタヒタと舗装された道を歩いた



後は食事とお風呂を済ませる家までの帰路



急いでは居無い



そんなつもりは無く、足取りは遅めだった






ヒタリと1歩を踏み出し、ポタリと音が鳴る



また1歩



ポタリと一滴



私の瞳から頬に、そして(あご)に掛けて流れる雫がまた1つ、落ちた






平常心だ



私はいつもと変わらない



でも流れるソレを実感した時、私は足を止めた



腕をゆっくりと上げ、袖を頬にあてる



拭い、染み込む涙






何で泣いてるの、私?






後悔はしていない






私は彼女から逃げなかった






でも……






泉ばあちゃん……






私、ヤッちゃったのかな






1番ダメなこと、しちゃったのかな……






ひなこ、ゴメンね……



私、貴方とずっと一緒に居たかった



ホントだよ?



でも、もう無理かもね……






そう思った時、堰が切れた私の心は溢れんばかりの涙を瞳から生んだ






へたり込み、顔を腕にうずめる



立っては居られない



何やってんだ、私は




「うううぅぅぅ……」




私の口から言葉がもれる



コレは、感情だ



泣けない



泣かない



私が決めた事なのに、泣くわけにはいかない




「うううぅぅぅ……」




呻き声がまた口をつく






私、間違ったのかな……


私は正しい事をしたと思っている


じゃあ何故、私が涙を流しているの?


私は後悔してないはずだ


私は泉ばあちゃんと咲子ばあちゃんから力を受け継いだ


私は2人から《覚悟》を受け継いだ


私は来るべき時に、世界を救わなければならない


だから私は、こんな事でクヨクヨしてられない




でも、私は……





だけど、私は……






私は、私は、私は……






巡る感情


巡る…… コレは…… 後悔……?




ふざけるな




私は後悔などしていない




するわけが、無い




私の覚悟を舐めるな






それでも道路にうずくまり、私は立ち上がることが出来なかった






その時だ





今まで気付かなかった《隣に誰かが居る》気配



驚く事は無かった



どうでも良い、そんな事



ただ、動こうとしないソレは私に用が有ることを示していた




「何か用? 邪魔なんだけど」




うずくまり、顔を伏せたまま私は告げる


腕に、袖に阻まれた口


私の問い掛けが籠もって聞こえなかったのだろうか


その気配は動こうとしない




私は少し腕と口に隙間をあけ、再度言った




「今さ…… 少し感情グチャッてるから…… ココから消えないと…… 殺すよ?」




怒気を混ぜた言葉


それでもまだ、動こうとはしない





独りにしろと言っているのに……




いい加減、顔を上げようとした時だった




「大丈夫か……? 桃花」




突如語り掛けた優しい声



私は顔を伏せたまま、目を見開いた




()()()()()…… 何でココに……」




その声の主は《樹》だった




「今日は道場で修練の日だろ? それにしても遅すぎだったからな」




彼はそう言った


顔を伏せていても解る優しい声




「うん、ちょっと……」



「そっか」




静かに一言だけ口にし、彼は私に背中を向ける




「さ! 帰ろうぜ」



「うん……」




私は彼の背中を見ながら家に向けて歩く



会話も無く、足を進めた



彼は私に振り返ることは無かった



何も聞かない



でも、何かを感じてくれている



私の姿を見て、色々と感じてくれたのだろう



3年前、泉ばあちゃんが残してくれた日記、そのコピーとブレスレット



そして、イッちゃんの為に残された1冊の本



泉ばあちゃんが持っていた神の眼、ラピス・ラズリの全てが記された本



ソレを渡した時、彼は泣いた



泉ばあちゃんの心を受け取り、受け継ぎ…… 泣いた



その時には、私が彼の顔を見ないように配慮した事を思い出す



今は彼と全く逆の立場だ



これ程までに有難い事だったとは……






スタスタと足元から鳴るメロディー



目の前にはイッちゃんの背中



こんなに大きな背中だったかな?






同じ頃に生まれ、でも、私の方が先に力を与えられた



神様から元々泉ばあちゃんと咲子ばあちゃんのものだった力を返却され、その後は2人でよく山に行った



能力眼を使い熟すための修練だ



私の方が早く馴染んだにも関わらず、彼は…… 彼の力は多分、私を追い抜いた



だからだろうか



いつの頃からか私が家族として愛していた彼は、私の憧れとなり、やがて好きという感情に変わった




本当に彼には救われている




こんな大きな背中を持つ彼に、その優しさに救われている




それがとても実感出来る






ある山での修練の日、私は力を暴発させた






2人の思い出の特訓場が跡形も無く消し飛んだ





私は、私の力を過信していた





ソレを止めたのもイッちゃんだ





その日のことは忘れない





私はソレから、罪を背負った





でも、負い目は無い




彼は当時傷付いた体を見せたが、私は感謝と謝罪こそすれ、後悔はしなかった


その時、もう既に彼は私の力を超えていた


だから追い付きたくて修練した結果が暴発


私の中に、その日から罪の力が目覚めた






イッちゃんの力はラピス・ラズリ


神の眼だ


私が持つ眼はニア・ラピス


そして左眼だけがソレに混ざった覚醒ルビーアイ


紫に紅を足したワインレッドの瞳





神の眼は何でも創れる


星や生物などの莫大な情報量を必要とし無いものなら多分、何でもだ


そして、破壊の力を宿す





私も似たレベルではある


《ニア》とは《近い》と云う意味


ラピスオリジナルとまではいかないが、ソレを補っているのが覚醒ルビーアイ



破壊の力



元々ラピスとしてあった破壊に更なる破壊を加えた力




私は、私の左眼をギルティ・アイ(罪の眼)と呼んだ

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