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ルビーアイ princess momoka  作者: アゲハ
2章 カタストロフィ
22/308

22話 諦めない

「ね♪ ブレザー取りに行く程度なら一瞬で済む…… でもさ、こんなんじゃツマラナイでしょ? だから貴方の弱い心をブレイクしようと必死なわけよ、私は♪」



「そっか…… やっぱりお前は女神だよ…… 俺も少し…… 強くなれた気がする」



「それは嬉しいね! さてと…… うん、再開しよう♪ しっかり狙って刺してよ、私の顔をね! 痛みとかホント好きじゃ無いから、貴方も私を一瞬で終わらせて♪」



「良いだろう…… 桃花っていったか? その後に俺も逝くから待っててくれよな……」




そう言い、彼は左手に持つナイフを私に向けた


それと共に前に出る左足


左手、左足が前に出る《正体の構え》


先程までの彼の構えとは逆で、私と()()()()





コレはとても都合が良い





だが、私はあくまでも自然な表情(ポーカーフェイス)を貫いた





ジリジリと近寄る彼


私もそれに合わせて近寄る


一瞬で跳び込み、ケリを付ける事は簡単だが、私は彼の為にも決闘(バトル)を選んだ





あと少し前に……





もう少しで彼の一足跳びで届く領域(テリトリー)、《間合い》に入る





私はゆっくりと足を擦らせて前に出た





そして……





彼の間合いに入った瞬間だった


一気に伸びる彼のナイフ


軽く硬直した私の体


だが即座に取り戻した冷静




来る、ナイフが……




鋭敏に研ぎすまれた私の感覚が突き込まれたナイフよりも、彼の目を捉えた





ゆっくりとした時間が流れる





アドレナリンの分泌を直に感じた





私は実に冷静だった





私が()()()()()()()()()へ、彼は完全に掛かったんだ


()()()()()()()()()()()彼のミス





私が最後に告げた言葉


苦しまない様に《顔を刺して》




ソレは顔を狙わせる為だけじゃ無い


《裂く》のでは無く《刺す》事を促し、彼の目はまさしくソレを選択していた


横薙ぎの方が厄介なナイフだが、刺すのはリーチのある拳で突くのと同じ






だから、私の放った言葉はコレだった





「終わりだよ!」





真っ直ぐ私の顔に進むナイフの切っ先


ソレに臆する事無く突っ込んだ


前に出した私の左拳は掌へと広げ、彼のナイフの真横を過ぎる


軽く擦らせた彼の袖をそのままスライドさせて私は更に前へ……


そして大きく歩幅を取ったまま態勢を落とし、彼の懐に入ると同時に放った




強靭な足から生まれる力


一気に捻り上げた腰


そこから上半身に捻りを移動し、肩へ、腕へ……




そして私の意志を形と塊にした、右拳へ





ズボギュ……


重く鈍い音が周囲に響く





「ゲブァッッ!!」



「コレがカウンターってんだ! 憶えとけコノヤロー!!」




彼は大きく広げた口から唾液を飛び散らせ、懐に入る私を遙かに飛び越し霧散する


思いっきり腹部をえぐる様にめり込ませた私の右拳へ、もたれ掛かる様に彼はゆっくりと膝から墜ちた






地に伏せる男


目の前には構えて立つ私





動きの無い彼をじっくり確認した後、数歩下がって私は構えを解いた





そしてフゥと一息ついた時の事




『『うおぉぉぉ!! 嬢ちゃんスゲぇぜぇぇぇ!!』』




周囲の人だかりが一斉に拍手と歓声を上げた


そんな人達から一気に取り囲まれ、空手道を教えてくれとか、ファンになったとか……


もう、アレやコレやのてんてこ舞い……




空手ショーをやった訳では無かったのだが、私を取り巻く彼等、彼女等には刺激があったようだった




埋め尽くす人、人、人




そんな彼等の肩口から、人だかりに参加し無い一人の女性が目に入る




ムゥだった




()()()()()()()()()の様な状態から数メートル離れたその場所で彼女はとても嬉しそうに私を見詰める


そんな彼女に私も微笑み返した




だが、彼女の顔は直後、固まった




そして何かを察した先に私も顔を向ける




ソコには、まともに中段突きが入ったはずの彼が体を起こして居る瞬間を人だかりの肩口から僅かに捉えた




マズい……!




今のカウンターは今までより遙かに本気の一撃だったハズなのに!?


チィ!


思いの外、フィジカルの高い男だ!




私は取り囲まれて身動きが取れない


私の目の前の人達は、奴に背を向けて気付いて居無い!




「ママーー!! どこーー!?」




突如、人だかりの右奥から聞こえた子供の声にドキリとし、背中に汗が流れる




「ランカ! こっちよ♪」




私の左隣に居た女性が反応した


彼女が母親か!?


呼んじゃダメだ!!


私は頭をガードしながら一気にしゃがみ込む




人だかり、その足の隙間から見えた少女




ココは危ない!


守んなきゃ!




即座に立ち上がり、掻き分ける群衆


移動しても新たに構成され思うように進めないが、それでも少女に向けて突き進んだ




「終わらねぇ! 俺の最後に付き合ってくれよぉ!」




叫んだナイフ男に周囲の歓声が途絶える


そして彼の目には私の居る人だかりよりも少女が映って居た




振り上げた男のナイフ


一歩進むが膝を着く


でもソノ目には狂気が迸る





ヤる……


動けなくても、奴はヤる!


振り上げたままの手……





()()()つもりか!!







「ヤメテェェェ!!」




母親の声が響く


私は人を掻き分け無理矢理進んだ




『シロ! ギア全開まで筋力上げて!!』



【ソレだと周囲の人達まで弾き飛ばすニャ!】



『とっととやれ! 大人と子供のフィジカル天秤掛けんな! 緊急時よ! 速く!!』



【り…… 了解ニャ!!】




振り下ろされたナイフが少女目掛けて飛んだ


私は一気に周囲を蹴散らし走った





少女に飛び向かうナイフ


私は手を向ける


あと少し


柄に触れる瞬間、広げた手を閉じる


ソレなのに……


私の手には捕まるまいと逃げるかの様にすり抜け……




無情にもナイフは少女へ向かって行った




でも諦めない!




『クロ! ラピスの盾で女の子を!』



【間に合わないニャ!】




クロの代わりにシロが叫ぶ




何て事なの!?




態勢を整えてる時間は無い




でも……




跳び進むナイフに崩し過ぎた態勢で追い付く技は持って無い!!




そんな……




私が……




私が甘かったからなの?




彼も救いたいなんて……




救えるはずだなんて……




夢だったのかな……




いや!!




何諦めてんだバカ私!!




それでも手を伸ばせ!!




だが…… 届かない!




少女へ…… もう……







その時ヒュッと()()()()()


いや、風というよりも……




《桃色の稲妻》が走った感覚だ




私と少女の間を飛び抜けたソレは、少女へ到達する前に()()()()()()()()()私の手の中に収め預けた瞬間、声を発した




「貴方の優しさ…… 凄く感じましたよ、プリンセス♪」



「え!?」




稲妻が声を!?


ヒュッとまた目の前を横切る風


私の感覚がソレを遅ればせながら追う





向いた先





ソコには人だかりから外れたムゥが後ろ姿で立って居た


私は彼女を見たまま、急ブレーキを掛けた足を滑らせる


そんな私にクルリと向き直り、ムゥは両手の指先を前にソッと組んだ姿で深くお辞儀を見せたが、直ぐに顔を上げ微笑んだ




朗らかな表情を見せる彼女


だが、私はソノの顔に違和感を感じた




彼女の……




ムゥの眼は……




一瞬、見た事も無い《桃色の瞳》に輝いて居たのだから

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