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ルビーアイ princess momoka  作者: アゲハ
2章 カタストロフィ
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14話 サンドバギーに揺られ

門番である2人、アーサー祖父ちゃんとラインフェルト祖父ちゃんが譲ってくれたサンドバギー



全く手が掛からず、オート走行が続く



それなりに時間は掛かったものの、一気に砂漠を抜け、そして向きを北に変えて大河に入水した



車のまま大河にザブンと入った時には焦りもしたが、それもまた言っていた通りに浮き進む



実に快適なドライブといえた



更に進んでは大きく西に向きを変え、スピードを落とさず走り続ける



時折、集落なのか町なのか……



そんな建物の集まりを横目に捉えた




「数時間は走ったハズなのに、まだ宮殿見えないね?」



【意外と広い世界だッピ♪】



「なんかさ…… 少しお腹空かない?」



【そうッシャな…… 今なら地球の朝位かもしれんッシャ】



「それでか……」



(ニャに)か食べるかニャ?】



「んーー…… 食べたいけど……」



【何か…… 問題…… が?】



「問題なら有り有りだよ…… さすがに()()()()()が使えると思え無いもん……」




そう言って私は着ている制服、ブレザーの内ポケットを(まさぐ)った


私がいつも着ている制服そのままなら、内ポケットには三千円が隠されている


急遽友達からカラオケ呼び出しなどの何かしらが起きた際に使えるよう隠し持つ()()()()()()()



そして、ソレは在った



小さなジップロック付きの透明で厚手のビニールの中から私を見る野口英世さん


何気なくいつも見ている彼だが、今日だけは無機質なその表情が異様に怖い




「在ったわ、三千円が……」


【でも…… 使えるッシャ?】




そう、ソレが1番の問題だ


地球の…… ましてや日本という小さな島国でのお金が使えるとは到底思えない


料理と呼べる物や施設が在ったとしても、代金を払えなければ意味が無い


無料配布料理があれば嬉しいがソレは希望や祈りであり、儚く散るのは目に見えている




「解んない…… まぁ、世界が違ってもバイトして稼いで食べるって方法取るかな?」



【異世界来て、いきなり就職活動かニャ?】



「ははは…… 私来年から社会人なのにね……」



【就職活動の予行演習ッピ♪】



「異世界の就職活動経験が地球で使えるのかね……?」



【意味は…… 少なくても…… 全くゼロでは…… 無い】



「確かに…… クロの言うとおりだわ♪ とりあえず町っぽいトコに近付いたら向かってみようか!」



【あいニャ♪】

【おッシャ♪】

【了解ッピ!】

【承知……】







そして私達はまた車に揺られて目的地を目指す


最終的に目指す地は宮殿だが、先ずは腹ごしらえ案を先行させた





サンドバギーから見える景色は次々変わる


少し広めの山道を走り抜けたり、荒野だって走る


先程のとは別な集落が見えもした


だが、建ち並ぶ家々からすれば食事処が在りそうには無い


土色の壁が印象的な家だ


コンクリートやセメント素材とは到底思えないカラーリング


いや、ソレらの素材がこの世界にあるかも解らないのだが……


なんにせよ完全に民の集まり


集落だと思う





なので私達はスルーした





そして間もなくの事だった






明らかに先程の集落とは町全体の色合いが違うモノが見える


そして見る限りでも大きめの町が近付いてきた




【結構まともな町が見えるッピ♪】


【だニャ♪ とりあえず向かってみて、桃様にはちゃんと食べてもらわニャきゃ僕等に栄養入らないニャ!】




私のラピスから生まれた4匹は()()()()()()()()()()()()される


私のお腹が空いていれば彼等も空き、私が満腹なら彼等も満腹なのだ



てなわけで……




「そうだね! おし、向かお♪」




そう言って私はハンドルを握った



町側に捻ったハンドルからカツンと何かの音が鳴る


多分、オート走行をマニュアル走行に変えた音だろう


足元に在るアクセルペダルとブレーキペダルを確認し、私は風を切りながら町に向けて車を走らせた








ほどなくして到着した町


入り口だと思われる場所に車を止める


そして4匹を()()()()()()町中に入った







灰色の建物は高い位置に窓が在るため、二階建てだと推測できる


それが所狭しと建ち並び、1階には暖簾(のれん)が掛けてある家も在った


人も沢山居て、中々に賑わいを見せている




へーー…… 大きな町ね……




入って数歩だというのに人口密度が私の住んでいた町よりも高い


こりゃ食べ物ありそうだ♪




そう思い、キョロキョロと辺りを見回した




で、さっきの1階暖簾掛けの家




ソコには《お食事処》と書いてある




私は想定外の事に固まっていた


だから多少、私よりも冷静な言葉を発したのはシロだ




【桃様…… フツーに日本語ニャ……】


「そ、そうね……」


【ココは日本ッシャ……?】


「いや、あり得ないでしょ…… さすがに」




私はシロに見習い、少し冷静かつ、客観的に周囲を見回す


よく見たら町中の人達は色んな人種が目についた




地球でいえば、黒人、白人、黄色人種……


言葉の統一が有りそうに無い




だが、彼等は当たり前といった感じで笑い合い、言葉を交わしていた




ん、待てよ!?




食べ物貰うにも、会話が成り立たなきゃダメじゃん!




参ったな……




どうしようも無い


ココは異世界だ


不便は当たり前だと解っていても、会話の不便はヒドすぎる




ハァ……


先が思いやられるなぁ……





私の持った覚悟が僅かに揺らいだと感じた時、私はその場に頭を抱えへたり込んだ



さて、どうしたものか……



いや待て?



《お食事処》って暖簾掲げてる限りは日本語話せんじゃね!?



コレは希望だ♪



私はその店に顔を向ける


だが、私の視界を()()()が居た為、店は見えなかった


目の前には()()()()()が立っていたのだ


そして私を覗き込む様に屈んで見下ろしていた




「大丈夫かい? お嬢ちゃん」




いきなりの声掛けに驚く




「あ…… あの…… あ、ハイ! 大丈夫です! アハハッ……」




苦笑いを見せながら私は立ち上がった


って、おい!?




「あれ!? 言葉が通じるの!?」


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