11話 門番A
「早かったじゃないか♪」
そう笑顔で話し掛けたのは門番B
「なら良かったよ♪ 何買おうか迷っちまったからな」
声すらも聞き分けられない同じトーン
まさに双子……
奇妙な感動を持った時、門番Aの視線が私に止まった
「ん? 客人かい?」
「あ、はい…… 一応そうなるんですかね?」
突然の問い掛けに適当な言葉を選ぶ私
「そうかそうか♪ 買い出し以外で人と会うことは無いからさ…… ゆっくりしていきなよ♪」
「あ…… はぁ…… ありがとうございます」
意外なもので、門番Bさんよりも門番Aさんは人当たりが良さそうな印象だ
双子なのに違うのか、それとも最初から門番Bさんとはネゴシエーション・バトルが始まってしまったから若干、印象が緊張感のあるものになってしまったのか……
理由は解らないが、少なくとも今の私にとっては門番Aさんの方が良い人そうに見える
ニコリと私に笑い掛けた門番Aは、同じ顔の門番Bへと顔を向けた
「今日は珍しい物が手に入ったぜ♪ カニの霜降り肉と千年チーズってんだ! 半分ずつシェアするけどさ、どっちから食べたい? ライン……」
スパコォォォォン!!
甲高い音が周囲に響く
いきなり気持ちの良い打音は漫才でも中々聞けない
それは、門番Bが門番Aの頭を叩いた音だった
「痛ってぇじゃねぇか!! いきなり何しやがるライン……」
スパコォォォォン!!
またか!?
なんと美しい響き♪
「テ、テメェ……」
「黙れ、門番A!!」
「はぁ!? 何言ってやがる!?」
「察しろ!!」
「何をだよ!?」
「状況をだ!!」
「状況だぁ!? ……って ……え?」
門番Aは止まった
そして門番Bの目を見ていた
クイッと私に向けた視線につられた門番Aが目を丸くしている
そして彼は呟いた
「嘘…… だろ?」
信じられない者を見るかの様な視線
「本当だ」
門番Bは彼の問い掛けに答えた
「どっちだ……?」
「咲子の曾孫だよ」
「あ、そうか…… そうだよな…… どう見ても女の子だし……」
「ようやく解ったか…… 気が抜けてるぞ、門番A」
「わ、悪い……」
彼、門番Aは2度叩かれた頭をさすりながら私を見ていた
何も言わず、ただ眺める
いやらしさは視線から感じない
瞳に映るのは純粋な優しさだった
「あの…… 何か?」
私はその優しくもあり、妙な熱意も感じる視線に耐えきれず問い掛ける
ハッと我に返った門番A
「あ、ごめんごめん! 何だか嬉しくてね……」
「嬉しい? どうして?」
「あーーー…… 何て言うべきだろうな…… 待っていたから…… かな?」
「私を?」
「そうさ♪」
「なぜ?」
「君がこの世界、カタストロフィを救う日を待ち侘びてた」
カタストロフィ!
やはりココが咲子ばあちゃんと泉ばあちゃんが生前訪れた地だ
「そうですか…… やっぱりソウなんだ……」
「何がだ?」
「私の曾祖母ちゃんの日記にこの世界の事が克明に記されている…… 私の覚悟の地もココって事だよね」
「泉の日記…… そっか、アイツめ…… 夜な夜な書いてたのはソレかよ♪」
門番Aは今までの優しい表情を少し変えた
何というか、慈しみも感じられるが、愛おしい……
そんな雰囲気も感じる
そして、彼の言葉
《夜な夜な書いていた》の部分
それは、門番Aが私の曾祖母、泉に近しかったという証明でもあった
「あの…… それで私は今後どうすれば?」
彼等は顔を見合わせコクリと頷く
そして私に向き直る?は
「君はこの世界、カタストロフィを救う為に未来から喚ばれた…… だから救ってくれ…… すべての未来の為にも」
「救えなかったらどうなるの?」
「解らない…… 解らないが…… 多分、敵が蹂躙する世界になるだろうな…… この世界も、君の居た地球を始めとした星々もだ」
「責任重大ね……」
彼等は笑う
「まぁ何とかなるさ! 咲子の曾孫だろ? 自信持てって♪ ……よし、先ずは宮殿に向かえば色々聞けるだろうから、そっちを先に訪問すると良い」
「宮殿…… ソコには何が?」
「ジャッジメンター様…… いや、今は《ノア》と名乗っている先代の神が居るよ♪ 多分、マスターも居ると思うし」
「マスターって…… 加藤さん? 神様の?」
門番Aは門番Bに顔を向ける
門番Bは申し訳なさそうに顔を歪めている様子だ
「おい…… 門番B……」
「悪い…… あまりにも勘が良すぎて少しだけ話した」
「まったく…… 後でどやされるぞ、お前」
「桃花は黙っててくれると約束してくれたよ♪ ……な?」
引き攣った顔を向ける門番Bに私は、
「勿論です! 約束は守りますから♪」
と、答えた




