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who(阿津田side)

作者: チャマ

小森サイドからの台本はこちら→現在真筆しているかもしれない中



とにかく男性キャラが話します。セリフの比率がおかしいですが、よろしくお願いします。


阿津田/18


人間の脳や心理学に関心を持っており、そういった分野を専門に独学で知識を蓄えている人物。自分の知識を相手に伝えるのが大好きであり、明るいが落ち着いた人物である。



小森/19


とある大学の文学部に通っている人物。実は自作の小説を書いているが、そのことを誰も知らない。周りにはただの落ち着いた女性と思われいてる。



阿津田♂:

小森♀:

阿津田N「気が付くとそこは、真っ白な地平線が見える空間だった。」



阿津田N「僕は背中の方にある壁にもたれ掛かり、垂れた頭を持ち上げたところだった。」



阿津田N「見える景色は、透明のような水面。一直線の地平線。白から青へと上っていくグラデーションの空。雲一つない空にポツリとひとつの太陽。ボリビアのウユニ塩湖がこの景色と近いのだろうが、それとは比べ物にならないような壮大な空間に体に力が入らず、ただただ見渡すことしかできなかった。」



小森「あの~、すみません。」


阿津田「えっ。」



阿津田N「後方、壁の向こうから声が聞こえてくる。それは、誰とも知れない女性の声だった。途端に後ろを振り返ろうとしても、先ほどまで力を込めていなかった体は突然の動きに反応できずに倒れ込んでしまう。」


小森「くすっ」


阿津田N「そんな僕の状態に彼女は笑いがこみあげていた。」



小森「……あの、大丈夫ですか?」


阿津田「ははっ、このくらい大丈夫ですよ。なんだか力がうまく入らなかっただけですから……。」


小森「本当にそれだけなんですか?気を付けてくださいよ?」


阿津田「はい、次からは気を付けるようにします。」



阿津田N「倒れた拍子に後ろを向いてみる。先ほどまでもたれ掛かっていたのだろうその半透明な壁は、彼女のシルエットをぼかして僕に教えてくれる。彼女もまた壁にもたれ掛かって座っているのが見えた。」



小森「起き上がれますか?」


阿津田N「姿勢を変えずに彼女が言う。」


阿津田「はい、自分で起きれますよ。」


小森「良かったです。」


阿津田「はい。」



阿津田N「僕は体を起こすと、また何となく元の体勢へと戻る。」



小森「ふふっ、おかしい。なんでまたもたれ掛かっているんですか?」


阿津田「あ、いえ…、この体勢が楽だったんですよ。」


小森「分かります。ここから見えるこの景色は、こうやって見るものだって教えてくれていますよね、この壁は。」


阿津田「はい。僕もこの壁はもたれ掛かって、この絶景を見るためにあるものだと思ってます。」


小森「ふふっ、私たちって似ているんですかね?」


阿津田「はは、たぶん似ているんですよ。なんとなく、そんな気がします。」



小森「お名前、お伺いしてもよろしいですか?」


阿津田「名前ですか、僕は阿津田って言います。こちらも、名前を伺っても?」


小森「はい。小森と申します。……ところでここは、夢の中だったりするのでしょうか?」


阿津田「そうですね。夢の中でも無かったら、こんな場所に来たり出来ませんよ。」


小森「それもそうですよね。……、じゃあ阿津田さんは私の夢の中の住人なんですね。」


阿津田「ここに来る前、僕は眠ったはずです。……ですのでここは僕の夢ですよ。」


小森「いえ、違います。私の夢なので、阿津田さんが夢の中の人です。」


阿津田「いえ、僕の夢なので小森さんの方が夢の中の存在ですよ。」


小森「………ふふふ。」


阿津田「プッ、あはは。」



小森「お互い眠ってからここに来た……、というわけですか。」


阿津田「………そうですね。……これがいわゆるシンクロニシティ、ですかね?」


小森「シンクロニシティ?」


阿津田「複数の人が同じ1つの夢を見ることです。家族等の血縁関係があると、同じ夢を見たという事例が結構あったりするんですよ。」


小森「そうなんですか?……でも多分、それとは違いますね。」


阿津田「確かに。言われてみればそうですね!……これは1つの夢に2人いるというのが正しいのでしょうか?1つの同じ夢を複数の人が見ているとは言えませんね。」


小森「…詳しいんですね。」


阿津田「あっ。いや、すみません。こういったことを専門に学んでいる最中でして……。」


小森「いえ、尊敬します。やりたいことがあるなんて。私はそのようなもの、何もないので…」


阿津田「少し興味があってそこから広がっていっただけです。『好奇心がいつの間にか成長していた』って感じです。」


小森「私は、そのような素晴らしいものはないですね。………、『なんとなくで今まで成長して来た』だけですよ。特別学びたいようなものも無くて、特別出来るようなこともありませんから…。」


阿津田「そうなんですか?少し会話しただけでも、とても魅力のある方だと思いますが……。」


小森「そんなことありませんよ。ただの読書好きな文学部の学生です。」


阿津田N「そうしてそこから少しの間、小森さんとの他愛のない会話が続いた。」



阿津田「………なんだか、日が傾いてきたように感じますね。」


小森「あの傾き具合だと、午後4時くらいでしょうか?」


阿津田「凄いですね!日の傾き具合だけで分かるものなのですか…。本当に話しているだけでも魅力や興味が湧いてきますよ。」


小森「お世辞ですか?お上手ですね。」


阿津田「いえ、そんな事ないです。」



阿津田「………話していると、時間がとても短く感じるものですね。」


小森「わたしも、なんだかとても楽しい気分です。」



阿津田「この夢、終わりませんね。」


小森「終わりませんね。」


阿津田「終わらないのは少し寂しいですが、お別れも悲しいものですね。」


小森「もしこの夢から覚めて、またその日夢を見るなら、この夢の続きを見てみたいものです。」


阿津田「僕もです。またこの壁にもたれ掛かりたいですね。」


小森「そうですね。そうやってまたこうしてお話出来るものならしてみたい。」



小森「……なんだか、終わる気がしてきましたね。」


阿津田「この夢がですか?」


小森「はい。………、何故だかそんな気がしてきました。」


阿津田N「そういう頃には日は夕焼けになっており、空は藍色、黄色、橙色のグラデーションへと変わっていた。」



小森「今日はとりあえずお別れですね。」


阿津田「そうなんですか?……なんだかよくわかりませんが、もう、お別れ…なんですね…。」


小森「阿津田さん、話せて楽しかったです。またお話しましょう。」


阿津田「はい。…もう少し話していたかったですが、今度はお互い起きている時に会えるといいですね。」


小森「そうですね。私も、起きている時に会ってみたい…あ、あと10秒です。」



小森「……5、4、3、2、ではまた。」


阿津田「………また。」



阿津田N「何故か、あの日の夢を僕はよく覚えている。今となってはもう懐かしい夢の景色だ。そういえば、なんとなくな気持ちで買ってみた恋愛小説がある。」



阿津田N「今まで全く読まずにいた恋愛小説だ。今朝がた起きて空を見たときに、雲一つない空に太陽がポツリ。地平線のほうまで続く白と青のグラデーションから、あの時見た夢を……、小森さんを思い出した。」


小森「雲一つない空に太陽がぽつりと一つ。青から白へと下っていくグラデーションが、地平線の彼方に向かって描かれている。地平線はピンと伸びた糸のように真っ直ぐで、自分のもたれ掛かっている壁以外何もない。その状況で男は女性に恋をする。…その壁の向こうの女性に恋をする。」


阿津田N「裏表紙に書かれてあったそのあらすじに、僕は何故だか溢れてくる涙を抑えきれずに崩れ落ちる。どうしようもなく溢れた涙が少し治まった頃に」


阿津田「……やっぱり、魅力的な女性じゃないですか。」

全てを語らず、一部だけを切り取る。それが私のやり方。

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