カッターナイフ
うちのクラスにそれはもうとてつもなく不快な女子がいる。その女子にも名前はあるが、クラスメートも誰も知らなくて、ゴミ子とか呼ばれてる。
ゴミ子はいじめられてるけど、別に誰も良心の呵責とか覚えない。仕方ないよな、ゴミ子だし、って皆なってる。我が1‐Aのクラス全員でゴミ子をいじめてる。不思議と他のクラスには飛び火しない。ゴミ子はクラスの共有財産だから、クラスの誰がいじめてもいい。
俺は今日も放課後にゴミ子に声をかける。教室の椅子に座らせ、冬服の袖をまくらせる。ゴミ子のなまっちろい幽霊みたいな腕が露出する。俺はその腕を机の上でガッチリと押さえつける。
周囲には俺の男友達を含めた五、六人くらいのギャラリーがいる。彼らはゴミ子を見てニヤニヤ笑っているけど、俺から言わせればみんな根性がない。いじめは見ているものじゃなくてやるものだ。こんなに楽しいことをやらずして青春を過ごすなんて、それは高校生になって、まだ童貞みたいなもんでダサい。いじめを見ているだけなんて青春の浪費だ。
俺はため息を吐いてから、きちきちと少しだけカッターナイフの刃を出して、ゴミ子の青白い肌を滑らせる。
カッターナイフはまだゴミ子の肌に引っかき傷を残すくらいのものなんだけど、いちいち「ひぃう」とかゴミ子が怯えるので、俺は段々いらだってくる。徐々に力を強めると、ゴミ子の肌に赤い線が滲み始める。「いた……痛いよ」と涙目になるゴミ子。だからいちいち大袈裟なんだよお前。
数分間ゴミ子の反応を楽しんでから、俺はカッターナイフの刃をしまう。
もう終わりって空気を出してから、カッターナイフの刃を引き出して、ゴミ子の手の甲を完全に突き刺す。
「ひ、ひぃああぁああ!」
ゴミ子は慌てて手を引いてその調子にカッターナイフの刃が折れる。ギャラリーが爆笑して手を叩く。
俺はゴミ子の手をとって、刺さったカッターナイフの刃の先端をグリグリと押し込んでやる。
ゴミ子はいよいよ大粒の涙を流す。ゴミ子はなんでこんなことをされるかわからないという顔をしている。
俺はお前は悪意の吐き捨て口なんだよ、と思う。
お前はゴミ捨て場なんだ。
そういう風になった自分の人生を精々後悔してろ。




