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冒険者との出会い

 家のあった森を道に沿って進み、森の外にでた。そこから、小道が続いていた。

 今日は快晴で、旅には絶好な日であった。

 今は紺色のコットを着ていて、長く伸ばした茶色の髪を後ろに流している。コットというのは今でいうワンピースみたいなものだ。防具を着なくていいのかとゼイダさんに聞いたことがあったが、攻撃は魔法で守ればいいからそんなものは必要ないとのこと。そんなベテランレベルで考えられても・・・。後で防具は買おう。


 ゼイダさんによるこの先にそって進むと、街道に出るらしいけど。


 10年間ゼイダさんの家に引きこもっていたため、私は森の外の地理を全く知らない。ゼイダさんに周辺の簡単な地図を描いてもらったから、大丈夫なはず。迷わないといいなあ。


 のんびり馬に乗って道を進むと、少し大きな道と交差した。

 ここで右に曲がってまっすぐ進むと小さな村があるらしい。


 小さな村に向かってさらに進んで行く。

 周りは草原で、まばらに木があるような感じだ。

 久しぶりに明るいところに出られて、とても気持ちがいい。


 1時間ほど進んだところで、木陰の下で休憩をとる。馬に魔法で出した水を飲ませたり、草を食べさせたりしていた。


 私も水を飲んだりしながら、木陰で寝そべって休む。


 草むらで寝転ぶって一度やってみたかんだよね。音は風や鳥のものだけ。静かでとても心地いい。


 少しうたた寝をしながら、馬とのんびりした時間を過ごす。

 そうしているとお昼近くになったので、持ってきていたお昼ご飯を食べることにした。


 今日のお昼は朝作ったレタスとトマトとハムが挟まったサンドイッチ。

 うん。おいしい。我ながら、いい出来栄えだ。自作のマヨネーズもいい出来。


 1時間ほどの休憩の後、また馬に跨り道を進む。村はまだだろうか。そんなことを考えながらゆっくり進んでいくと森の中に入った。


 しばらくすると、先の方から何か聞こえてきた。

 金属が叩きつけられるような音がする。

 道の先をよくみると、少し開けたところで誰かが戦っているようだった。

 師匠以外の戦闘って見たことないから見てみたい。

 そんなことを思いながら、戦いが行われている場所に近付いてみた。


「おい、ミリンダ支援してくれ。もう長くは持たないぞ」

「こいつ硬いな。全然刃が通らない」

「むちゃ言わないで。もう私はマナ切れよ」

「なあユーリ、今から撤退できると思うか?」

「無理だね。誰かが食い止めない限りは」

「奇遇だな。俺もそう考えていたところだ。ということで、ミリンダ先に逃げてくれ。俺たちは後から追いつく」

「そんなこと言わないで。2人を置いて逃げられるわけないじゃないの」


 なんか死亡フラグ立てまくってるなーと思いながら近づいていく。前方にいる男2人と女1人の集団が戦っているのは、体長5メートルほどの熊のような生き物だ。でかいな、これ。確かに、苦戦するのもわかるわ。というか私は逃げるか。


「ねえ、そこの人。助けて!」


 あー、バレたよ。あれは、女の人か。

 正直普通なら逃げ1択なんだけどな。でも、見捨てるのも寝覚めが悪いか。仕方ない、助けるか。


 戦闘場所に近づいた後にさっと馬から降り、走って冒険者達に近づく。


「通りがかりの魔法使いのフィリスです。助けに来ました」


「おおそれはありがたい。俺はレオ、剣士だ。そしてそっちが」

「弓使いのユーリだ。よろしく」

「私はミリンダ、魔術師よ」


 パーティーリーダーであるレオが説明してきた。


「俺は剣で、ユーリは短剣でなんとかこいつを抑えてるところだが、正直持ちこたえるのがやっとだ。そして、頼みのミリンダはマナ切れときた」

「すみません」


 ミリンダがうなだれている。


「過ぎてしまったことは仕方ありません。指示をください、レオさん」

「わかった。それとレオでいいぜ。まずは、少し足止めをしてくれないか。さすがに大分疲れてきて、ぼちぼち体力がやばい」

「わかりました」


 足止めか。水属性で凍らせるか、それとも土属性で固定するか。水属性の場合は、エーテルから水を生み出す必要がある一方、土属性は土に溶けたエーテルを変化させるだけだからエーテル消費量が少ない。土属性かな。


 熊もどきに向かって、杖を向ける。


 術式構築開始。土属性のヘッダー及びグローバル変数読み込み完了。対象、威力、消費エーテル量、実行方法を変数にて指定完了。スタンバイ。


 戦っている2人に呼びかける。

「土属性魔法で、熊もどきの足を固定します」



「アースバインド」


 そう言ってからすぐに、脳内で術式を実行する。すると、体内のエーテルが杖を通じて、世界のエーテルに干渉を始める。干渉を受けた土に溶けたエーテルによって、土の形が変化していく。そして土が熊もどきの足に徐々にまとわりついていく。熊もどきはレオとユーリとの戦闘に気が取られていてしばらく気が付かなかった。そして、熊もどきが自分の足元に気がついた時には既に足が土に固定されて動けなくなっていた。


 熊もどきが動けなくなると、レオとユーリが私とミリンダのもとにやってきた。


 レオが私に話しかけてきた。

「すごいな、お嬢さん。まさかあのビーストベアを足止めできるとは。見かけによらず、やるもんだな」

 彼は驚いているようだ。


「一応、さらに補強しておきますね」


 私は熊もどきに杖を向け、魔法を発動させる。

 そして、熊もどきを土のドームの中に閉じ込めた。


「おお、やるね」

「あの、レオさん。私に足止めを頼んでおいてその反応はなんですか?」

「いや、せいぜい光で目くらましか、雷撃で痺れさせる程度だと思っていたからな。こんな風に奴を固定できるとはよくやるもんだ」

「とりあえず、今後どうするか考えましょう。レオさんの考えを聞かせてください」


 今後の対策について、レオと話し合うことになった。


「まずお嬢さんに聞きたいんだが、あの土の固定はどれくらい持つ?」

「正直わかりません。多分もって2分程度です」

「2分か」


 熊もどきが土の拘束を解こうともがいて起きる振動と音が伝わって来る。正直、2分持つかな?


 少しレオが考えてから、話し出した。


「まず、俺たち3人の馬はあのビーストベアに殺されてすでに使えない。よって今から逃げることは不可能に近い。走って逃げたところで追いつかれるのが目に見えている。本来なら誰かが犠牲になる必要があったが、お嬢さんのおかげでなんとかなるかもしれない」


 私は気になっていることを聞いた。


「レオさん」

「何だ」

「あのビーストベア、でしたっけ。あれの弱点とかってないんですか?」

「弱点か。正直物理攻撃はそのままだと皮が厚くて通りにくい。ある程度奴の皮魔法で削れれば攻撃も通るようになる」

「魔法で皮を削るですか。それなら火属性の爆炎魔法なんてどうでしょう」

「それはいいな。予定ではミリンダに削ってもらうはずだったんだが、奴の皮が固過ぎてあいつの魔法じゃ通らなかったんだ。お嬢さんの魔法なら通るか?」

「わかりません。でも、とりあえずやってみましょう。爆炎魔法を発動するときに合図を送りますからそしたら全力で逃げてくださいね。さて、そろそろ拘束が解けますよ」

「わかった。リック行くぞ」

「わかったよ」


 ミリンダは後ろに下がり、レオとユーリが土のドームの対角線上に立ち、それぞれ剣を構える。

 ドシン、ドシンとドームを叩きつける音が強くなり、亀裂ができていく。


 次の瞬間、ドームが破壊されビーストベアが中から飛び出してきた。ユーリの方にだ。


「俺の方かよ」


 一人ごちながらもユーリは短剣で何とかビーストベアを押しとどめると、すぐにレオが助けに入る。

 そして、2人と熊との戦闘が始まった。

 2人の剣で熊に斬りかかるが、全く攻撃が通らない。それでも2人は位置を変えながら、鎌を翻弄していく。斬りかかった後に熊が攻撃を加えようと腕を叩きつけるが、2人は攻撃のすぐ脇を素早く避ける。


 すごいな、あの2人。私が最初に助けに入った時より、何倍も素早く動いてる。こんなにすごい人たちなのに攻撃が通らないって、どんだけ硬いんだあの皮。私の魔法通るかな。


 そんなことを思いながらも、ビーストベアに杖を向け、術式の構築を開始する。


 術式構築開始。火属性のヘッダー及びグローバル変数読み込み完了。変数にて以下を指定。対象・ベアビースト、威力・最大、消費エーテル量・現残量の50%、実行方法・火球を対象に投射し接触後爆発、範囲・対象の直径まで拡大させ維持。スタンバイ。


「行きます。全力で逃げてください」

「了解だ」

「了解」


 レオとユーリが退避したことを確認できた。


 術式実行。


 速度重視だったので、魔法名を口に出すという不要なことはしなかった。さっきは口に出したが、それは相手に何の魔法を発動させるか伝えるためだ。


 杖にエーテルが伝わり、世界のエーテルへの干渉が始まる。すぐに火球が現れ、一瞬でビーストベアにぶつかり、爆発する。


 辺りに轟音が響き渡り、私は爆風で飛ばされそうになりながらも足を踏ん張る。


 土煙が待っていたのですぐに風魔法で吹き飛ばす。


 するとそこには、だいぶ弱ってはいるがまだ立っているビーストベアがいた。それもなんか怒っているような。


「いくぞ、レオ」

「おう」


 すぐに2人はビーストベアに斬りかかる。今度は攻撃が通り、ビーストベアの血しぶきが舞い、叫び声が辺りを木霊する。


 それから20分ほどの戦闘の後、ビーストベアは完全に動きを止め絶命した。

 戦闘中、私は小規模な魔法で援護していた。



 ------------------------------------


 戦いが終わった後、4人は座りながら集まって休むことにした。


「あー、疲れた。死ぬかと思った。ありがとな、お嬢さん」

「今回はやばかったね。フィリスさんに感謝だ」

「ありがとう、フィリスちゃん。あなたのお陰で私たちは助かったわ」


 レオ、ユーリ、ミリンダ共に感謝の意を伝えてきた。


「どういたしました。まあ、私はただの通りがかりの魔法使いですけどね。そういえば3人は冒険者なんですか?」

「ああ、俺たちは3人パーティー紅の剣の冒険者だ。ちなみにみんなBランクだ」

 レオは感心していた。あんな威力の魔法は初めて見たからだ。

 それ以上に興奮していたのは、ミリンダだった。


「ねえ、フィリスちゃん。今いくつ?」

「15ですけど」

「えっ、15歳であのレベルの魔法が使えるの。すごい、すごすぎる」

「そんなにすごいものなんですか?」

「そうよ。まず、あなたの魔法の威力は私の何倍もあるし、たぶん上級魔術師相当ね。それに、詠唱してなかったでしょ?」

「詠唱ですか。しないですね。必要ないですし」

「そこが一番おかしいの。詠唱も魔方陣も使わない魔術師なんて聞いたことないもの。ねえ、どうやってるの?」


 ミリンダが私にすごい熱い眼差しを送って来る。これはやばい。絶対話が長くなるパターンだ。

 そんな風に考えていると、ユーリが助けに入ってくれた。


「ミリンダ。フィリスさんが困っているだろう。まずは、近くの村まで行ってそこでゆっくり休みながら話をすればいいじゃないか。フィリスさんはそれでいいかい?」

「いいですよ。特に用事があるわけじゃないので」


 ということで4人は近くの村まで移動することになった。

 その前に、レオとユーリはビーストベアから目ぼしいものを剥ぎ取り、残りは土に埋めた。

 彼ら曰く、放置しておくと魔獣や動物が寄って来て危険らしい。


 私は口笛を鳴らして呼び戻した馬に乗って移動するが、残りの3人は徒歩での移動だ。


 30分ほどかけて移動すると、村に到着した。村の名前はイダルダというらしい。


 私たちは同じ宿屋に泊まることになり、まずは体を休めてから話は明日しようということになった。まあ、宿屋はその村には1つしかなかったんだけど。


 桶に貯めた魔法で出した温水に髪を浸して洗った後に、そのお湯を外に捨て、また桶にお湯を貯める。


 お湯にタオルを浸し、濡らしたタオルで身体を拭く。

 それが終わると、寝間着に着替える。


 土埃に塗れたせいでだいぶ汚くなって埃っぽかったから、身体を拭いてスッキリした。


 そんなことを考えながら1階の食堂に行き食事をとった後、すぐに部屋に戻りに寝てしまった。


 -----------------------------------


 翌朝着替えた後に食堂に行くと、例の3人がすでに朝食を食べていた。


「おはよう。よく眠れた?」

「はい」

「それはよかった」


 ユーリさんが微笑んで、そう返してくれる。

 いい人だな、この人。


「さてお嬢さん、すまないがミリンダに付き合ってくれないか。どうも、お前さんに色々聞きたいらしくてな。こっちが鬱陶しいぐらいなんだが」

「それ、ひどくない?」


 みりんだがレオに抗議の声を上げる。

 いや、多分実際にそうなんでしょうよ。あなたの様子を見れば想像つくから。

 まあ、今の魔法使いについて知りたいというのもあるし丁度いいか。


 4人が食事を終えた後、ミリンダと私は話すことになった。レオとユーリはそれを見守っている。


 まずは私から聞いてみる。


「そういえば、普通は魔術師っていうの?私の師匠は魔法使いって言ってたけど」

「そうね。私たちは魔法を使う人を魔術師って呼ぶわ。というか、魔法使いって呼び方を初めて聞いた。魔法を使う人だから魔法使いってわかりやすくていいわね」


 なんで師匠は魔術師じゃなくて、魔法使いを名乗っていたんだろう。謎だ。

 質問を続ける。


「魔術師はどんな風に魔法を発動させるんですか?」

「きみも魔術師、いや魔法使いなら知ってると思うけど教えてあげる。魔術師が魔法を発動させるには2つの方法があるの。詠唱を使う方法と魔方陣を使う方法。普通は詠唱を使うわ。魔方陣なんて書くのに時間もかかるし、面倒だしね。そもそもある程度の威力を出すためには大規模な魔方陣を地面に書く必要があって、実用性に乏しいというのが現状」

「紙は使えないんですか?」

「使えるよ。ただ、小規模な魔法しか発動できないけどね」

「なるほど」

「説明を続けるよ。魔術師が主に使うのは詠唱による魔法発動。詠唱を行い、体内のマナを消費することで魔法を発現させるもの。詠唱は属性ごとに全く違うし、発動させる魔法によっても違う。まあ、属性が同じなら比較的類似点は多いんだけどね。そして、属性には火、水、風、雷、土、光、闇が存在し、個人個人によって使う魔法属性の向き不向きがある。ちなみに、私は火と風に適正があるわ」

「詠唱ってどんなものなんですか」

「それじゃ、簡単な火魔法を使ってみましょうか」


 そう言った後にミリンダが外に出て言ったので、他の私たち3人は付いていき、外に出た。


「それじゃ、いくわ」


 ミリンダは杖を掲げ、詠唱を開始する。


「火の神よ。我らに力を与え給え。暗闇を照らす炎を灯せ。ファイア」


 すると、杖の先から火が出て燃え続けている。


「おー、火が出た」


 私がそんなことをいうと、


「なんでフィリスちゃんが驚いてるの?」

「いや、だって仕組みが全くわからないから」

「えっ?」


 提げていた杖を取り出し、構える。


「私の場合はこんな感じ」


 術式構築開始。火属性のヘッダー及びグローバル変数読み込み完了。対象、威力、消費エーテル量、実行方法を変数にて指定完了。発動。


 一瞬で杖の先に火が灯る


「え?どういうこと?」


 ミリンダがフリーズした。


 ミリンダの目の前で手を振ってみた。

 反応なし。


 ミリンダに軽くチョップをかます。


「何すんの」

「いやだって、無反応だったから」


 現実に戻って来たようだ。


 まず、ミリンダが使った魔法の仕組みについて聞いてみることにした。


「ねえ、ミリンダってどうやって魔法を使ってるの?」

「どうやってって、もちろん詠唱をして魔法を発動させてるけど」

「それじゃ、発動させる時何を考えてる?」

「炎のイメージかな。杖の先に炎が灯るような感じに」


 あー、大体わかってしまった。


「ミリンダの魔法については大体わかったよ。それじゃ、ミリンダが私に聞きたいことって何?」


 次は私が質問を受ける番だ。さて、どれだけ質問されることやら。


「フィリスちゃんと同じような質問するけど、フィリスちゃんってどうやって魔法を発動させてるの?」

「魔法、それは体内のエーテルを使って世界に満ちているエーテルに干渉させることで発現する現象。そもそも、この世界にはエーテルと呼ばれるすべての物質の源で満ちている。そのエーテルに干渉して、エーテルを火、水、風、雷、土、光、闇の属性に変換する。変換を行うためには、それぞれの魔法にあった術式が必要。その術式を脳内で構築し、体内のエーテルを通じて世界のエーテルに接続、構築された術式によって世界のエーテルに干渉する。特に属性に対する適正はなく、全ての属性の魔法を魔法使いは使える。まあ、こんな感じ」

「何それ、私が知ってる魔法と全く違うじゃない。そもそもエーテルってなに?術式ってなに?そもそも体内のエーテルと世界のエーテルって何が違うの?それに適正がないって?というか、無詠唱で発動ってなんなの?」


 案の定、質問責めにあった。ミリンダからの質問はお昼を挟んで夜まで続いた。


 そして、夕食の時間になってやっとひと段落した。


「疲れた」

「すまんな、ミリンダが迷惑をかけたな」

「いいえ、別に構いませんよ」


 レオが労いの言葉をかけてくれた。

 ちなみにレオとユーリはミリンダが白熱し始めた段階で逃げた。薄情な奴め。


「大体魔法使いっていうのが何なのかわかったわ。私たち魔術師とは全く違う技術で魔法を発現しているのね」


 ミリンダはあまりのカルチャーショックのためか、机に突っ伏していた。


「そうでもないんだよ」

「えっ、そうなの?」


 ミリンダは一瞬で起き上がった。興味のあることには飛びつく質らしい。


「これはあくまで私の推測だけど、いい?」

「どうぞ」

「ミリンダも私もたぶんやってることは全く同じ。世界のエーテルに体内のエーテルによって干渉し、魔法を発現させる。ミリンダが言うマナっていうのが、体内のエーテルのことだと思う。そして、ミリンダが言ってた脳内のイメージっていうのが術式構築だと思う」

「それじゃ詠唱は?」

「詠唱は人が現象をイメージする際の補助の役割だと思う。君たち魔術師はイメージによって術式を構築しているから、詠唱は大きな意味を持つ」

「ということは、原理的には詠唱はなくても魔術師も魔法を発動可能ってこと?」

「そういうこと。というか、既に無詠唱の魔術師っているんじゃないの?」

「確かにいるわ。だけどそれはごく一部の上級魔術師だけ。普通の魔術師は詠唱が必須なの」

「なるほどね。イメージによって術式を構築するとそうなるのか」

「ねえ、気になったんだけど」

「なに?」

「マナがあっても、魔法の杖を光らせることができても、魔術師になれないのってイメージに頼ってるからってことかな?」

「その通りだと思う。だから、魔術師になるには才能による所が大きすぎるんじゃないかな」

「なるほどね」


 ミリンダは少し考えると、吹っ切れたような顔になった。


「ってことは、私たち魔術師の理論は完全に間違ってたってことね!」

「まあ、そうなんだろうね。私の知る限りでは」


 次の瞬間、彼女は笑顔で私の目の前まで顔を近づけてきた。


「ねえ、私に魔法を教えてくれない?」


 と言われても・・・


「無理」

「なんでよ」

「私が魔法の理論を完璧に取得するのに10年近くかかったのに、今からそれをやれと?」

「なら、私に魔法のアドバイスをしてくれない?フィリスちゃん凄いから、色々教えて欲しいんだ」

「・・・それならいいかな」

「ありがとー!」


 ミリンダが私に抱きついて来た。まあ、いいか。特に目的もなかったし。



 そこで、レオが会話に入ってきた。


「なあフィリス。それなら、俺たちのパーティーに同行するか?いっそのこと加入して欲しいぐらいなんだが」

「いいですよ。加入については考えさせてください」

「わかった。それじゃ、よろしく頼むぜ、フィリス」

「よろしくね、フィリスちゃん」

「歓迎するよ、フィリス」


 ということで、私は紅の剣に同行することになった。

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